ワークステーション
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2000年代以降では、各社のラインナップにおいてワークステーションと銘打たれている製品は、高効率化電源ユニット(80 PLUS)の採用や冷却機構、エアフロー設計の強化、ECCメモリの採用、マルチCPUソケットの搭載、ホットスワップ可能なストレージなど、負荷の高い業務用アプリケーションの長時間稼働(1週間連続で処理させるなど)を実現する設計により、PCとの差別化を行っているが、こう言った仕様はハイエンドPCにも散見される。一般向けのPCと異なりメーカーがマザーボードレベルから最適化して法人向けに長時間稼働を保証はしているが、技術的基礎がPCと同一になったため、「ワークステーション」という用語は売り文句に過ぎなくなったとも言える。
概要

ワークステーションは、単体で使用される他、メインフレームなどを含めたサーバネットワークで接続されたインテリジェント端末として使用されることもある。

JIS X 0001 (ISO/IEC 2382-1) では、「通常、専用の計算能力をもち、利用者向きの入出力装置をもつ機能単位(ハードウェアソフトウェアからなる指定した目的を遂行できるもの)」と定義しており、これに従うとPCも含まれる。ただし一般にはワークステーションとは、一般的なPCよりは高性能・高機能なものを指す場合が多い。

1990年代前半までは、PCと比較して、マルチウィンドウアイコンなどによるGUI、ネットワーク機能の標準装備、マルチタスクSVGAを超える高解像度のディスプレイなどがワークステーションの特徴であった。その後、これらの特徴はPCの高性能化と普及によって、ワークステーションのみの特徴ではなくなった。

少なくとも1990年代までは、SPARCMIPSDEC Alphaなど、民生品よりも遥かに高度な機構を持つCPUを搭載したマシンがワークステーションとして一般的であったが、後にx86CPUを搭載するマシンが市場規模で圧倒的優位に立ち、各社がx86CPUの性能向上に注力してコストパフォーマンスを大幅に向上させた結果、それ以外のアーキテクチャCPUを搭載するマシンが市場から駆逐された。2021年ではIntel XeonAMD Ryzen PROを搭載するワークステーションが主流であるが、最新ではムーアの法則の限界を遅らせるために、根本的に設計を見直して低消費電力で有名なARMアーキテクチャを採用したApple M1を搭載するワークステーションが現れた。

特に科学技術計算、CAD、プロダクトデザイン、グラフィックデザインなどに使用されるものはエンジニアリングワークステーション(以下EWS、後述)と呼ばれ、これらの作業を円滑に行うため、専用ソフトウェア、専用のハードウェアを持っていたことが多い。

また、事務処理や、組版などの編集作業に使われるものはオフィスワークステーションなどと呼ばれる。

ワークステーションの中にはユーザー専用に開発されたマザーボードPCIボード、周辺機器などを組み替えることで様々な制御機器のセンターマシン、監視装置などとして使用されることもある。これらの多くはリモートセンシングなど特殊な分野で利用されている。

POSシステムなどに代表される流通システムでは、全国規模に及ぶネットワーク化されたシステムを、メインフレームとサーバ専用機などの中規模なコンピュータ、ワークステーションなどを組みあわせて使用することが多く、数十台から1万台単位の規模でソリューション(情報システム)として販売される。このような場合、EWSなどと違いシステム構築の容易さと通信処理能力や、業務用レジおよびバーコードリーダーなどの専用ハードウェアへの対応が必要とされ、ワークステーションは端末としての機能も果たす。一度の大量発注による製造・販売・輸送コストの削減などが行われる。

なお、かつては、LAN内でサーバに対してユーザの手元にあるコンピュータのこともワークステーションと呼ばれていた(例:Windows NT ServerとWindows NT Workstation)。これは、コンピュータ自体の機能や性能による区分ではなく、もっぱらネットワーク内での役割による区分であり、ハードウェアとしてはPCそのものである場合も多かった。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}近年[いつ?]ではクライアントと呼ぶことが多い。

コンピュータを製造・販売するメーカーがそれぞれの販売戦略により、ワークステーションやパーソナルコンピュータ、サーバなどの名称を使い分けていることも、これら各カテゴリの境界を曖昧なものとする要因となっている。

2010年代以降、法人でも高性能計算にはハイエンドPCやクラウドを採用することが多くなり、ワークステーション自体がニッチな製品となっている。
端末型ワークステーション

主に複数の人員により作業を行うデータ入力端末が最も多く使用されている。特に、PCのような単独で動作する機能は必要なく、必ずセンターマシンが介在する。近年[いつ?]は、PCに置き換えられつつある。
歴史

端末型のワークステーションは1980年代前半に始まる。メインフレームを中心に複数の端末機器を接続したものでディスプレイを内蔵した端末機をワークステーションと呼んだ。これらの多くは後に、大規模なグラフィック専用のメモリを搭載することにより、高度な漢字処理能力を有し、組版などのグラフィカルな処理を行える機能を有していた。これらの一部は後にワードプロセッサとして分化していった。またこれに伴い、レーザープリンターが接続されるなど高度な組版処理が行えるように進化していった。これらは現在でも端末型のワークステーションとして、ホテル、POSシステム、金融機関などで使用されているが、徐々にPCに置き換えられつつある。
エンジニアリングワークステーションEWS全盛期を代表するモデルのひとつ、SunSPARCstation

2004年では、EWSの上位機種においては64ビットマルチプロセッサや、64ビットPCIインタフェースに対応したグラフィック系の処理能力を持つハードウェアを有することが多かった。2007年1月現在ではマルチコアCPUやPCI Expressの普及が始まっている。インテル系のPCではワークステーションに導入されたハードウェアが少し遅れてPCでも使われ、ワークステーションとPCのハードウェアにおける性能的な境界は曖昧になっている。このため、メーカーがインテル系のワークステーションをPCの上位機種として位置づけることもある。

EWSでは、グラフィックスボードSCSIボードにおいて専用ハードウェアを搭載している場合が多い。また、OS自体に各メーカーがカスタマイズを行っていることも多い。それらのワークステーションは専用開発のハードウェアであるため、費用対効果に劣り、パーソナルコンピュータに比べて非常に高価なものとなっている。そのため、近年[いつ?]は徐々に高性能なGPUを備えるPCに置き換えられつつある。
歴史

1980年代、UNIXをベースとしたクライアントサーバモデルクライアントとして、UNIX OSを搭載した「UNIXワークステーション」が登場した。これらは、光学ペンやタブレットなどの入力やプロッタなどの多数のインタフェースを有し、大規模なメモリを搭載し、設計、学術計算などに使用された。

1990年代後半、一部のCADなどの高度なグラフィック処理を必要とするものはUNIXワークステーションが主流で、PCとは異なり各社独自のアーキテクチャを使用した専用ハードウェアを使用するものが多く、性能面でもPCを凌駕していた。しかし、PCの爆発的普及に伴う大量生産効果などがあり、インテル製プロセッサの性能が急激に向上したため、従来ワークステーションで行われていた業務のうち、専用のハードウェアを必要としないものがパーソナルコンピュータで行われるようになった。インテル製プロセッサのマルチプロセッサ化が遅れたことや、64ビットPCIバスなど大規模データの取り扱いを必要とするワークステーションのニーズが高まり、専用の周辺機器などが開発された。

Windows NTの性能向上とともに、同OSを採用するWindowsワークステーションが登場した。PCの性能の向上と共に差は少なくなると思われたが、Windowsの64ビットCPU対応など高性能処理が行えるOSの開発やマルチCPU化などにより大幅に性能が向上し、3Dモデルや画像解析などの新たに多くのニーズが登場し専用のアプリケーションが開発されている。

これらの多くはワークステーションの性能に合わせカスタマイズされることが多く、ワークステーション専用のグラフィックアクセラレータなどのハードウェアやドライバ類が専用化されているため、一般のパーソナルコンピュータとは一線を画している。また多くのワークステーションでは64ビットのPCIバスを持っている。プロセッサは64ビットが主流だが、32ビット製品も採用されている。


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