他の金属の硫酸水素塩を用いても反応は進行する。この場合、反応条件は中間体の安定性に依存する。
工業的には三酸化硫黄は接触法により製造されている。まず硫黄もしくは黄鉄鉱の燃焼により二酸化硫黄(亜硫酸ガス)を合成し、電気集塵により精製する。その後二酸化硫黄を酸素及び五酸化バナジウムの存在下で400?600℃に加熱し酸化すると得られる。 S + O 2 ⟶ SO 2 {\displaystyle {\ce {S\ + O2 -> SO2}}} 2 SO 2 + O 2 ⟶ 2 SO 3 {\displaystyle {\ce {2SO2\ + O2 -> 2SO3}}}
また、硝酸法(鉛室法)の過程で二酸化硫黄が二酸化窒素と反応してもできる[1]。
SO 2 + NO 2 ⟶ SO 3 + NO {\displaystyle {\ce {SO2\ + NO2 -> SO3\ + NO}}}
接触法及び鉛室法については記事硫酸#工業的製法に詳しいので、そちらも参照のこと。
固体の構造γ-SO3分子
固体のSO3は微量の水に依存した複雑な挙動を示す[2]。気体が凝集すると、純粋な三酸化硫黄がγ-SO3と呼ばれる三量体を形成する。この固体は無色で融点は16.8℃である。この環状構造は[S(=O)2(μ-O)]3と表記されている[3]。
SO3が27℃以上で凝集してできる相は融点が62.3℃であり、α-"SO3と呼ばれている。α-"SO3の見た目はアスベストのような繊維状である。[S(=O)2(μ-O)]n型の高分子であり、末端はヒドロキシル基になっている。β-SO3と呼ばれる相もα型と同じく針状であるが分子量と融点が異なり、融点は32.5℃である。γ相とβ相は準安定相であり、時間の経過に伴い安定なα相へと徐々に相転移する。この相転移には微量の水が関わっている[4]。
固体の蒸気圧は同一温度ではα < β < γの順に大きくなる。また液体の蒸気圧はγ相の値とほぼ同じである。このためα-SO3の結晶を加熱すると、ガラス容器を粉砕するに十分な程の蒸気圧の急増が見られる。この現象はα爆発と呼ばれている[4]。
SO3は高い吸湿性を持つ。熱濃硫酸に木や綿を浸すと発火するが、これは SO3が木や綿の炭水化物に含まれている水分を脱水してしまい、炭水化物が燃えやすくなるためである[4]。
外部リンク
⇒NIST Standard Reference Database
European Chemicals Bureau
関連項目
超原子価分子
硫黄酸化物
二酸化硫黄
硫酸
参考文献[脚注の使い方]^ 『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館、2014年。