一級建築士
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国土交通省ウェブサイトにおいて、APECアーキテクト・プロジェクトについて「APEC域内における建築職能サービスの提供に関し、2000年5月のAPEC人材養成作業部会において、建築家の移動を促進する仕組みを構築することを目的としてオーストラリアがAPECアーキテクト・プロジェクトを提案し、プロジェクト開始が決定された」旨を記載しており、同省では、日本ではAPECアーキテクト登録のアーキテクトに一級建築士であることを要件とした。
各国の建築士制度

欧州の産業革命により発展した工業技術は明治維新の日本に持ち込まれ、それまで木造が主流であった日本に組石造や鉄筋コンクリート造の建築物が建てられるようになった。

従来の日本では大工の棟梁が設計と施工を統括していたが、欧州では設計と施工の職域が独立していた。

明治維新の先進的な建築では技術の見識を持つ建築家が設計を担当し施工者を指導して目的の性能を持つ建築物を完成させる分業が始まった。

その後は鉄骨造や膜構造など建築の構法が多様化し職域の専門化と分業化が進んでいる。

近年では意匠と構造と設備に独立した統括者を置くなど設計監理業務が組織化し企業化する傾向にある。

建築物の製造者責任と完成後の維持保全についても社会的関心が高まり、資格者である1人の建築士が全ての責任を負うべきか議論が必要になっている。

日本の建築士制度(1950)の特徴は建築設計者の資格と技術者資格が一体になっていることで, このため建築士の登録者数が多いとされる。日本の建築士の数と欧米諸国の建築家の数を比較すると, イギリス約3万人,アメリカ約8万人に対して、日本の1級建築士の数は32万6000人(2007)を超えており, 日本の建築士の数は圧倒的に多い[注 1]。これは建築士制度に更新制がない生涯資格であること、建築設計者だけでなく、建築関係の技術者を含んでいることなどのためであるとされている[注 2]。MABコンサルティング代表の中小企業診断士で(社)中小企業診断協会東京支部建設業経営研究会幹事、NPO消費者住宅フォーラム理事の阿部守[4]樋口忠彦新潟大学名誉教授など、土木技術者・土木工学者で取得しているものや坂井信行司波寛など土木出身で都市計画業に従事しているもの、塩田敏志佐々木葉二など、ランドスケープアーキテクトで取得しているもの[注 3]構造エンジニア[注 4]や建築設備技術者、建築施工技術者などまで日本の一級建築士の中には責任ある立場で建築設計等の業務を行っていない者が含まれており、諸外国のアーキテクトとは性質が違うことが指摘されている。この問題について、現に一級建築士事務所の開設者かつ管理建築士である者をもってアーキテクトとするのが妥当であるとの立場では、日本におけるアーキテクトは人口1万人あたり5人程度となり、諸外国のアーキテクト人口比率と同程度の数値となるが、構造設計事務所や建築設備設計事務所の開設者の建築士事務所も、一級建築士の所属する職場、例えば官公庁自治体建築部局、建設会社設計部所や一級建築士事務所登録をする住宅メーカー不動産会社なども管理建築士を有する一級建築士事務所である。
日本の建築士制度

建築士
英名 Architect

実施国 日本
資格種類国家資格
分野不動産・建築
試験形式学科、設計製図
認定団体国土交通省
等級・称号一級建築士、二級建築士、木造建築士
根拠法令建築士法
公式サイトhttps://www.mlit.go.jp/
ウィキプロジェクト 資格
ウィキポータル 資格
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年1回行われる建築士試験に合格し、管轄行政庁国土交通大臣または都道府県知事)から免許を受け、設計・工事監理などを行う。建築士資格の種類により、設計・工事監理できる建築物の規模等に違いがある。近年では建築構造と建築設備の各分野においてそれぞれ構造一級建築士、設備一級建築士の制度を発足させている。2020年4月1日時点での累計登録者数は、一級建築士は371,184人(最高齢は140歳以上となるが実際には半数以上が死亡している。また、法定講習受講者数から現役一級建築士は14万人程度であることがわかる。一級建築士事務所は74,732社)、二級建築士は775,032人(同じく半数以上が死亡しており、現役二級建築士は20万人程度。二級建築士事務所は25,095社)、木造建築士は18,364人(制度が新しいため多くは存命であるが、現役木造建築士は1万人程度。木造建築士事務所は215社)となっている。

ごく小規模なものを除き、建築物の設計又は工事監理を行うには建築士の免許が必要である。他の多くの資格と違い、この制限は報酬を得なくとも、業としてでなくとも適用され[注 5]、たとえ本人の住む家であっても例外ではない。これは建築物が多くの人の生活に密接に関わり、場合によっては命を奪う凶器にもなりかねないことからなされている制限である。医療行為ですら業としてでなければ医師以外の者が行うことを禁止していないことから、建築士の行う設計又は工事監理は大変重い社会的責任の元にあり、公共的性格の強いものであると言える。

1951年から1967年までは5科目(建築計画・建築法規・建築構造・建築施工・建築設計製図)で試験を実施、1968年からは学科試験(建築計画・建築法規・建築構造・建築施工)を合格した者が、設計製図試験を受験できる2段階方式に移行した。2005年の耐震強度偽装事件の結果、2006年に建築士法が改正(2008年施行)され、定期講習の義務化、受験資格要件の見直しなどが実施された。これにより、従来の学科認定が指定科目制(4年ごとに再確認)となった。実務経験要件も設計・工事監理等に資するものに限定された。また、構造設計一級建築士、設備設計一級建築士が設けられ、建築確認審査が厳格化された。
種類及び内容

建築士には、一級建築士、二級建築士、木造建築士の3種類があり、その資格により設計・工事監理できる建築物に違いがある。また、いずれかの建築士免許を前提とした資格として管理建築士の免許があり、一級建築士免許を前提とした資格として構造設計一級建築士と設備設計一級建築士の免許がある。
一級建築士

一級建築士は、国土交通大臣の免許を受け、一級建築士の名称を用いて、設計・工事監理等の業務を行うものである(建築士法第二条第2項)。

各号に掲げる建築物を新築する場合においては、一級建築士 でなければ、その設計又は工事監理をしてはならない。 (建築士法第3条)。
学校・病院・劇場映画館・公会堂・集会場・百貨店の用途に供する建築物で、延べ面積が500 m2を超えるもの

木造建築物または建築の部分で、高さが13 mまたは軒の高さが9 mを超えるもの

鉄筋コンクリート造鉄骨造、石造、れん瓦造コンクリートブロック造もしくは無筋コンクリート造の建築物または建築の部分で、延べ面積が300 m2、高さが13 m、または軒の高さが9 mを超えるもの


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