万引き
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また、衣類に関しては、洗浄の出来無い顔料系インクを加圧封入した特殊なタグを商品に装着し、所定の治具以外で取り外すと「商品にマーキングされる」という方法で、商品窃盗を抑止している[35][36]

一部の監視カメラには、顔認識システムなどにより不審者を自動で検知する動作検知機能を伴ったものがあり、不審者を検知した後、アラームや携帯電話に電子メールを送るなどの方法で、店員に警告するシステムがある[9]

ディスカウントスーパーのPLANTでは、2008年7月から、万引の商品金額に関係なく損害賠償請求を導入し、抑止効果を上げた。このため、東京都内の一部書店中部地区三洋堂書店が損害賠償を導入しており、成果が上がりつつある[37]
客層と対策への意見

書店、文具店、レコード店の店主には、万引き対策に非常に力を入れる者がいる。これらの店で万引き被害が多い理由を、馬渕哲と南條恵は、これらの店で古くからセルフサービス方式が採られている上に扱う品物が子供たちの興味を引きやすいためだと分析した[38]。そのため、これらの店の中には「万引きお断り」「防犯カメラ設置」といった掲示を貼ったり、客が入ってくると威嚇の気持ちを込めて[38]「いらっしゃいませ」と言ったり、さりげなく客の後をつけたりするものもある。このように露骨な万引き対策をすればさすがに万引きは減るが、万引きをするつもりのない正直な買い物客にとっても感じの悪い店になってしまい、客足が遠のいてしまう。近隣に競合店がなければこのような店でも客は仕方なく買い物をするが、買い物をしやすい競合店が進出すると万引き犯のみならず正直な買い物客までそちらへ流れてしまう。このように万引き対策には大きなジレンマがある。万引き対策をすれば確かに万引きは減るが、同時に客足まで遠のいてしまうのである[38]

古着の無人店舗チェーンである「秘密のさくらちゃん」でも、無人店舗ながら遠隔からカメラで監視している。一方で顔認識システムを含む監視システムを「AIブッダ」と命名することで客の善意に訴えかけるなど、店舗を「ゆるい」雰囲気とすることで反発を和らげながら万引きを防止している[23]

また、店主や店長はともかく、一般の店員は、万引きに気づいたときの対処法についてマニュアルなどで教育を受けていたとしても、いざ万引きの現場を発見したときは見て見ぬふりをしてしまいがちである。万引きをされても、雇われた店員は直接に自分が損するわけでもなく、せいぜい店主や店長に小言を言われるだけである。万引き犯を警察に引き渡したりするのは小言を言われるより煩わしいし、万引き犯に逆上でもされれば身に危険さえ及び兼ねないので、悪事を見逃す後ろめたさはあっても、万引きに気づきたくない心理が働くのである。万引き犯の柄が悪かったり身体が大きかったりすればなおさらである[39]

1936年の松坂屋従業員向け『松坂屋読本』接客の巻では、万引きを疑わせる不審な行動への対処は十分自重して上長の指示を仰ぎ、店員自ら早まった行動に出ぬこと、また万引き犯本人や縁者の名誉のため万引き犯の身元を店外ではもちろん店内でも話題にせぬことを指示している。これらの方針について、大阪商業大学の谷内正往教授は、1929年に松坂屋銀座店において一般客を万引き犯と誤認する事件が起き、謝罪広告の掲載に至ったことの影響があるものと分析している[40]
各国民の意識調査

東京万引き防止官民合同会議がアメリカ、イギリス、フィリピン、ベトナム、韓国、中国、日本を対象にインターネットで行ったアンケート[41]によると、

調査対象のどこの国でも「万引きはいかなる理由があっても許されない」と回答した人がもっとも多かった。中でもそう回答する人の割合がもっとも高かったのは日本であった。

許されないと答えた人より少ないものの、「特に問題はない」「どちらかといえば問題ないに近い」「どちらともいえない」と答えた人も、アメリカ、ベトナム、イギリスでは1割程度ずついた。

フィリピン、アメリカ、イギリスでは、商品を店の外に陳列している店などのいわば無防備な店では「万引きされても仕方がない。店側にも問題がある」と考える傾向があった。

なお、報告書の巻頭言によれば、この種の調査に応じる時点で遵法意識の比較的高い層であると考えられるため、各国の一般層とは意識が異なる疑いがある。
関連項目

窃盗- 法務省作成の「犯罪白書」にて、侵入窃盗、非侵入窃盗、乗り物盗の3つに分けられる[17]

窃盗罪

強盗罪

デジタル万引き

内引き - 店の従業員が商品を盗む行為。

スリ - 犯行の方法が類似している。

置き引き

万引きGメン - 万引き犯の取締や確保に従事する警備員

脚注[脚注の使い方]
注釈^ (用例)窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防止し、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。(刑法第238条 事後強盗
^ (用例)強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。(刑法第240条 強盗致死傷
^ https://www.police.pref.kanagawa.jp/pdf/d5024_31.pdf 神奈川県警
^ a b “「アクティヴレイド」の花咲里あさみが警視庁の万引き防止啓発ポスターに登場” (日本語). アニメハック. https://anime.eiga.com/news/102092/ 2018年9月29日閲覧。 
^ a b c “東京新聞:「万引」呼び名変えて 「犯罪の印象薄く 撲滅妨げ」:社会(TOKYO Web)”. web.archive.org (2015年1月8日). 2022年5月26日閲覧。
^ “国内犯罪の1割は「万引き」 検挙者の4割は高齢者なのだ”. FNNプライムオンライン. 2020年7月30日閲覧。
^ “万引き(まんびき)”. 語源由来辞典. ルックバイス. 2015年5月19日閲覧。


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