CDCの予防接種の実施に関する諮問委員会、アメリカ産科婦人科学会、アメリカ家庭医学会はすべて、次に挙げる理由から妊婦への定期的なインフルエンザの予防接種を推奨している[169]。
妊娠後期の2か月間は、インフルエンザに関連した重篤な合併症のリスクがある
妊娠していない女性と比較して、インフルエンザに関連した入院率が高いこと
母親の抗インフルエンザ抗体が子供に移行する可能性があり、子どもをインフルエンザから守ることができる
いくつかの研究において、妊婦や子供へのワクチン接種による害がないことが示されている
この推奨にもかかわらず、2005年の調査では、アメリカの健康な妊婦のうちインフルエンザの予防接種を受けたのはわずか16%であった[169]。
HPVワクチン「ヒトパピローマウイルスワクチン」も参照
HPV(ヒトパピローマウイルス)は子宮頸がんや、中咽頭がん、肛門がん、陰茎がんの原因になり、子宮頸がんの95%、中咽頭がんの75%がHPVが原因だと言われている[24][170][171][172]。日本では毎年約1万人が子宮頸がんにかかり、約3000人が死亡するが、4価HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)はその約60 - 70%を予防できる[24][173]。2023年4月から日本で定期接種になる9価HPVワクチンは、9種類のウイルスの感染を防ぐことができ、子宮頸がんの約90%を予防できる[174][175]。HPVワクチンは重篤な副反応に関連しないことが知られており、世界110カ国で公的な接種が行われ、カナダやイギリス、オーストラリアなどの接種率は約8割となっている[171][176][177][178]。集団免疫の獲得や、男性自身の病気も防げるため、海外では男性も無料接種の対象にする国が増えており、日本でも男性の定期接種化を求める活動が行われている[179][180][172][181]。
日本では、2013年にヒトパピローマウイルスワクチン(通称:HPVワクチン、子宮頸がんワクチン)が定期接種となったが、因果関係が不明な有害事象の報告が相次ぎ、マスコミ報道などの影響によりワクチンへのためらい・批判が高まった[182][183][184][185]。それにより、厚生労働省は定期接種を継続しつつも積極的な勧奨を中止し、一時は70%以上あった接種率は1%未満に激減した[186][187][188][189]。これは世界的に特殊な状況であり、2019年にワクチン接種を完了した割合は、イギリスやカナダ、スウェーデン、オーストラリア等で約80%、日本は0.3%である[190][189][170]。日本は、子宮頸がん罹患率・死亡率が先進国の中で非常に高く、唯一の増加国になっている[178]。
多くの研究により、有害事象の発生頻度は、接種していない人と差がないことが明らかになった[170][191]。HPVワクチンは、認可前に3万人、認可後に100万人以上を対象にした調査研究が行われてきたが、日本で報道されたような有害事象は起きていない[1][63]。