上層言語
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基質の影響を識別するには、基質言語の構造に関する知識が必要であるが、これはさまざまな方法で取得可能である[3]。基層言語、またはその子孫は、かつて分布していた範囲の一部でまだ存続している可能性がある。基層言語の文書による記録は、様々な程度で存在する可能性がある。基層言語自体は不明でも、比較のベースとして使用できる現存の近親語がある可能性がある。

基質言語の影響について最初に特定された事例の1つは、ガリア語である。ガリア人は、ローマ人が到着する前、現在フランス語が話される領域に住んでいた。ラテン語を話すことで得られる文化的、経済的、政治的利点から、ガリア人は元来の言語放棄し、ローマ人によってもたらされたラテン語を取り入れ、最終的には今日のフランス語が形成された。ガリア語の話者はローマ時代後期に姿を消したが、その語彙の痕跡は、いくつかのフランス語の単語(約200)とガリア語起源の地名に受け継がれている。また、フランス語のいくつかの構造変化(ガリア人がラテン語に言語交替した後もガリア語の音声パターンの保持したことによる通時的な音変化などは、ガリア語の影響[4]によって少なくとも部分的に形作られたと考えられている[5][6][7]フランス語ガリア語から発音上の大きな影響を受けており、連音現象(リエゾンアンシェヌマン子音弱化)、アクセントの無い音節の欠落、uがウでなくユと発音されるのは、基層言語のガリア語の影響である。(フランス語史を参照)

基層言語の他の例は、シェトランド諸島オークニー諸島のスコットランド方言に対する、現在は消滅している北ゲルマン語ノルン語の影響である。アラブ中東および北アフリカでは、口語的なアラビア語の方言、特にレバンティンエジプト、およびマグレブの方言は、他の地域のセム語(特にアラム語)、イラン語ベルベル語の基層の影響がある。イエメンアラビア語には、現代南アラビア語、旧南アラビア語、ヒムヤル語の基層がある。

日本においても、東北出雲ズーズー弁は基層言語に由来するという説[8][9][10]がある。
基層言語と上層言語の例

(基)=基層言語、(上)=上層言語、(生)=生成された言語
上層言語が軸となったもの
[11]


ガリア語(基)+俗ラテン語(上)⇒ ガロ・ロマンス語(生)

ゲール語(基)+初期近代英語(上)⇒ アイルランド英語スコットランド英語(生)

コプト語(基)+古典アラビア語(上)⇒ エジプト・アラビア語(生)

百越諸語(基)+上古中国語(上)⇒ 粤語?語客家語呉語(生)

基層言語が軸となったもの


ガロ・ロマンス語(基)+古フランク語(上)⇒ 古フランス語(生)

古英語(基)+古フランス語(上)⇒ 中英語(生)

中世ギリシャ語(基)+オスマン・トルコ語(上)⇒ デモティキ(生)

クレオール言語となったもの


タガログ語など(基)+スペイン語(上)⇒ チャバカノ語(生)

タイヤル語(基)+日本語(上)⇒ 宜蘭クレオール(生)

元来のヴェッダ人の言語(基)+シンハラ語(上)⇒ ヴェッダ語(生)

仮説

バスコン語基層説 - 西ヨーロッパの言語のいくらかにはバスク語族バスク語のみが現存)が基層言語として残存しているという説。

ゲルマン語基層言語説 - ゲルマン祖語の成立において、非印欧語の基層言語が存在したという説。

日本語基層言語説 - 日本語の成立に、アイヌ語オーストロネシア語族、古アルタイ系言語などの基層言語を想定する説。

脚注^ コトバンク 基層言語
^ a b c 田口善久「基層」斎藤純男・田口善久・西村義樹編『明解言語学辞典』三省堂、2015年、43頁。
^ Saarikivi, Janne (2006). Substrata Uralica: Studies on Finno-Ugrian substrate influence in Northern Russian dialects (Ph.D.). University of Helsinki. pp. 12?14.
^ Giovanni Battista Pellegrini, "Substrata", in Romance Comparative and Historical Linguistics, ed. Rebecca Posner et al. (The Hague: Mouton de Gruyter, 1980), 65.
^ Henri Guiter, "Sur le substrat gaulois dans la Romania", in Munus amicitae. Studia linguistica in honorem Witoldi Manczak septuagenarii, eds., Anna Bochnakowa & Stanislan Widlak, Krakow, 1995.
^ Eugeen Roegiest, Vers les sources des langues romanes: Un itineraire linguistique a travers la Romania (Leuven, Belgium: Acco, 2006), 83.
^ Pierre-Yves Lambert, La Langue gauloise (Paris: Errance, 1994), 46-7. .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 978-2-87772-224-7
^ 小泉保(1998)『縄文語の発見』青土社
^ 崎谷満 (2005) 『DNAが解き明かす日本人の系譜』勉誠出版 pp153-154
^ 崎谷満(2009)『新日本人の起源』勉誠出版 pp113-115
^ ここでいう「軸となった」は、文法、基礎語彙などの言語系統を反映する要素が「軸となった」言語に属していることを指す。

関連項目

言語接触

混合言語

クレオール化

言語連合


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