ワクチンによる負荷は、子供が1年間に自然に遭遇する病原体による負荷と比較して極めて小さく[32]、発熱や中耳炎といったありふれた小児疾患はワクチンよりも免疫系に対するはるかに大きな脅威となる[147][148]。また、予防接種は、複数の同時接種であっても、免疫系を弱めたり全体的な免疫に害を与えたりしないことが複数の研究によって示されている[32][149][150]。ワクチン・オーバーロード仮説を支持するエビデンスは存在せず、また直接的に矛盾する知見が存在することから、現在推奨されている予防接種プログラムは免疫系の過剰な負荷となったり、免疫系を弱めたりすることはないと結論付けられている[83][151][152][153][102]。 ギラン・バレー症候群は、複数の末梢神経が障害される自己免疫疾患であり、ウィルスや細菌の感染後に発症することが多い[154][155][156]。症状の進行は急速で、風邪等の上気道感染や下痢を伴う胃腸炎の感染時に働く免疫が、外敵と誤って自分自身の末梢神経を攻撃することで起こると考えられている[157][158]。この免疫機能障害は、あまり一般的ではないが手術やワクチン接種がきっかけになることもある[159][160]。 季節性インフルエンザワクチンは、ギランバレー症候群を誘発する可能性が指摘されているが、これは100万回に1例(1000回あたり0.001人)程度の非常に稀なものである[161][162][163]。インフルエンザの自然感染は、インフルエンザワクチン接種よりもギラン・バレー症候群の強い危険因子であり、ワクチン接種でインフルエンザに罹患するリスクを減らすことで、ギラン・バレー症候群のリスクを低下させることができる[164][165][166][98]。 インフルエンザワクチンの有効性や安全性は科学的に確かめられており、WHOは「ワクチン接種は、インフルエンザの感染や重症化を防ぎ、重篤な合併症を予防する最も効果的な手段である」としている[24][89][138][163]。治療薬のタミフルは、有症状期間を約1日短くするが、重症化を減らすかは確かではない[167][168][24][168]。 CDCの予防接種の実施に関する諮問委員会
ギラン・バレー症候群
インフルエンザワクチン
妊娠後期の2か月間は、インフルエンザに関連した重篤な合併症のリスクがある
妊娠していない女性と比較して、インフルエンザに関連した入院率が高いこと
母親の抗インフルエンザ抗体が子供に移行する可能性があり、子どもをインフルエンザから守ることができる
いくつかの研究において、妊婦や子供へのワクチン接種による害がないことが示されている
この推奨にもかかわらず、2005年の調査では、アメリカの健康な妊婦のうちインフルエンザの予防接種を受けたのはわずか16%であった[169]。