万年筆
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しかしこの特徴はボールペン(1940年代?)やサインペン(1960年代?)が登場して以降は特別ではない。現代ではメンテナンス不要で万人に扱いやすいボールペンが一般に普及し、筆記具の多様化も進んでいる。その中で万年筆は、長年使い続けられる個人用の筆記具として、また手紙やフォーマルな場面に適した筆記具として、またステータスシンボルコレクションの対象として位置づけられている[13][14][15]。2016年には国立歴史民俗博物館千葉県佐倉市)で企画展示「万年筆の生活誌」が開催された[7]

1980年代以降は高級品が中心となったが、2000年代以降の日本では、高品質な低価格品の登場やインク色の多様性などを要因として、若年層にも広まっている[16][17]

万年筆は金属製のつけペンと同様に、インクの伝う毛細管である切り割りを備えた金属製のペン先を用いている。そのため、低筆圧で筆記でき、ペン先の設計によりさまざまな筆跡や書き味が得られる。使い続けることでペン先に使用者特有の癖がつくため、貸し借りには向かないが、本人に馴染んだ書き味になっていく。筆跡に余分なインクが残りやすいため、これを吸い取るブロッターが利用されることもある[18]

インクを補充しながら長年使われるため、定期的な洗浄といったメンテナンスを必要とするが、ペン先の接触部分(ペンポイント)に耐摩耗性の高いイリドスミン合金が使用されるなど長寿命に設計され、好みのインクを入れて使用できる。高級品を中心に、ペン先に耐腐食性や弾力のあるを用いたり、さまざまな工芸装飾を施したり、手作業で製造・調整されたものも少なくなく、既製品のほか特注品も作られる。メーカーや店舗によっては、ペン先の調整や修理といったアフターサービスも提供される。

水性ボールペンやサインペンにおいても同様のことであるが、液体の水性インクを用いるため、ペン先の乾燥に弱く、紙によっては筆跡が滲みやすく、極端な温度気圧変動や衝撃によってインクが漏れる場合もある。
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出典検索?: "万年筆" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2023年7月)
カートリッジ式万年筆のパーツ。一番上が全部を組み合わせた状態。以下、上から順にキャップ、本体、カートリッジ、コンバーターである。本体には窓があり、インク残量を視認できる。左からペン先、ペン芯、首軸

万年筆は多数のパーツを組み合わせて作られている。[19]
ペン先

ペン先(ニブともいう)には常時インクが接触していることから耐酸性が、強弱のある書き心地を実現するために適度な柔らかさが、長年使用することから耐磨耗性が、それぞれ必要となる。
ペン先の素材さまざまな万年筆のペン先

現在主にペン先に使われているのは、以下の素材である。

万年筆において一般に使用される素材で、ペン先の材質に不可欠な要素である強度と耐薬品性と柔軟性を兼ね備えている。純金(24K)のままでは耐久性に難を残すため各種金属を含む合金の形で使用され、配合率は58.5%(14K)から75.0%(18K)が一般的。耐久性の面では14Kのものがもっとも優れていると言われるが、フランス向けの需要から18Kのものも使用される。かつては、ペン先の金の配合率が高級感や書き味を増すと考えられ、日本国内メーカーを中心に金品位競争が激化した時期があり、最高で24Kまでエスカレートした。ルテニウムロジウムめっきされるものもあり、これらは銀色の仕上がりとなる。なお、金は弾性に富むが耐摩耗性に劣るため、尖端にペンポイントと呼ばれるイリジウム(基本的に現在は用いられていない)およびオスミウムとの合金であるイリドスミンの玉が溶接されている。
ステンレス鋼
金を使用したペン先に比べ柔軟性は劣るが、コストパフォーマンスが優れており量産にも向くため、デスクペン、鉄ペンと呼ばれる低価格な商品では多用される。また、製品によっては金めっきされている場合もある。

あまり一般的ではないが、ぺんてる「プラマン」シリーズといった使い捨て・部品交換式の製品では、プラスチック製のペン先も使われている。
ペン先の形状

インクをペンポイントに導くとともに弾力を出すためペン先には切り込みが入っており、筆圧をかけたとき不用意に曲がらないよう剛性を出すため若干湾曲させてある構造が一般的。ペン先の切り込みは一般的には切り割りといい、ハート型や丸形をしているハート穴まで通じている。ハート穴は空気穴となっている場合が多く、筆記によってペン内部より排出されたインクと同量の空気をペン内部に供給している。空気の吸入はハート穴に拠らず、ペン芯に空気穴をあけることによって供給している場合もある。

ペン先は通常異なる太さのものが数種類用意され、EFもしくはXF(極細字)、F(細字)、FMまたはMF(中細字)、M(中字)、B(太字)、BB(極太字)、C(特太字)、MS(ミュージック)などと表記される。同じ太さでもメーカーや製品ごとの個体差があり、また紙とインクとの相性等にも大きく左右される。また、ニブが柔らかいソフトニブ(SF、SMなど)や、その他の特殊ニブも存在する。

日本メーカーのペン先は、欧米メーカーよりも半段階から一段階程度細く、インク流量も少ない。これは左から横書きする欧文と異なり、便箋に右から和文を縦書きする場合は書かれた文字の上を手がすべるため、インク流量が多いと字がすれて汚れること、線の少ないラテン文字に比べ、画数の多い漢字は細く均一な描線が必要なことなど、日本製のペンが和文筆記の特性を考慮していることによる。
ペン芯

インクタンクからペン先へとインクを導き、またインクタンクに空気を取り込む(気液交換)ための部品をペン芯と呼ぶ。かつて、素材はインクに馴染みやすいエボナイトが使用された。現在ではエボナイト製のペン芯を使用しているメーカーは皆無に等しい。現在は合成樹脂を使用するものが多く、また、その方が精度が高いものを容易に大量生産することができる。インクタンクからペン先まで細いインク溝が掘られており、毛細管現象によりインクが常に供給されるとともに、空気の通り道となる空気溝が掘られており、インク供給で下がったタンク内の圧力を大気圧に戻す。ペン芯にはタンクから出たインクを一時的に溜める蛇腹状の溝や櫛溝が掘られており、気圧変動などによるインク漏れを抑える構造となっている。

ペン芯はペンそのものの性能や書き味を左右する重要な部位である。また、工作精度が低いものや、いわゆる「ハズレ」は、この部分に不具合を持っている場合がある。
本体(軸胴部)

万年筆のうち、キャップや胴軸(筆記する際に手で持つ部分)は重量バランスひいては書き味を左右する部分であり、かつてはセルロイドエボナイトなどの軽量な素材が主に使用された。現在は、プラスチックアクリル製、金属に塗装や鍍金加工を施したものがほとんどであるが、高級万年筆には、耐久性を重視してエボナイトを用いるもの、ブライヤー黒檀炭素繊維強化プラスチックなどの特殊素材を用いるものがある。セルロイドは取り扱いに規制があるため、類似した素材であるアセチルセルロース(アセチロイド)によりかつてのセルロイド製万年筆のような外観を再現する例もある[20]

デザインも万年筆の評価、価値を決める重要な要素であり、高級万年筆には貴金属宝石で本体を装飾したものもある。日本では、漆塗蒔絵などの伝統工芸を生かした万年筆が第二次世界大戦前から製作され、特に戦前の並木製作所(現・パイロットコーポレーション)の蒔絵万年筆は「NAMIKI(ナミキ)」のブランドで海外に輸出され、高い評価を得ている。

吸入式タイプであるものの多くは、インクタンク内のインク残量を見るための窓(インク窓)が設けられている場合が多い。単に素通し、透明プラスチックがはめ込んであるだけというものも多いが、高級なものではデザインの中に取り込む工夫がなされており、万年筆の意匠を特徴づける要素の一つともなっている。また完全に無色透明で中の機構を外側から見ることのできるものもある。ただしカーボン系のインクの場合、表面張力が小さいためインク窓表面全体にインクが広がり、かつインク自体透光性が低いため、インクの量を確認できない場合がある。
キャップ

万年筆のキャップはペン先を保護するとともに、インクが乾かないように密閉しておく役割も持つ。


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