ワールドトレードセンター_(ニューヨーク)
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トービンは、このプロジェクトで建設されるものは単なる「世界的な貿易センター (world trade center)」ではなく、「ザ・ワールドトレードセンター (the World Trade Center)」という唯一無二の存在であるべきだと述べた[10]。1962年1月までに、トービンはニューヨーク州ニュージャージー州の両州政府から計画への支持を取りつけることに成功し、一帯を再開発して巨大なオフィスビルを複数作り、貿易関係の企業や公的機関を集積させるという「ワールドトレードセンター・コンプレックス」の建設が正式に認可された[注 4]

1961年に公開された当初の案では、ワールドトレードセンターはイースト川沿いの敷地に建設されることとなっていたが[11]、最終的にハドソン&マンハッタン鉄道のターミナルがあり、ニュージャージー州との交通が便利なハドソン川沿いのラジオ・ロウ地区が建設用地として選ばれた[12][13]。ラジオ・ロウに存在する事業者への移転費用の補償として、港湾公社は各事業の存続期間や売り上げの程度にかかわらず、すべての事業者に一律に3,000ドルを支払った[14]。1965年3月、敷地がWTCの建設用地として買収され[15]、翌1966年3月からラジオ・ロウの解体工事が開始された[16]。1966年8月、起工式が執り行われ、WTCの建設工事が始まった[17]
ツインタワーの設計と建設詳細は「ワールドトレードセンターの建設」を参照
デザインツインタワーの典型的なオフィスフロアの平面図と、エレベーター運行概念図。チューブ構造が採用されており、外壁と中央のコア(水色の領域)の間のフロア(黄色の領域)には柱などの障害物が存在しないことがわかる。コアには99基のエレベーターと3本の非常階段が集中的に配置されていた[18]

1962年9月20日、港湾公社はワールドトレードセンターの主任建築士として日系アメリカ人ミノル・ヤマサキを選出したことを発表した[19]。WTCの中心施設をツインタワーとするのはヤマサキのアイディアであり、彼のオリジナル案では2つのタワーはそれぞれ80階建のビルとなっていた[20][注 5]。しかし、80階建のタワーでは港湾公社が設定した10,000,000平方フィート(930,000m2)以上のオフィススペース確保という条件をクリアできなかったため、最終的にツインタワーはそれぞれ110階建のビルとして建設されることになった[21]

1964年1月18日、ヤマサキによる建設計画案が一般公開され、ツインタワーが一辺208フィート(63.4m)の正方形底面をもつ直方体となることが明らかになった[20][22]。オフィスフロアの外窓はひとつにつき幅18インチ(46cm)と細長いものになっていたが、これはヤマサキ自身の高所恐怖症の反映であり、フロアにいる人間が高度による恐怖を感じることがないよう配慮した結果だった[23]。ヤマサキによる設計はさらに、ツインタワーの外壁をアルミニウム合金で被覆することを求めていた[24]。WTCのデザインはヤマサキによるゴシック・モダニズム建築の独創的な表現であったほか、ル・コルビュジエの建築哲学が顕著に反映されていた[25]。さらにヤマサキは、ツインタワーのデザインにイスラーム建築の特徴を取り入れていた[26][27]

各タワーの44階と78階にはエレベーターの乗り換え階「スカイロビー(英語版)」が設けられ、急行エレベーターをスカイロビーに直行させ、ここからさらに各階行の普通エレベーターに乗り換えさせるという方式になっていた。このシステムにより、効率的なエレベーターの運行が実現されるのと同時に、エレベーターシャフト数の削減により、フロアの使用可能面積が62%から75%に引き上げられた[3]。WTCのツインタワーはシカゴジョン・ハンコック・センターに続き、スカイロビーを採用した2例目の超高層ビルだった[28][注 6]。ツインタワーにはそれぞれ99基のエレベーターが設けられ、両タワーの合計では198基のエレベーターが存在した[3][2][注 7]
構造設計ツインタワーの外壁支柱。ヤマサキのデザインに従い、アルミニウム板で鋼鉄の支柱が被覆されている[3]。この部分にはイスラム建築およびゴシック建築から尖頭アーチの要素が取り入れられている[27]

ヤマサキによるデザインを実現しつつ十分な強度を得るため、構造エンジニア班はファズラー・ラーマン・カーンが開発したチューブ構造(英語版)を採用した[30][31]。ツインタワーのチューブ構造は「フレームド・チューブ (framed-tube)」と呼ばれる設計であり、チューブ状に並べた外壁支柱とビル中心のコア支柱との間に床の梁を渡すことにより、柱や耐力壁のない広大なスペースを得ることができた[30]。ツインタワーの外壁は、各面59本、合計236本の鉄骨支柱をチューブ状に密に配置したもので、外壁の一辺の長さは約63mだった[3][30]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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