ワニ
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その後の派生的なワニはその生態的地位を継承し、支配的な地位を保ち続けている[2]。とはいえ新鰐類は現生ワニと比較して、椎骨の関節の安定性や背中の鱗板骨により阻害される可動性が低く、また内鼻孔も完全には後退していなかった。前期白亜紀に出現した正鰐類は新鰐類の中でも派生的なグループである。正鰐類は安定性・可動性が向上し、また内鼻孔も翼状骨の中まで後退するなど、水棲適応を進行させていた[3]

後期白亜紀には、その正鰐類の1グループとしてワニ目が出現した[4]。ワニ目の起源については、ローラシア大陸起源説とゴンドワナ大陸起源説がある。ハイラエオチャンプサアロダポスクスなど基盤的正鰐類が現在の北米・ヨーロッパから発見されているためローラシア大陸起源説が一般的であったが、ハイラエオチャンプサよりも基盤的な正鰐類の可能性のあるイシスフォルディアオーストラリアから発見されており、2013年時点で結論は出ていない[3]
K-Pg境界を越えて

後期白亜紀のうちにワニ目はインドガビアル上科アリゲーター上科クロコダイル上科に分かれた。これらの三上科に属さない化石分類群ではボレアロスクスやプリスティカンプスス亜科も知られているが、現生のワニは全て三上科のいずれかに属する[3]

ワニは唯一現存する偽鰐類ワニ形上目のグループであるが、白亜紀末の大量絶滅を乗り越えたワニ形上目はワニ目だけではない。具体的には、セベクスに代表される陸棲のセベコスクス類(英語版)(中正鰐類)と、ディロサウルス(英語版)に代表される海棲のディロサウルス科(英語版)(新鰐類)の化石が、それぞれ古第三紀始新世地層から産出している。ワニ目が絶滅を免れた理由として淡水域に生息していたことを挙げる研究者もいるが、それではこうした陸棲・海棲のワニ形上目が生き延びた理由が説明できない。なぜ彼らが生き延び、そしてなぜ恐竜首長竜モササウルス科が白亜紀末に絶滅したかについては、いまだ明確な答えが出ていない[3]

確かなのは、恐竜の絶滅後、その空いた生態的地位を埋めるように多様な進化を遂げたあと、水辺へまた押しやられたということである[5]
形態

長いと扁平な長い尾を持つ。背面は角質化した丈夫なで覆われており、鼻孔のみが水面上に露出するような配置になっている。コビトカイマンニシアフリカコビトワニなどの小型種では、1.5メートルほどで成熟する。大型種では体重1トンに達する個体も存在するなど、現生爬虫類としては最重の一群を含む。

歯槽(英語版)を持つ唯一の爬虫類である[6]。同じ歯の形しか持たない同歯性で、最大50回生え変わる多生歯性を持つ[7]
食性・天敵・生態

現生種は、主に魚類甲殻類貝類といった水棲生物や、水場に現れた爬虫類・哺乳類などを捕食する(上述のように絶滅種まで含めると、非常に多様性に富んだ分類群で、この食性に当てはまらない種も相当数ある)。

非常に高い咬合力(いわゆる“噛む力”)をもち、大腿骨すら、いとも簡単に噛み砕いてしまう力がある。以下に咬合力の比較を示す。

アメリカワニ - 最大で2,125 lbf (9.45 kN)[8]

イリエワニ ‐3,700psi[9]。3,689 lbf (16.41 kN)[8]

ナイルワニ ‐5,000psiで、BBC Science Focusでは現存する生物で一番噛む力が強いとしている[9]

絶滅したデイノスクスは23,000 lbf (100 kN)と推定された[10]

この強靭な顎で獲物を咥え、体ごと回転させるデスロールといわれる仕留め方がある。噛み千切った後は、咀嚼せずに丸のみにする。の中には食物をすり潰して消化の助けとする胃石がある[11]。この胃石は、「石を食べる」習性によって体に取り込まれ砂嚢の中に蓄えられる。この石は水中で浮力を調整する機能ももつ[12]

ちなみに、絶滅した種の中には、雑食であったり、完全に草食だったワニもいる[13]

消化できない骨などは、口からペリットとして吐き出される[14][15]

また代謝率が低いため、長期間餌が無くても脂肪を代謝しながら長期間生きられる[16]

大型のナイルワニイリエワニ頂点捕食者であり、成体となれば殆ど天敵はいないが、小型のオーストラリアワニメガネカイマンは他の大型肉食動物(ジャガーニシキヘビ)に襲われることがある[17]

陸上で日光浴をしているときは、体温調節のために口を大きく開けていることが多い。ヒトが捕まえる場合、後ろ側から近づき背中の上に跨いで口にロープを掛ければ、閉じる力は大きいが開く力はそれほどでもないので無力化することが出来る。
臓器ワニの心臓の概略図.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}}X線撮影検査によるアメリカアリゲーターの呼吸の様子。
循環器
心臓は複雑な形状となっており、潜水時には肺動脈・肺静脈への弁が閉じられ全身への血管が開けられ、空気が吸える状態では肺動脈・肺静脈への弁が開けられ全身への血管が開けられる。また、右心室と左心室から出る動脈はパニッツァ孔
(英語版)と呼ばれるバイパスでつながれている[18]。筋肉は空気を貯めておくミオグロビンがほとんどないため、体内の酸素はすべてヘモグロビンで賄うことになる。ワニのヘモグロビンは、水素イオンとともに炭酸水素イオンが結合する部分も持ち合わせており、動脈血二酸化炭素(PaCO2)が増えて炭酸水素イオンが増加すると、ヘモグロビンの酸素親和性が大幅に低下し、ヘモグロビンから多くの酸素が乖離してワニの全身へ供給できるようになっている[19][20]。また、水中では心拍数が低下する(潜水反射(英語版))。
呼吸器
水中では、喉の奥の velum palati と gular fold が閉じることで水の誤飲を防ぐ[21]。水中では鼻孔も閉じるようになっている[22][21]。鳥のような一方方向への空気の流れを使う気嚢に似たシステムをワニも持つ[23]
身体能力お腹を地面につけずに闊歩するワニオーストラリア北部ダーウィン近郊のアデレード川(英語版)で餌を吊り下げてイリエワニを水面からジャンプさせた様子[24]

陸上では鈍重なイメージがあるが、短距離ならばヒトを凌ぐ18 km/h (11 mph)程度で走る事もできる[25]。その走り方はギャロップ走法(英語版)で、これは現生だと哺乳類にしか見られないが、非常に効率的な走法である。これが可能なのは、ワニの脊椎が横方向だけでなく、縦方向にも非常に柔軟であることが関係しており、今は絶滅した陸棲主竜類(エリスロスクスなど)の運動能力を探る手がかりの一つである[26]


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