丁子
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西欧がチョウジの原産地をようやく「発見」したのは1511年ポルトガルデ・アブレウセラウンバンダ諸島発見以降である(ブルネイの歴史を参照)。1770年にフランスがモーリシャスレユニオンでの栽培に成功し、そこからアフリカ東岸のザンジバルペンバ島に伝わり今日の大農園化へ導いた。

近代まで、チョウジはモルッカ群島(歴史的に香料諸島と呼ばれていた)のいくつかの島でのみ生育していた。これらの島にはバカン島(英語版)、マキアン島(英語版)、モティ島(英語版)、テルナテ、ティドレ(英語版)が含まれる[12]。実際、専門家が世界最古と考えている「Afo」と名付けられたチョウジノキの樹木はテルナテにある。この木の樹齢は350年から450年である[13]。旅行者は、この木から1700年にピエール・ポワブルという名前のフランス人によって盗まれた種子が、フランス島モーリシャス)、次にザンジバル(かつては世界最大のチョウジの生産地だった)へと運ばれた、と伝えられる[13]

チョウジがモルッカ群島外で育てられるまで、石油のように輸出に強制的な制限がかけられ取り引きされた[13]オランダ東インド会社が17世紀に香辛料貿易の統制を強化すると、ナツメグで行ったようにチョウジについても独占を手にしようとした。しかしながら、「小さなバンダ諸島に限定されていたナツメグやメイスとは異なり、チョウジの木はモルッカ群島全体にわたって生育しており、チョウジ交易には東インド会社の限定された警察権の能力を超えていた[14]」。

日本にもかなり古く、5?6世紀には紹介されていた[要出典]。正倉院の帳外薬物のなかにも丁子(丁香)がある[15]。また「南蛮料理書」には現在のから揚げの原型と思しき料理に「魚の料理。何魚なりとも脊切り、麦の粉をつけ、油にて揚げ、その後、丁字の粉、にんにく磨りかけ、汁よき様にして煮〆申也」とあり、古くから食用としても認知されてきた。

貴重な輸入品であり、七宝にも数えられていたことから紋章としても人気が出ていった。家紋として用いた氏族に三条西家押小路家が挙げられる。
香辛料チョウジを挿したハム

チョウジは料理で使われるので、マーケットの香辛料売り場で売られている[4]アジアアフリカ、および近東(英語版)・中東(英語版)諸国の料理において、肉やカレーマリネ、その他リンゴ、ナシ、あるいはルバーブといった果物、に風味を付けるために使われる。チョウジは熱い飲料に芳香や風味を与えるために、しばしばレモンや砂糖といったその他の食材と組み合わせて使われることもある。チョウジはパンプキンスパイススペキュラース用スパイスといった混合香辛料の共通要素である。

香辛料として肉料理によく使われるが、他の香辛料とブレンドしてカレーなどに使用することが多い。また、カルダモン桂皮ショウガなどと合わせてチャイの香り付けに使われる。肉塊にそのまま刺し、ローストして臭みを消す料理法にも用いられる。

メキシコ料理において、チョウジは「clavo de olor(香りのクローブ)」として最もよく知られており、しばしばクミンシナモンと共に使われる[16]。また、ペルー料理においても、カラプルクラアロス・コン・レチェのような幅広い料理において使われる。

チョウジの風味の主要な要素はオイゲノールによって与えられており[17]、必要なこの香辛料の量は通常は少ない。シナモンやオールスパイスバニラ赤ワイン、およびバジル、その他タマネギ柑橘の皮八角コショウの実とよく合う。

口臭があるときに丁香(乾燥した花蕾)を口に含んでいると臭い消しに役立つ[4]含香として、密教で灌頂や勤行前の口内のお清めに乾燥した丁子を刻んだものを口に含み噛んで使用する。
料理以外での利用

チョウジの精油「丁子油」は丁子入りタバコに使用され、ヨーロッパ、アジア、およびアメリカ合衆国の至るところで吸われてきた。クローブの原産地であるインドネシアではクレテックと呼ばれる巻きタバコが一般的であり[2]、消費量はクローブを含まないタバコに比べ圧倒的に多い。タバコブランドとしては日本では「ガラム」が知られている。なお、丁子入りタバコは、米国においては2009年からフレーバー紙巻きタバコが禁止されたため、葉巻きたばこに分類されている[18]

丁香(花蕾)を蒸留した丁子油は、刀剣や精密機械のさび止めに使う[4]日本刀のさび止めにも用いられ、江戸幕府は享保11年(1726)に幕府医の桂川甫筑(桂川甫周の始祖)に丁字油の製造を命じた[19]

チョウジはその芳香からポプリの材料として使用される。オレンジなどの果実に釘のように刺して乾燥させたものがフルーツポマンダーである[20]。中世ヨーロッパではペストなどから身を守るのにお守りとしてポマンダーを下げることが有効だと考えられていた。ヴィクトリア朝時代のイングランドにおいて贈り物として贈られた時、こういった匂い玉は心温まる感情を示した。

日本では古くから、「丁子風炉」が使われた。これは炉の上に釜をかけ、その中に丁子を入れて煎じて香気を出させるもので、室内の防臭・防湿に用いた[21]

匂い玉としてオレンジに使われるチョウジ

丁子風炉

伝統医学熟して脱落した果実。乾燥させたものが生薬の母丁香[22]

チョウジはインドのアーユルヴェーダ中国医学、そして西洋のハーバリズム歯学において使われており、歯科において精油は歯科救急(英語版)と様々なその他の疾患に対して痛み止めとして使われている[23]。精油はアロマテラピーにおいて使われている[24]

生薬としての花蕾を陰干しして乾燥させたものを丁子(ちょうじ)、または丁香(ちょうこう)といい、芳香健胃剤として日本薬局方に収録されている[25]漢方では女神散(にょしんさん)[26]、柿蒂湯(していとう)[4][27]、丁香茯苓湯(ちょうこうぷくりょうとう)[4]などに配剤されている。

伝統医学において長年使われているものの、オイゲノールを含むチョウジ油歯痛またはその他の種類の痛みに有効であるとする証拠はほとんど存在せず[24][28]、1報の総説がドライソケットに対して鎮痛剤として酸化亜鉛と組み合わせたオイゲノールの有効性を報告している[29]


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