下水処理場
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「生き物」である微生物を適切に育成・管理する必要があるが、比較的低コストでかなり高度な浄化を行うことが出来るため、ほとんどの処理場で主処理(二次処理)工程として採用されている。生物的処理では細菌から原生動物、あるいは微小生物が混在して存在し、代謝・資化による物質循環と食物連鎖が成立していると考えられる。これらは多様な種に及び、無数の新種を抱えている模様だが、実務的には視覚的特徴に基づき分類・管理されている。

以下、生物的処理の詳細について詳述する。
浮遊生物法

水を曝気・エアレーションにより酸素を溶解させ、同時に攪拌混合するエアレーションタンクを設け、その中に主に好気性微生物を浮遊滞留させて汚水を処理する方式。活性汚泥法と酸化池に分類される。このうち、活性汚泥法には次の方法がある[12]
標準活性汚泥法
基本となる方式で、汚水を6?8時間程度滞留させてその間に浄化する。
ステップエアレーション法
標準活性汚泥法の発展版。エアレーションタンクを4つ位に分割し、それぞれに汚水を流入させる方式。標準活性汚泥法よりも処理負荷をやや高くすることができる。
長時間エアレーション法
標準活性汚泥法の発展版。汚水を24時間程度滞留させて安定した処理を目指す小規模向きの方式。
酸素活性汚泥法
密閉したエアレーションタンクに純酸素を吹き込んで処理を行う方式。滞留時間を標準活性汚泥法の半分以下に抑えられるため、設備の設置面積を小さくできる。少ない。
オキシデーションディッチ(OD)法
流れるプールのような循環水路を用いた小規模向きの方式。小規模処理場では最も採用例が多い。
回分式活性汚泥法
ひとつのエアレーションタンクで生物処理と固液分離の行程を交互に行う小規模向きの方式。
膜分離活性汚泥法
固液分離を分離膜により行い、高濃度の活性汚泥で高い処理負荷(すなわち、小さい反応タンクと最終沈殿池以降の工程が不要な設備で標準活性汚泥法と同等以上の処理水質が得られること)を達成できる方式[要出典]。
生物膜法

接触材・濾材を配した水路や水槽、あるいは濾材を組み上げた濾床を設け、接触材表面に多様な微生物から成る生物膜を成長させて汚水を処理する方式。生物膜とは水中の固体表面に自然発生する、例えば川底の茶色いコケと同様のもので、好気から嫌気まで多種の微生物で構成される。接触材は水流と生物膜の重量に耐えるものとして、砕石やプラスチックが主に使われる。生物膜と汚水の接触方法、酸素の供給方法によりいくつか種類があり、生物膜が常に水面上にある、常に水面下にある、その中間、の3つに大別できる。それぞれ代表例を以下に記す[12]
散水濾床法
最初期の下水処理場で使用された生物処理法で、砕石に汚水を散水し空気中の酸素を利用する。処理水の水質が悪く、現在は採用されることがない。
接触酸化法
水槽中に接触材を沈め、曝気攪拌する。設備面では標準活性汚泥法と似ている。
好気性濾床法
下部から曝気を行っている濾床に汚水を通水することで、濾過と生物処理を同時に行う方式。最終沈殿池が不要である。
回転生物接触法・回転円板法
汚水に一部を浸した円板を横軸回転させ、生物膜に汚水と空気を交互に供給する。
担体法

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浮遊生物法と生物膜法の中間的な方式で、微生物を担持させた担体を水中で流動させ、汚水を処理する。担体の形状や材質により、担体密度や撹拌方式(無撹拌?浮遊生物法なみ)により、担持させる微生物の種類により、多様な手法が開発・運転されている。実施設では既存曝気槽を改造し担体を投入する例が多く、そのほか民間ではプラントとして有用物質製造を行う例まで幅広い。
結合固定化方法
微細なスポンジを曝気槽に投入し、中に生物膜を生育させて利用する例に代表され、下水処理向き。
包括固定化方法
工場で培養した微生物を担体と成形し利用する。生物反応塔での物質生産などで主流の方式。
化学的処理

薬品による放流水の消毒や、高度処理における金属イオンによるリン酸イオンの難溶化処理などがあげられるが、現代では有機物の浄化を行う主処理としては用いられていない[要出典]。
消毒

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処理水質への要求水準は多様だが、衛生的観点からは病原体の含まれないことは特に重要であり、消毒設備が設けられる。消毒とは人体への感染危険性を低減するもので、医学的・生物学的意味での滅菌とは異なる。病原体とは一部の細菌、ウイルス、原生生物や寄生虫などを指すが、中には消毒の難易度が高いものもある。

消毒効果を計る指標として大腸菌群が用いられる[13]。培養と検出が容易で普遍的な腸内細菌であることを利用し、消化器系病原菌の残存を間接的に検出する。
塩素消毒

次亜塩素酸による酸化および酵素反応の阻害による。次亜塩素酸は不安定なので固形塩素(次亜塩素酸カルシウムトリクロロイソシアヌール酸の製剤)、次亜塩素酸ナトリウム、液化塩素、などを水に溶解させて生じさせる。これらの使い分けは主に施設規模に依り、後のものほど大規模処理向きである。

次亜塩素酸はpH7.5程度を境に消毒力が急減する(約100分の1)性質を持つほかアンモニアと反応してクロラミンに変化するため、処理水質の悪化などでアンモニア態窒素が大量に残留すると、影響が大きい。

また、細菌に対しては数mg/L以下でも効果を発揮するが、ウイルスを消毒するには200mg/L程度必要とされ、下水処理場の塩素消毒レベルでは事実上効果がない。これはウイルスは阻害されるべき酵素反応を行っていないため、生物学的に消毒(いわば毒殺)することが出来ず、化学的な酸化力により分解することで消毒するしかないためである。

このため、SRSV(ノロウイルス)などに対応するためには、それに適した消毒法・設備が必要となる。
紫外線消毒

核酸波長253.7nmの紫外線を吸収することで遺伝情報が損傷し、不活化する。このためウイルスに効果的で、その他にもハロゲン副生成物を生じず混和時間・設備が不要などの特長を持ち、雨天時放流水へも利用される。

紫外線は透過力が小さく、光をさえぎる懸濁物質に弱いため、固液分離不調による影響が特に大きい。また、残留消毒力を持たず、残留塩素濃度のような管理指標も無いため、後段に補完的な塩素消毒設備を追加する事もある。なお、一度不活化した細菌が日光などで再活性化する現象が知られているが、増殖能力の回復には至らず感染リスクは低いとされる。
オゾン消毒

オゾン分子や発生ラジカルにより、病原体の体そのものを酸化分解するもので、消毒以外にも高度処理で利用されている。オゾンは空気または分離した酸素から無声放電によりオンサイトで製造し使用する。オゾンは有害なので、処理水への溶解・反応設備の他に余剰ガスの分解設備や濃度監視装置などが必要となる。

オゾンによる酸化分解反応の効率は、化学反応の原則に従い水温に依存し、冬季など低温下で消毒力が低下するため、保温などの対策が必要となる。
その他

二酸化塩素や臭素系薬剤、膜濾過除去などが実用化されている。
高度処理

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下水処理場での高度処理には、下記の方法が用いられる。
窒素・リン除去
通常、高度処理とは、窒素及びリンの除去を目的とした処理の事を言う。これは、生物反応槽内に、2種類以上の嫌気・無酸素・好気的な状態をつくりだすことで、好気性菌や通性嫌気性菌等の微生物を利用して、窒素やリンの除去を行う処理方法である。代表的な処理方法として、リン除去には、嫌気・好気法(AO法)。窒素除去には、循環式硝化脱窒法(無酸素・好気法)。窒素・リン除去には嫌気・無酸素・好気法(A2O法)が行われる。また、生物処理によるリン除去が上手く行かなかった時に備えて、生物反応槽の最終部にポリ塩化アルミニウム(PAC)等の無機凝集剤を添加し、リン酸を凝集沈殿処理することもある。(公共下水道においては、下水中に窒素分が多いため#標準活性汚泥法の反応槽では硝化が進み最終沈殿池で硝酸濃度が高くなる。すると最終沈殿池で脱窒反応(硝酸→亜硝酸→窒素)が発生し窒素ガスにより汚泥が浮上し固液分離が上手く行かず水処理に悪影響をもたらす。これを回避しようとして、硝化を抑制しようと反応槽内の溶存酸素量を下げたり、汚泥濃度を下げて運転すると糸状菌が大量発生して汚泥が沈降しないバルキングという状態になり、固液分離が上手く行かず水処理に悪影響をもたらす。公共下水道にとって脱窒は必須の技術である。)
濾過施設
最終沈殿池では比重差による固液分離を行うため、微量の懸濁物質が処理水に混入しがちである。


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