三式戦闘機
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なお碇 (2006, p. 127)によれば、1945年1月の時点で川崎航空機の年表に愛称が見られる。

連合軍におけるコードネームはTony(トニー)であった。これはアメリカではイタリア系移民の典型的な名前とされ、当初、アメリカ軍がさしたる根拠なく本機を日本の同盟国であるイタリア空軍マッキ MC.202のコピー機と誤認したことに因んで名づけられた。

本機の印象、特にファストバック型キャノピーがBf109に類似すること、および同系統のエンジンを搭載していたことから日本でも「和製メッサー」というあだ名があった[10]
総生産機数製造中の三式戦闘機

総生産機数は各型合わせておおよそ3,150機であるが、うち275機の機体が五式戦闘機(キ100)に転用されたため、三式戦闘機としての実数はこれよりやや少なく、2,875機前後となる。総生産数は諸説を列挙する。なお二型は通説では増加試作機30機および量産型374機だが、古峰 (2007, p. 156)は413機+αとする。

片渕 (2007, pp. 90?91)によれば、各型・試作型合わせて3,153機。

古峰 (2007, p. 156)によれば、3,153機+α。

秋本 (1999, pp. 120?121)によれば、3,148機かこれよりやや多い。

土井 (2002a, p. 35)によれば、I型だけで2,750機。これにII型の8機と二型(II-改)の30+374機(五式戦闘機に改造されたものを含む)を加えると3,162機。

一般に中島飛行機の一式戦闘機が5,751機、同じく中島の四式戦闘機が約3,500機生産されたとされているので、その発動機の生産に多大な問題を抱えながらも、太平洋戦争世代の陸軍戦闘機としては第三位の生産機数を誇る[11](ただし九七式戦闘機も1943年までに通算3,386機が生産されており、それも含めるなら四位である。なお、旧日本軍全体では海軍の零式艦上戦闘機が10,400機程度生産されており、これが一位となる[11])。

川崎は複数の工場を持っており、機体は岐阜工場、エンジンは明石工場で生産されていた。
開発の経緯と機体内部構造「DB 601」、「ハ40」、および「キ60」も参照三式戦一型(キ61-I)

1940年2月、陸軍は川崎に対し、ハ40を使用した重戦闘機キ60と軽戦闘機キ61の試作を指示した[12][13]。キ60の設計は1940年2月から、キ61の設計は12月から開始された[14]。設計は両機ともに土井武夫が担当した。キ60はBf109Eと互角以上の性能を示したものの[注釈 3]、他に合同試験された二式単座戦闘機の方が有望であり、なによりキ61の方が良好な性能を発揮していたため、制式化は見送られている。

キ61の設計コンセプトは、「航空兵器研究方針」における重戦軽戦のカテゴリにこだわらない万能戦闘機で、「中戦(中戦闘機)」とも呼ばれた。当時の陸軍は、軽単座戦闘機に旋回力と上昇力を求め、さらに12.7 mm機関砲の搭載も要求したことから、必然的に陸軍内の議論が発生したともされる[16]。副主任の大和田が「戦闘機は総合性能で敵に勝っておらねばならず、軽戦・重戦で分けるのは不合理だ」と語り、またこれが川崎の開発チーム共通の理念であったともしている[17]。そもそも開発チームが「中戦」と呼んでいたとする文献もある[18]など、川崎側が発祥であるともされる。

土井自身は陸軍の「軽戦闘機」思想にこだわらず、キ61を理想的な戦闘機にまとめあげようとしたと語っている[19][4][18]古峰 (2007, p. 116)はこの考えの裏に、かつて土井が設計を担当し、高速性を追求した軽戦闘機キ28が、1939年の競争試作で旋回性が劣るとしてキ27(九七式戦闘機)に敗れた経緯も影響したとする。土井は自信作であったキ28について「当時の陸軍が一撃離脱戦法を知っていれば」と述べており[20][注釈 4]、一度は九五式戦闘機の改良版とも言える降着装置を引き込み式とし最大速度480 km/hに達する高速の複葉機を計画したこともあった[22]。しかしこれはその後廃案になり、「三式戦闘機」案に変更されている。1940年9月頃には細部設計が開始された[18]。なお古峰 (2007, pp. 118, 132)は、開発初期の1940年5月頃から土井はキ61を空冷エンジン搭載機とする可能性に言及したとしている。

木型審査は1941年6月に行われ[23]、試作機は1941年12月に完成し初飛行を行った[24]。キ61はキ60と同系統のエンジンを使用しており、陸軍側もあまり期待していなかったとする資料もあるが[25]、この審査ではキ60やBf109Eの速度を30 km/h上回る590 km/hを発揮した。


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