ワラビ
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シベリアクラスノヤルスク地方では、日本と中国への輸出のために生と加工された形で収集が行われている[29]

ワラビのおひたしについては家庭によって様々な変わり醤油をつけて食べる習慣があり、三杯酢ワサビ醤油、からし醤油、酢醤油、ポン酢などのさまざまな味で食されている[14]。和え物は、白和え、クルミ和え、からし和え、マヨネーズ和えなど、他の味とあえて食べられている[16]。また、水を切ってから細かく刻んでたたくと(ムチネーゼ由来の)ぬめりが出て、とろろのように利用することもできる[30][10]

生の物を5センチ程度に切ってかき揚げにするか、1本のままで天ぷらにしても良い。生のまま揚げたものは灰汁抜きしたものより苦味が強いが、ほろ苦い独特の風味があり美味である。後述の中毒のこともあり、一度に食べすぎないように注意する必要がある[10]

塩漬けした物を食べる時は取り出したワラビをよく洗い、一晩塩抜きしてから煮付けや卵とじなどの調理にする。そのまま生では食べない。

根茎を乾燥して砕き、水にさらして採れた上質なデンプンは「ワラビ粉」といって、これからわらび糊やわらび餅をつくる[30][15]。ただし、市販されているわらび餅の大半は、ワラビ粉ではなく小麦粉などから作られている[16][15]。昔は根茎から採れるワラビ粉が、飢饉のおりに飢えをしのいでいたと記録されている[19]

芽ばえ

葉が開くまえ・通常この程度を食用とする

葉が開きはじめる

きな粉のかかったわらび餅

灰汁抜きワラビの灰汁抜き(ここに湯を注ぎ一昼夜置く)

ワラビは灰汁が強いため、必ず重曹木灰などを使って下処理をしてから用いられている[28]。処理の前にかたい根元の部分を取り除いて[28]、ワラビの重さの10%強の木灰や、さじ1杯分の重曹を上からまぶして半日ほどおいたのち、沸騰した熱湯をその上から注ぎ、新聞紙や大き目のポリ袋で落し蓋や重石をして一晩置く[9][10][28]。あるいは、沸騰した湯にワラビと重曹を入れて、火から下ろして一晩置く[14]。翌日、きれいな水でよく洗い、水にさらしてアクを流してから調理する[31][10][28]

地方によっては、濃い塩湯(熱湯に多めの塩を溶かしたもの)をワラビを敷き詰めたタライに流しこんで、灰汁を抜くという方法もある。また、温泉地では単純アルカリ泉(飲泉が可能なもの)で灰汁を抜く方法もある。こうした場所ではフキなど他の山菜も、山から採って来た長いままで切らずに茹でる光景も珍しくない。
保存

灰汁抜き後のワラビを保存したいときは、水に浸けて、水を替えながら冷蔵すれば1週間ほど日持ちする[28]。確実に日持ちさせたい場合はチャック付き保存用バッグに練りワサビを溶かした水(充分に濁るくらい。中のバッグにチューブのワサビを絞って3 - 5センチ程度必要)と共に処理したワラビを入れて空気を抜き、冷蔵庫に保管するとワサビの殺菌作用で1週間ほどは持つ。食べやすい大きさに小口切りしておくと、袋から取り出して洗ってそのまま食べられる。

たくさん採れたときは、塩漬けや天日干しにして保存する[16][10]。塩漬けにする場合は、多めの塩を振りかけながら束ねた生のワラビを漬物樽に敷き詰めてビニールを被せ、蓋と重石をして空気が入らないように密封する。
中毒

などの家畜はワラビを摂取すると中毒症状を示し、また人間でもアク抜きをせずに食べると中毒を起こす(ワラビ中毒)。ワラビにはビタミンB1を破壊する酵素[30]、灰汁には発癌性のあるプタキロサイド (ptaquiloside)[32]が約0.05-0.06%含まれる[33]。灰汁抜きすることでそれらの物質は減少するが、甚だしい多食は避けた方が良いという意見や[30][10]、発がん物質の影響が懸念されるには毎日大量に食べ続けることを仮定したものという指摘もある[16]。また、ワラビに含まれる発がん性物質は熱を加えると完全に分解することが確かめられているともいわれ、茹でて灰汁に浸けるという日本古来の調理法は、無毒化する方法でもあったという説もある[15]

1940年代に牛の慢性血尿症がワラビの多い牧場で発生することが報告され、1960年代に牛にワラビを与えると急性ワラビ中毒症として白血球血小板の減少や出血などの骨髄障害、再生不能性貧血、あるいは血尿症が発生し、その牛の膀胱腫瘍が発見された[34][35]。これが現在のワラビによる発癌研究の契機となった。主にプタキロサイドはアクの部位に多いが、アク抜きしても発ガン性は残存する。ラットの発ガン率は、処理なし78.5%に対し、灰処理25%、重曹処理10%、塩蔵処理4.7%と低下はするものの残存した[36]
文化

奈良時代末期に成立したといわれる日本現存最古の和歌集『万葉集』でよく知られた歌に、「石走る 垂水の上の さわらびの 萌え出づる春に なりにけるかも」(『万葉集』巻八 1418 志貴皇子)という、ワラビの芽生えと思しき「春の雑歌 志貴皇子の懽(よろこび)の御歌(みうた)一首」がある[15]。しかし、ワラビは雪解け水がしたたるような場所には生えないことから、この歌の「さわらび」はワラビではなくシダ類一般を指した言葉ではないかという指摘もなされている[15]

「.mw-parser-output ruby.large{font-size:250%}.mw-parser-output ruby.large>rt,.mw-parser-output ruby.large>rtc{font-size:.3em}.mw-parser-output ruby>rt,.mw-parser-output ruby>rtc{font-feature-settings:"ruby"1}.mw-parser-output ruby.yomigana>rt{font-feature-settings:"ruby"0}早蕨(さわらび)の 握り拳(こぶし)を 振り上げて 山の横面(よこつら) はる風ぞ吹く」は、江戸時代の狂歌師四方赤良の作で、春風にそよぐワラビの若芽の様子を、握りこぶしで山の斜面をひっぱたいていると例えた風情ある歌である[15]

ワラビは日本全国の各地に仏教にまつわる伝説も多く、古くからワラビと庶民との結びつきは深かったとみられる[19]
脚注^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “ ⇒Pteridium aquilinum (L.) Kuhn subsp. japonicum (Nakai) A. et D.Love ワラビ(標準)”. ⇒BG Plants 和名?学名インデックス(YList). 2023年3月19日閲覧。
^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “ ⇒Pteridium aquilinum (L.) Kuhn ワラビ(広義)”. ⇒BG Plants 和名?学名インデックス(YList). 2022年4月17日閲覧。


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