ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
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彼がおもに使用していたピアノの鍵盤が沈む深さは現代のピアノの約半分であり、軽快に演奏できるものであったことがその作風にも影響を与えた[16]

晩年に向かうにつれて、長調の作品であっても深い哀しみを帯びた作品が増え、しばしば「天国的」と形容される。また、短調作品は少ないながら悲壮かつ哀愁あふれる曲調で、交響曲第40番ト短調のように人気が高い。

モーツァルトの時代にはポリフォニー音楽が流行遅れになり、ホモフォニー音楽が支配的になっていた。しかし彼はJ.S.バッハやヘンデルの作品を研究し、交響曲第41番の終楽章のように対位法を活用する手腕があった。

「下書きをしない天才」とも言われ、モーツァルトが並外れた記憶力を持っていたのは多くの記録からも確かめられているが、自筆譜の中には完成・未完成曲含めて草稿および修正の跡が多く発見されている。人気の高いピアノ協奏曲23番については、その数年前に書かれた草稿が発見されている。ただし作曲するのが早かったのは事実であり、たとえば交響曲第36番リンツ滞在中に作曲されたが、父との手紙のやり取りから3日で書き上げたことが分かっている。交響曲第39番から41番「ジュピター」までの3つの交響曲は6週間で完成させている。また別の手紙からは、彼が頭の中で交響曲の第1楽章を作曲したあと、それを譜面に書き起こしながら同時に第2楽章を頭の中で作曲し、今度は第2楽章を書き起こしている間に第3楽章を頭の中で作曲したという手順を踏んでいたということが分かっている。

モーツァルトの作品の多くは、生計を立てるために注文を受けて書かれたものである[注釈 17]。モーツァルトの時代に限らず、何世紀もの間、芸術家は教皇や権力者などのパトロンに仕えることで生計を立てていた[17]。18世紀になってからはパトロンから市場に移ることが徐々に可能になっていく。幼いころから各地を巡業した理由のひとつが就職活動であり、ベートーヴェンのようにフリーランスとして生きていくことは非常に困難な時代であった[注釈 18]。したがって、モーツァルトの作品はその時代に要求された内容であり、たとえば長調の曲が多いのはそれだけ当時はその注文が多かったことの証でもある。実際、父の死後は依頼者のない作品が生まれている。これは、聴衆の嗜好に配慮せよとの父による規制がなくなったため、モーツァルト自身の目指す音楽に向かうことが可能になったからである。交響曲などがそれにあたる。

思想的には、フリーメイソンがパトロンであったこともあり、作品では特に魔笛、ピアノ協奏曲第20番にその影響が指摘されている[注釈 19]
楽器

モーツァルトの時代、現在でいう「ピアノ曲」、ピアノ・ソナタピアノ協奏曲などはドイツ語圏では通常「クラヴィーア」と書かれていた。クラヴィーアとは鍵盤楽器のことであるが、有弦鍵盤楽器を指し、フォルテピアノチェンバロ(ハープシコード、クラヴサン)、クラヴィコードのいずれかで演奏される選択の自由があったが、協奏曲などは編成からフォルテピアノかチェンバロで演奏された。今日ではチェンバロで演奏される機会も増えている。

モーツァルトの初期の数作品はチェンバロのために書かれており、彼はレーゲンスブルクの製作者フランツ・ヤコブ・シュペートが作ったピアノに馴染んでいた[18]。 後にモーツァルトはアウクスブルクを訪れてシュタインピアノに感銘を受け、そのことを父親への手紙に書いている[18]。1777年10月22日にモーツァルトは、シュタインが提供した楽器で3台のピアノのための協奏曲(K.242)を初演した[19]。アウクスブルク大聖堂のオルガン奏者デンムラーが第1パートを演奏し、モーツァルトが第2パート、そしてシュタインが第3パートを演奏した[20]。1783年のウィーン在住時に、彼はワルターの楽器を購入した[21]。モーツァルトが自分のワルターのフォルテピアノに愛着していた様子は、レオポルト・モーツァルトの「この喧騒を説明するのは不可能だ。おまえの弟のピアノは、彼の家から劇場または他の誰かの家へと少なくとも12回移動されたのだ。」という記述からわかる[22]

モーツァルトが自身の作品でフォルテピアノのためと明記したのは、1785年に出版した作品が初めてであった。チェンバロはバロック音楽に限定されると思われることが多いが、ウィーンでは19世紀初頭までチェンバロが製作されており、ベートーベンの作品の中にもマンドリンとチェンバロのためのソナチネと言う作品が2つあるほどである。
人物像モーツァルト(1789年の肖像画)1777年のモーツァルトGiovanni Battista Martiniの依頼による[23]
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