不動産登記
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権利に関する登記は、不動産についての権利の保存、設定、移転、変更、処分の制限又は消滅を公示するための登記である(法2条4号、法3条)[4]。権利に関する登記は第三者対抗要件である(民法177条)。不動産についての権利の優先関係が問題となるときは、登記の有無、先後が基準となる。一般に登記といえば、権利に関する登記のことをいうことが多い。

法59条から法118条に主要な規定があり、各種法令・通達が実務のため規定・発令されている。

登記事項には、登記の目的、受付年月日・受付番号、登記原因及びその日付、権利者の住所・氏名等がある(法59条)。
所有権に関する登記

権利に関する登記のうち、所有権に関する登記は、権利部の甲区に記録される(規則4条4項)。所有権に関する登記には、次のようなものがある。

所有権の保存の登記
新築などで、初めて甲区に記録される場合に、所有権の保存の登記がされる。登記の目的に「所有権保存」と記録され、所有者の住所・氏名が記録される。登記原因及びその日付は登記されない(法76条1項)。所有権保存登記の申請をすることができる者は、以下の者に限定されている(法74条)。
表題部所有者またはその相続人その他の一般承継人。

所有権を有することが確定判決によって確認された者。

収用により所有権を取得した者。

区分建物の場合で、表題部所有者から所有権を所得した者。なお、その建物が敷地権付き区分建物の場合、敷地権の登記名義人の承諾が必要である。


所有権の移転の登記
所有権保存登記又は前の所有権の移転の登記の名義人から所有権の移転を受ける場合にされる。登記の目的には「所有権移転」と、登記原因及びその日付には「平成○年○月○日売買(又は贈与、相続等)」と記録され、権利者として新しい所有者の住所・氏名が記録される。所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈により所有権を取得した者も、同様の扱いとなる(法76の2条)。

処分の制限の登記
差押え仮差押え及び処分禁止の登記が具体例である。これらの登記はすべて公署の嘱託によりなされ、当事者は申請をすることはできない(民事執行法48条1項、民事保全法47条3項・53条3項、法16条1項)。

登記されている所有権の登記事項に変更等があったときは、次のような登記がされる。

変更の登記
既存の登記の権利の内容が変更されたとき(共有物分割禁止の定めなど)や、登記名義人の表示が変更されたとき(改姓、住所移転、行政区画の変更等)には、変更の登記がされる(法2条15号、法64条、法66条)。

更正の登記
登記事項に誤りがあった場合には、更正の登記がされる(法2条16号、法67条)。

登記の抹消
権利に関わる登記において、登記された権利が最初から存在しなかったか、事後的に消滅した場合には、登記の抹消がされる(法68条、法69条)。

登記の回復
抹消された登記を、利害関係のある第三者の承諾を経てもとの順位で復活させる登記である(法72条)。なお、不動産登記法附則3条1項の指定を受けていない登記所(コンピューター化未移行庁)において旧登記簿が火災等により滅失したため登記がない状態になった場合、旧不動産登記法19条・23条及び69条ないし75条に規定される滅失登記の回復がなされる(規則附則6条1項)。
所有権以外の権利に関する登記

権利に関する登記のうち、所有権以外の権利に関する登記は、権利部の乙区に記録される(規則4条4項)。所有権以外の権利で登記されるのは、用益物権地上権永小作権地役権)、担保物権先取特権質権抵当権)、賃借権採石権である(法3条)。不動産に関する権利であっても、同三条に列挙されていない占有権や留置権などは登記できない。また甲区のない登記簿に乙区のみを登記することはできない。なお敷地権は建物の表示に関する登記事項である。

抵当権の設定の登記
甲区の所有者が抵当権を設定したときにされる。登記の目的には「抵当権設定」、登記原因及びその日付には「平成○年○月○日金銭消費貸借同日設定」などと記録され、抵当権者の住所・氏名のほか、債権額、債務者の住所・氏名等が記録される(法83条、法88条)。

登記名義人の氏名等の変更の登記等
名義人の氏名・名称・住所について変更があった場合になされる。なお更正についても同様である。

抵当権の変更の登記
抵当権の登記事項に変更があった場合にする。

抵当権の移転の登記
抵当権者が抵当権を譲渡したときにされる。既に存在する抵当権の設定の登記に対する付記登記として登記される(法4条2項)。

抵当権の処分の登記
抵当権の処分(民法376条)があった場合にする。

抵当権の順位の変更の登記
登記された担保物権の順位を変更する場合にする。

根抵当権の設定の登記
当事者が根抵当権を設定した場合にする。

根抵当権の変更の登記
根抵当権の登記事項に変更があった場合にする。

根抵当権の処分の登記
根抵当権につき根抵当権の処分・譲渡・分割譲渡・一部譲渡・共有者の権利移転があった場合にする。

民法第398条の14第1項ただし書の定めの登記
根抵当権の準共有者が、弁済を受ける割合や、優先弁済を定めた場合にする。

根抵当権の移転の登記
根抵当権の承継があった場合にする。

買戻しに関する登記
売買契約と同時に買戻特約を設定したときにされる。買戻しの登記は、売買による所有権移転登記申請と「同時に」する必要がある(大判明33.10.5)。

地上権の設定の登記
甲区の所有者が地上権を設定したときにされる。地上権者の住所・氏名のほか、地上権設定の目的、地代、支払時期、存続期間等が登記される(法78条)。

地役権の設定の登記
当事者が地役権を設定した場合にする。

賃借権の設定の登記
甲区の所有者が賃借権を設定したときにされる。賃借権者(賃借人)の住所・氏名のほか、賃料、支払時期、存続期間等が登記される(法81条)。賃借権は債権であるが、登記したときは対抗力を持つ(民法605条)。

民法第387条第1項の同意の登記
先順位の抵当権に賃借権を対抗させる場合にする。

これらの権利の変更、消滅等が生じたときは、所有権に関する登記と同様、変更・更正・抹消ならびに回復の登記がされる。

変更の登記
登記事項に変更があった場合にする。

移転の登記
権利の承継があった場合にする。

登記の抹消
権利や登記事項が消滅したか不存在だった場合にする。
仮登記

本登記(終局登記)を申請する要件が調わないとき、具体的には

登記の申請に必要な情報を登記所に提出することができないとき

権利の変動の請求権を保全しようとするとき

に、順位を確保するために行われる登記を指す(法105条)。仮登記自体に対抗力はないが、後に本登記を行うことで、仮登記の順位で本登記が行われたことになる。(法106条)。
付記登記

権利に関する登記のうち、既にされた権利に関する登記についてする登記であって、当該既にされた権利に関する登記を変更し、若しくは更正し、又は所有権以外の権利にあってはこれを移転し、若しくはこれを目的とする権利の保存等をするもので当該既にされた権利に関する登記と一体のものとして公示する必要があるものをいう(法4条)。

登記の順位は原則として登記申請受付の時間的前後によって決まるが、付記登記では既存の登記と一体のものとして、当該既存の登記と同じ順位で公示される。例として、代位の付記登記(民法501条)等がある。
登記手続

登記は、当事者の申請又は官庁・公署の嘱託(法116条)に基づいて、登記官が登記簿に登記事項を記録することによって行う(法11条、法16条1項)。

不動産が2以上の登記所の管轄区域にまたがる場合、法務省令で定めるところにより、法務大臣または法務局もしくは地方法務局の長が、当該不動産に関する登記の事務を司る登記所を指定する(法6条2項)。そして、登記の申請を当該2以上の登記所のうち、1の登記所にすることができるのは、登記事務を司る登記所の指定がされるまでの間に限られる(法6条3項)。
申請
概要

表示に関する登記は、登記名義人やその代理人からの単独申請によるほか、登記官が職権ですることができる(法28条)。

以下の者には申請義務が課せられている(いずれも1か月以内)。

土地・建物の表題部の登記は、所有者

土地・建物の表題部の変更の登記は、表題部に記載された所有者または所有権の登記名義人

土地・建物の滅失の登記は、表題部に記載された所有者または所有権の登記名義人

建物合体の登記は、以下のとおり

合体前の二以上の建物が表題登記がない建物及び表題登記がある建物のみであるときは、当該表題登記がない建物の所有者又は当該表題登記がある建物の表題部所有者

合体前の二以上の建物が表題登記がない建物及び所有権の登記がある建物のみであるときは、当該表題登記がない建物の所有者又は当該所有権の登記がある建物の所有権の登記名義人

合体前の二以上の建物がいずれも表題登記がある建物であるときは、当該建物の表題部所有者

合体前の二以上の建物が表題登記がある建物及び所有権の登記がある建物のみであるときは、当該表題登記がある建物の表題部所有者又は当該所有権の登記がある建物の所有権の登記名義人

合体前の二以上の建物がいずれも所有権の登記がある建物であるときは、当該建物の所有権の登記名義人

合体前の三以上の建物が表題登記がない建物、表題登記がある建物及び所有権の登記がある建物のみであるときは、当該表題登記がない建物の所有者、当該表題登記がある建物の表題部所有者又は当該所有権の登記がある建物の所有権の登記名義人


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