ワクチン
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

補体阻害に関与する特定の細菌タンパク質を標的にすれば、細菌の重要な病原性機構を無効にすることができる[40]

プラスミドの使用は、がんや感染症の予防ワクチン戦略として前臨床試験で検証されている。しかし、ヒトの研究では、この方法で臨床的に妥当な効果は得られなかった。プラスミドDNA免疫法の全体的な有効性は、プラスミドの免疫原性を高めると同時に、免疫エフェクター細胞の特異的な活性化に関与する因子を補正することに依存する[41]

ほとんどのワクチンは、微生物を不活化または弱毒化させた化合物を用いて作られているが、合成ワクチンは主成分または全体が、合成ペプチド、糖質、または抗原などで構成されている。
接種方法ガーダシルの注射状況

皮下注射筋肉内注射が多いが、経口生ポリオワクチン(OPV)やロタウイルスワクチンの様に、直接に飲む(経口ワクチン)ものも存在し、またにワクチンを吹き付ける経鼻ワクチンも開発されているほか[42]BCGのようなスタンプ式の製品もある。強力なワクチンの場合は1回で接種を済ませられることもあるが、ほとんどのワクチンは2回以上の接種が必要となる。これは1回の接種ではそれほど得られる免疫が強くないうえ、多くの場合複数回接種では得られる免疫力が大幅に増大する、いわゆるブースター効果が起きるためである[43]
接種間隔

日本では、生ワクチン接種後は27日以上あけ、不活化ワクチンの後は6日以上あけることが規定されているが、医師の判断で必要と認められた場合には、同日複数接種も可能である[44]。同日接種を行うことによって、安全性・効果(免疫応答)が変化・相乗することはなく、また害や懸念事項も存在しないため、迅速な免疫獲得や来院回数の減少などのメリットが大きい同日接種は推奨されている[45]。一度に接種できるワクチンの数に制限はない。また、同日接種の際、ワクチン同士は2.5センチメートル以上の間隔を開けることが求められる。現場で勝手に複数のワクチンを混合して接種することはできない[43]

WHOやアメリカ疾病予防管理センターは、原則として以下のような標準を定めている。

生ワクチン同士は同日、または27日以上あける[46]

生ワクチンと不活化ワクチンは、どちらが先であっても、接種間隔に規制はない[46]

不活化ワクチン同士もまた、同時でも、いつでも接種可能である[46]。ただし、同一のワクチンには指定された間隔がある。

免疫グロブリンと一部の生ワクチン(グロブリン製剤に含まれる抗体に依存する)には特定の間隔が個別に存在することがある。

その他に、メーカーが追加のルールを指定することがあり、たとえば、経口生チフスと経口不活化コレラワクチンは8時間の間隔を開けるというルールがある。
接種部位

皮下注射:上腕伸側を中心とする領域。ただし橈骨神経が走行する中央1/3は避け、下側1/3あるいは上側1/3に接種する。

筋肉内注射:満4歳未満は三角筋の発達が未熟なので、大腿四頭筋外側頭中程。それ以上の年齢では、同部位よりも三角筋が選択される。なお、臀部への筋注は吸収率や免疫応答がよくないので、接種してはいけない。

皮内注射:狂犬病ワクチンの変則的投与では、指定箇所がある。その他に関しても、添付文書を参照すること。

1肢1本接種は、上記免疫応答理論や接種本数の制限を受けるため、受診者・海外渡航者の立場からは現実的ではない。

日本以外で使用されているワクチンは、世界で生活されている在外日本人も東洋人も通常接種されている。日本人に外国製ワクチン(WHO認定ワクチンに限定して)と接種用法などを敬遠する医学的根拠は、何も提示されていない。
副反応詳細は「副反応」を参照

弱いとはいえ病原体を接種するため、望まれない反応も起こすことがある。軽微なものとしては、投与部位の発赤・腫脹・疼痛・感冒様症状などがある。重大なものとしては無菌性髄膜炎、血小板減少性紫斑、膵炎などが知られる(詳細は個別のワクチンを参照)。

ワクチン接種後の自己免疫疾患はまれに報告され、ウイルスなどの感染が引き金となるまれな重篤なこれらの疾患はワクチンの接種によっても起こりうる[47]全身性エリテマトーデス関節リウマチ炎症性ミオパチー多発性硬化症ギラン・バレー症候群などがあり、ギラン・バレー症候群では報告のあったワクチンはほかと比較して多様である[47]

治験では掴めなかった低い頻度の副作用の発生が検出されるよう、迅速に情報収集がなされる[48]。時に薬害事件へと発展し、接種中止・ワクチンの改良がおこなわれる。

2014年のコホート研究のメタ解析は、ワクチンと自閉症との関連に否定的であった[49]
ワクチン開発

ワクチン開発は、まず病原の培養や不活化・弱毒化などの基礎研究を行った後、動物による非臨床試験をおこない、その後3段階に分けて臨床試験を行う。試験終了後に国による承認審査が行われ、承認されれば生産体制を整え、販売が始まる[50]。この承認審査は各国ごとに行われ、ある国で承認されたワクチンでも他国で使用する場合には当該国での審査が改めて必要となる。ただし、ある国で感染症が流行し有効なワクチンが存在しない時は、緊急対策として他国からワクチンを輸入し審査なしで使用することが認められる場合がある[51]。ワクチン開発の際重視される条件は、感染症予防・重症化阻止の効果、副反応などを最小限に抑えた安全性、そして開発・生産・接種コストを中心とする経済性の3点であり、これらのうち一つでも顕著に問題が存在した場合は実用化はなされない[22]。こうした厳しい条件を満たす必要があるため、ワクチン開発にかかる期間は非常に長く、最短でも10年近くは必要となる[52]

ワクチン開発には多額の資金と期間がかかるうえに、多数の人々に接種を行う関係上、巨大な生産力も必要となるため、資本力に優れた大企業が開発・供給を主導する傾向にあり、寡占化が進んでいる。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:94 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef