一つの中国
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これは、「一つの中国」という立場を共有した上での対話を求めてきた中華人民共和国政府に譲歩しつつ、中華民国の地位を認めさせようとする戦略(「強本西進」政策)からであった。アメリカも両者の仲介を行うことを材料に、陳水扁政権に独立路線の放棄を求めていた。これが「四不一没有(四つのノー、一つのない)」の背景である。しかし、中華人民共和国政府はこうした動きを無視し、中華民国を承認する国に承認転換を迫り続けた。そのため、陳水扁政権は「一つの中国」政策に見切りをつけ、また選挙キャンペーンでの材料として独立路線の活用を再開した。また、「一個中國,各自表述(一つの中国の解釈は各自が表明する)」という「九二共識(1992年コンセンサス)」について、中国国民党および当時の中華民国政府による拡大解釈であり、中華人民共和国が同意したことを表明していないことにも懸念を示し始めた。そして、陳水扁政権は「コンセンサスがない、というコンセンサス」だったとの見解を示している。そして、「一つの中国」という言葉が、国際的には「中国とは中華人民共和国であり、台湾はその一部」というイメージが定着していることを懸念し、その使用を控えるようになった。

2000年の就任演説で「四つのノー、一つのない」を表明。独立路線の棚上げを表明。

2002年ナウルの承認転換に際し、陳総統が「一辺一国」を表明。独立路線への復帰とみなされる。

2006年には国家統一委員会と国家統一綱領の「終止」を決定する。

馬英九時代
2008年に総統に就任した馬英九は、九二共識を前提としつつ「統一せず、独立せず、武力を行使せず」という「三つのノー」(三不)政策を打ち出している。一方で中華人民共和国との間で「三通」(通信、通商、通航)を解禁して中台FTAを結ぶなど、中華人民共和国との融和姿勢を取った。
蔡英文時代
2016年に総統に就任した蔡英文は、九二共識の受け入れを否定しており[4] 、国家存続の為にアメリカとの関係を強化する方針を強めている[5]。 
国際社会の反応

2023年現在、ブータンのみが台湾・中国の両方と国交を持たない[6]
日本
日中共同声明を踏襲し「中華人民共和国を中国の唯一の合法的政府」と承認 (recognize) し、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」と表明する「中華人民共和国政府の立場を十分理解し尊重する (understand and respect )」 として、現状では中華人民共和国の主張を支持していないが、中華民国の主張も支持しないという立場を取っている。中華民国とは民間レベルで親密な関係を保っており、事実上の大使館機能(台北経済文化代表処)も存在するほか、2012年から住民基本台帳における在留カードでは中華民国国籍保有者の国籍・地域欄は「中国」から「台湾」となり[7] 、中華人民共和国国籍保有者と明確に区別している。2013年3月13日安倍晋三首相は、Facebook東日本大震災における台湾の支援に言及して、「大切な日本の友人」と表現し[8]2015年7月29日参議院で行われた平和安全法制に関する特別委員会においても、「台湾は、基本的な価値観を共有する重要なパートナーであり、大切な友人であります」と答弁している[9]
アメリカ合衆国
上海コミュニケに基づき「中華人民共和国を中国の唯一の合法的政府」と承認 (recognize) し、「台湾海峡の両側のすべての中国人が中国は一つに過ぎず、台湾は中国の一部であると主張していること」を認知する (acknowledge) として、双方に理解を示す立場を取っているが、中華民国とは民間レベルで親密な関係を保つほか、米華相互防衛条約の後継法である「台湾関係法」を結んでおり、2018年には双方政府高官の訪問を促進する「台湾旅行法」を成立させた[10]など緊密な関係にある。2020年ドナルド・トランプ政権の国務長官だったマイク・ポンペオは、「台湾は中国の一部でない」と述べた[11]が、2022年ジョー・バイデン政権国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリバンは、「台湾が中国の一部かどうか」には明言せず、「一つの中国」政策に変わりはない事を改めて強調した[12]
大韓民国
中韓共同声明を踏襲し「中華人民共和国を中国の唯一の合法的政府」と承認 (recognize) し、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」と表明する「中華人民共和国政府の立場を十分理解し尊重する (fully understanding and respect)」 として、現状では中華民国の主張を支持しないという立場を取っているが、民間レベルでの関係を保っている。
脚注[脚注の使い方]^ “教科書に現れた「二つの中国」に関する質問主意書”. www.shugiin.go.jp. 衆議院 (昭和四十九年七月三十日). 2022年1月1日閲覧。
^ “ ⇒《一個中國的原則與台灣問題》白皮書” (中国語). 国?院. 中華人民共和國國務院台灣事務?公室 (2000年2月21日). 2021年10月10日閲覧。
^ 李登輝 (2013年5月). “台湾が感動した安倍総理の友人発言”. Voice (PHP研究所): p. 42. https://books.google.co.jp/books?id=Lrxf36yn1VwC&pg=PT42#v=onepage&q&f=false 


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