不定根
[Wikipedia|▼Menu]
根はふつう正の重力屈性 (屈地性; 下方へ伸びる性質) を示すが、根冠中央基部付近の細胞 (平衡細胞) 内でアミロプラスト (光合成能を欠き、デンプン粒を多く含む色素体) が沈降することが重力方向の感知に関わっていると考えられている[18]

根端分裂組織からは基部側へも新たな細胞が付加され、これが拡大伸長し、それに伴い組織分化していくことで根が伸長していく[4][19][20]。根端分裂組織から基部側へつくられた組織は、外側から前表皮 (protoderm)、基本分裂組織 (ground meristem)、前形成層 (procambium) とよばれ、これがそれぞれ表皮、皮層、中心柱へと分化する[4][12][13]。構成する細胞の状態に応じて、根は先端側から大まかに (重なりながら) 分裂帯 (細胞分裂帯[4]、分裂領域 meristematic zone[21])、伸長帯 (伸長領域 elongation zone[21])、成熟帯 (分化帯[4]、分化領域 differentiation zone[21]) に分けられる[22]。根端分裂組織を含む部分が分裂帯であり、細胞数が増加していく。ふつう根端から数 mm のところが伸長帯であり、細胞が拡大伸長している[4]。根の伸長はこの部分で最も活発であり、細胞はときに10倍以上に伸長する。細胞はこの部分で分化し始め、やがて成熟帯において細胞分化が完了する[4]
内部構造1. ニオイアヤメ (アヤメ科) の根の横断面 (1, 3 が第3段階の内皮): 1 = 通過細胞、2 = 皮層、3 = 細胞壁が肥厚した内皮細胞、4 = 内鞘、5 = 師部、 6 = 木部2a. ショウブ属 (ショウブ科) の根の横断面: 最外部が表皮で覆われ、中央には内皮で囲まれた中心柱がある。皮層には多数の間隙が見られる。2b. シオデ属 (サルトリイバラ科) の根の横断面: 最外層に表皮があり、中心柱細胞壁が肥厚した内皮で囲まれている。木部は多原型、中央には大きな髄がある。2c. キンポウゲ属 (キンポウゲ科) の根の横断面: 木部は三原型

根は、基本的に外側から表皮、皮層、中心柱 (維管束[4]) からなる[15][23] (図2a, b)。ただし活発な二次成長を行った根ではほとんどが二次維管束からなり、表面は周皮で覆われている (下記)。

根の表面はふつう1層の細胞からなる表皮 (epidermis; 根の表皮は特に rhizodermis とも表記される[24]) によって囲まれている[15][16][23] (図2a, b)。地上部のシュート (茎や葉) とは異なり、地中の根の表皮ではクチクラ層があまり発達しておらず (そのため吸水できる)、また気孔も存在しない[25]。根の表皮は、根端分裂組織からやや離れたところで根毛 (root hair) を形成する[10][15][26][27]シロイヌナズナ (アブラナ科) などでは、不等分裂によって形成された小型の根毛形成細胞 (原根毛、trichoblast) が伸長して根毛となる[14][16][24][26]。根毛は直径 10 μm ほどであり、ふつう短命であるが、半年以上残存するものもある (宿存根毛)[14][15][26]。根毛の存在は、土壌粒子との密着や吸水する根の表面積の増大に寄与すると考えられている[10][15][26]

表皮の内側には、皮層 (cortex) が存在する[15][23][28]。皮層は主に柔細胞からなり、デンプンなどの養分貯蔵に重要な役割を果たすことがある。また根の皮層には大きな細胞間隙が存在することが多く (特に水生植物など)、根の呼吸におけるガス交換に有用であると考えられている[9][12][15][29] (図2a)。皮層の最外層 (表皮のすぐ内側) にある1?数層は、下皮 (hypodermis) とよばれる[9]。下皮はときにスベリンリグニンを沈着して細胞壁が厚化し、またカスパリー線が存在することがあり、このような下皮は外皮 (exodermis) とよばれる[9][15][23][30]。外皮は、はがれ落ちた表皮に代わって根の保護構造となる。一方、皮層の最内層には、1層の細胞層からなる内皮 (endodermis) が存在する[9][15][31] (図2b)。内皮にはカスパリー線が存在し (細胞壁を通した物質輸送を遮断し、原形質を通した輸送のみを可能にしている)、中心柱への物質の出入りを調節している。古くなった内皮ではしばしばほとんどの細胞壁が木化し (中心柱からの水の漏出を防ぐ)、肥厚していない一部の内皮細胞 (通過細胞 passage cell) を通して通水する[15][16][24]

内皮より内側の部分は、中心柱 (stele, central cylinder, central column) とよばれ、主に維管束からなる[15][23][32]。中心柱の周縁部には1?数層の柔細胞からなる内鞘 (pericycle) があり、新たな側根はふつうここから (または内皮から) 生じる[15][23][24] (下記)。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:175 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef