ワクチン忌避
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ワクチンのためらいは、200年以上前にジェンナーが種痘を開発したときから存在するが、メディアやSNSなどの発展で命に関わる危険なデマが広がりやすくなっている[27][28][29][30]

反ワクチン(英語: anti-vaccination)は、ワクチン接種に全面的に反対することを指し、反ワクチン主義者は、anti-vaxxers(アンチバクサー)またはanti-vaxとして知られている[31][32]。反ワクチン主義者は「ワクチン接種はヒトにとって有害である」という考えのもと、社会および個人に対してワクチンの危険性を訴え、他者にワクチン接種をためらわせる[33][34]。主張の内容は概ね「ワクチンを接種するよりも、自然感染したほうがよい」「ワクチン接種によって深刻な副反応(病気や死など)が引き起こされる」「ワクチン接種には効果がない」「政府や製薬会社、医師たちの利権により必要のないワクチンが打たされている」というものである[34][35]。反ワクチン主義者や非主流科学の医師により広められたデマ、陰謀論、誇張された情報は、ワクチンの安全性や有効性に不信感を抱かせ、ワクチンで防ぐことができる危険な病気のワクチン接種率を低下させている[1][36][37][38][39]。COVID-19のパンデミック時、SNSの広告収入などによる反ワクチン活動の収益化が進み、反ワクチンは個々の不安に付け込んだ、経済効果が年間約1250億円の国際的な情報ビジネスに成長した[40][41][16][42][43]
ワクチンの効果麻疹の発症率は、予防接種が導入されると急激に低下した[44]

ワクチンの効果に関する科学的証拠は十分に確立されている[45][46]。 ワクチンによって、世界中で毎年200万から300万の死亡が予防され、推奨されるすべてのワクチンを使用した場合、さらに毎年150万の死亡が予防できる[47]。 ワクチンは、かつてヨーロッパで7人に1人の子どもを殺した天然痘を根絶し [48]ポリオもほぼ根絶された[49]。 子どもの細菌性髄膜炎やその他の重篤な疾患の主な原因であるインフルエンザ菌(Hib)による感染症は、1988年にワクチンが導入されて以来、アメリカでは99%以上減少した[50]。 ある年に生まれたアメリカのすべての子どもに出生から思春期まで完全にワクチンを接種すると、3万3000人の命を救い、1400万の感染を防ぐと推定されている[51]

感染症の減少は、ワクチンではなく衛生環境の改善によるものであるとか、特定のワクチンが導入される前にこれらの病気はすでに減少していたと主張する反ワクチン文献があるが、これらの主張は科学的データに基づいていない[44][52][25]。ワクチンで予防できる病気の発生率は、特定のワクチンが導入されるまでは時間の経過とともに変動する傾向があり、ワクチンの導入と同時に発生率はほぼゼロに低下する[44][53]。ワクチンに関する一般的な誤解に対抗するアメリカ疾病予防管理センター(CDC)のウェブサイトは、「ちょうどその病気のワクチンが導入された時期に、衛生状態の改善がそれぞれの病気の発生率を低下させたと信じろというのだろうか」と論じている[44]
集団の健康シャーロット・クレバリー=ビスマンは、髄膜炎菌感染症により、生後7か月で四肢の一部を切断した[54]。周囲の多くの人たちがワクチン接種をして流行を防げば、彼女のようにワクチンを接種できない幼い子どもや弱い人たち病気からを守ることができる[55]

ワクチンの接種率が低いと、集団免疫が低下するため、ワクチンを接種した人を含む集団全体の疾病リスクが高まる[24]。例えば、麻疹ワクチンは1歳になってから接種をするが、ワクチンを接種した母親から胎盤を通じて移行した抗体が消失してからワクチンを接種するまでの子どもは脆弱であることが多い[56]。もし周囲の人たちがワクチンを接種していれば、集団免疫によってこの脆弱性を減らすことができる[56][57]。アウトブレイク時またはアウトブレイクの危険性がある時に集団免疫を強化することは、集団予防接種を正当化する理由として最も広く受け入れられている[58]。新しいワクチンが導入されたとき、集団予防接種は急速に接種率を高めるために役立つ[58]

集団の十分な割合がワクチン接種を受けていれば、集団免疫が効果を発揮し、幼すぎる、高齢である、免疫不全である、またはワクチンの成分に対して重度のアレルギーがある、などの理由でワクチンを接種できない人々のリスクを低下させることができる[59][60][57]。免疫の機能が低下した人が感染すると、その経過は一般の人よりも悪いことが多い[61]
自然感染との比較

その感染症に自然感染して治癒する方が、ワクチン接種と比べて強い獲得免疫が得られるという主張がある[6][62]。しかし得られる免疫防御の強さと持続時間は、各疾患とワクチンによって異なり、一部のワクチンは自然感染よりも優れた防御を与える[6][62]。また、ワクチンにより感染者が減少し、人々が病原体にさらされる機会が減るため、感染症に対する免疫が弱まるという主張もある[6][62]。しかし、健康であるために病気になる必要はなく、自然感染は重篤な症状や後遺症、死亡のリスクを伴う[63][26][64]。ワクチンは病気のリスクを回避して免疫を得るために開発され、活用されている[63][26][65][66][67][68]


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