ヴィルフレド・パレート
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フィリッポ・トゥラーティの主宰する雑誌に寄稿する[2]など社会主義者とも交流しており、ムッソリーニは社会主義者時代にパレートの講義を聴講したことがあった。


晩年において、病に冒されながらも精力的に社会学の体系化を試みるが、その途上、1923年に75歳でその生涯を閉じた。

経済学上の功績

パレートは、ワルラスの均衡理論を発展させ、「
パレート効率性(パレート最適)」という資源の生産および消費における最適かつ極限の状態を概念として提起したことで知られている。これは、一定量の資源を複数の人間が利用する場合において、個人の効用(満足度)が他者の効用を損なうことなく、極限まで高められた状態(配分について交渉を行う余地の無い状態)のことを意味している。つまり、「パレート効率性」とは、資源の有効活用の原理ということができる。


さらに彼は、数理経済学の実証的な手法(統計分析)を用いて、経済社会における富の偏在(所得分布の不均衡)を明らかにした。これはパレートの法則とよばれている。この法則は、2割の高額所得者のもとに社会全体の8割の富が集中し、残りの2割の富が8割の低所得者に配分されるというものである。


パレートは、このような概念によって、社会全体の福利の適正配分と効用の最大化を目指す経済政策を理論的に基礎づけ、厚生経済学におけるパイオニア的存在となった。

社会学上の功績

パレートは、それまでの経済学における研究業績を応用し、
実証主義的方法論に基づいて社会の分析を行っていった。もともと自然科学を出発点として経済学・社会学の分野へと進んだパレートは、実験と観察によって全体社会のしくみ、および変化の法則を解明しようとした。


特に、経済学における一般均衡の概念を社会学に応用し、全体社会は性質の異なるエリート集団が交互に支配者として入れ替わる循環構造を持っているとする「エリートの周流」という概念を提起したことで知られている。そしてパレートは、2種類のエリートが統治者・支配者として交代し続けるという循環史観(歴史は同じような事象を繰り返すという考え方)に基づいて、19世紀から20世紀初頭のヨーロッパで影響力を持っていた社会進化論マルクス主義史的唯物論唯物史観)を批判した。


さらに、人間の行為を論理的行為(理性的行為)と非論理的行為(非理性的行為)に分類し、経済学における分析対象を人間の論理的行為に置いたのに対し、社会学の主要な分析対象は非論理的行為にあると考えた。つまり現実の人間は、感情・欲求などの心理的誘因にしたがって行動する非論理的傾向が強く、しかも人間の非論理性が社会の構造を規定しているとみなしたのである。このような行為論は、その後アメリカの社会学者タルコット・パーソンズ社会システム論に影響を与えることになった。


パレートは、初期の総合社会学にはない新しい視点に立ち、独自の社会学理論を構築したところから、マックス・ヴェーバーエミール・デュルケームと並ぶ重要な社会学者の1人として位置づけられている。

主な著作

経済学講義(Cour d'Economie Politique, Laussanne. 1896)

一般社会学大綱(Trattato di sociologia generale. 1917-19)


ヴィルフレド・パレート(北川隆吉、板倉達文、広田明訳)『社会学大綱』(現代社会学体系・青木書店)
ISBN 4250870448

脚注^ “人生の8割は忘れていいこと/85歳の壁突破への極意”. 日刊スポーツ (2023年6月23日). 2023年6月23日閲覧。
^ 佐藤茂行『パレート社会主義論の形成』經濟學研究、1991年

参考文献

作田啓一、井上俊編『命題コレクション 社会学』(筑摩書房)
ISBN 4480852921

田原音和・田野崎昭夫・阿閉吉男他著(新明正道監修)『現代社会学のエッセンス 社会学理論の歴史と展開(改訂版)』(ぺりかんエッセンスシリーズ・ぺりかん社)ISBN 4831507210

佐藤茂行『イデオロギーと神話 : パレートの社会科学論』(木鐸社、1993年)

関連項目

パレート図

パレート効率性(パレート最適)

パレートの法則

パレート分布

パレート分析

パレート改善










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