ワクチン忌避
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周囲の多くの人たちがワクチン接種をして流行を防げば、彼女のようにワクチンを接種できない幼い子どもや弱い人たち病気からを守ることができる[55]

ワクチンの接種率が低いと、集団免疫が低下するため、ワクチンを接種した人を含む集団全体の疾病リスクが高まる[24]。例えば、麻疹ワクチンは1歳になってから接種をするが、ワクチンを接種した母親から胎盤を通じて移行した抗体が消失してからワクチンを接種するまでの子どもは脆弱であることが多い[56]。もし周囲の人たちがワクチンを接種していれば、集団免疫によってこの脆弱性を減らすことができる[56][57]。アウトブレイク時またはアウトブレイクの危険性がある時に集団免疫を強化することは、集団予防接種を正当化する理由として最も広く受け入れられている[58]。新しいワクチンが導入されたとき、集団予防接種は急速に接種率を高めるために役立つ[58]

集団の十分な割合がワクチン接種を受けていれば、集団免疫が効果を発揮し、幼すぎる、高齢である、免疫不全である、またはワクチンの成分に対して重度のアレルギーがある、などの理由でワクチンを接種できない人々のリスクを低下させることができる[59][60][57]。免疫の機能が低下した人が感染すると、その経過は一般の人よりも悪いことが多い[61]
自然感染との比較

その感染症に自然感染して治癒する方が、ワクチン接種と比べて強い獲得免疫が得られるという主張がある[6][62]。しかし得られる免疫防御の強さと持続時間は、各疾患とワクチンによって異なり、一部のワクチンは自然感染よりも優れた防御を与える[6][62]。また、ワクチンにより感染者が減少し、人々が病原体にさらされる機会が減るため、感染症に対する免疫が弱まるという主張もある[6][62]。しかし、健康であるために病気になる必要はなく、自然感染は重篤な症状や後遺症、死亡のリスクを伴う[63][26][64]。ワクチンは病気のリスクを回避して免疫を得るために開発され、活用されている[63][26][65][66][67][68]
費用対効果

一般的に使用されているワクチンは、個人や集団全体の病気や後遺症を起こすリスクを減らす利益が、副作用の害を大幅に上回るため、病気の治療など他の医学的介入と比較して、最も費用対効果が高い[24][69]。2001年のアメリカでは7つの病気に対する小児の定期的な予防接種の普及と実施に約28億ドルを支出したが、これらの予防接種の社会的利益は直接的な医療費100億ドルを含む466億ドルと推定され、費用便益比は 16.5であった[70][71]。ワクチンの費用対効果が高いため、多くの国では推奨される予防接種は基本的に無料であり、病気の治療に対して自己負担を求めている[26]
必要性

ワクチンには、普及すればするほど必要性を感じにくくなるという逆説がある[72]。ワクチンの接種率が上がり、病気の恐怖を低下させることに成功すると、その病気の危険性を見聞きする機会が減り、ワクチンの恩恵を忘れる[24][73]。もし十分な数の人々が、ワクチン接種をせずに集団免疫の恩恵にあずかろうという「ただ乗り」を望むようになれば、ワクチン接種の水準は集団免疫が機能しなくなる水準まで低下する可能性がある[74]

ワクチンは自動車のシートベルトに例えられる[75][76][77]。シートベルトは事故にあったときの被害を軽減できるが、事故に遭わないことを保証するものではなく、シートベルトをしていても安全運転をして事故を回避することが大事である[75][77]。また、シートベルトが不快だったり、していても被害を受けることはあるが、シートベルトをしないことよりもすることの利益が上回るために、「シートベルトは無意味、不必要」とはならない[75][76][77]


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