ローレライ_(映画)
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出港からまもなく伊五〇七はアメリカ海軍の駆逐艦3隻と邂逅。絹見はローレライ起動を即断し、その驚異的な索敵能力で勝利するがあと1歩で撃滅という場面でシステムは突如緊急停止してしまう。戦闘終結後に問い詰められた高須はローレライが民間人の少女・パウラを媒介とする人間兵器であることを白状し、操舵を担当した折笠上等兵をはじめとする乗員に衝撃を与えた。

ナチス・ドイツの科学の結晶とも謳われた高度な音響システムの中枢にあったのは人間の少女であることを知り、艦内は不穏な空気が漂い、パウラの存在は瞬く間に全クルーの知るところとなり、折笠は世話係を命じられる。当初は口さえ聞かないパウラだったが、自分を「魔女」(システムの通称)ではなく人間として見続ける折笠に心を開いていく。また彼女の歌は乗員に癒しと安らぎを与え、次第に艦の仲間として受け入れられるようになった。

しかしそんな時間は長くは続かず、長崎県に第2の原爆が投下されてしまう。その直後に高須をリーダーとするクーデターが勃発。高須の正体は軍属技師ではなく、浅倉より密命を受けた海軍大尉であった。その密命とはローレライをアメリカに供与した上で3発目の原爆を東京に落とさせ、「国家の切腹」と呼ぶ国単位での自決・日本国家の壊滅を目指すものであった。寄せ集めとして艦に乗り込んだ乗員の一部はクーデター要員として浅倉大佐から送り込まれており、その中には絹見が信頼する部下の1人でもある伊五〇七の掌砲長・田口も含まれていた。クーデターは成功するかに見えたが、いつまでもパウラを道具として扱う高須に失望した田口が造反し失敗。さらにパウラの能力によって、原爆を搭載した爆撃機の発進時刻を暴かれた高須はそのまま絶命する。

この時本土と伊五〇七との通信で計画の頓挫を知った浅倉は、東京への原爆投下がクーデターの結果にかかわらず不可避であることを明かす。直後に軍の首脳を集め、彼らにも作戦の全容を公表した後に「これが新生日本の幕開けだ」と叫び拳銃自殺を遂げる。絹見が指揮権を取り戻した伊五〇七はこれから第3の原爆投下を阻止するために独断行動を執ることを告げ、「生きることを諦めるな」と号令を発し、未来の祖国のため下艦を決めた者、祖国の未来を守るため艦に残り作戦決行を決めた者。それぞれが祖国の希望だった。

原爆を積んだ爆撃機B-29が控えるテニアン島の強襲作戦を決行する。圧倒的な戦力を誇るアメリカ太平洋艦隊が伊五〇七の前に立ち憚る。この作戦を決行するにはローラレイが、そしてパウラの力が必要不可欠だと皮肉にも自分が拒んでいた人間兵器の使用をせざるを得ない状況となった絹見に対し、パウラは人の死に干渉する力が強すぎるせいでこのままローレライを酷使することと先制攻撃をしてしまえばパウラは死んでしまうと軍医・時岡大尉は静止するが、乗員たちはパウラの負担を最小限に抑えるための作戦として、破壊力のない魚雷を敵艦の動力源に命中させ、撃沈ではなく航行・戦闘不能に追い込む方法を取った。だが、アメリカ艦隊の圧倒的火力による攻撃で伊五〇七までも航行不能に陥ってしまう。木崎の命を犠牲にした艦内修理により伊五〇七は無事に元の戦闘海域に戻り、原爆投下作戦を決行するB-29が飛び立つ海域に緊急浮上し、艦砲でB-29を撃墜する。原爆は海へと沈み、東京壊滅は回避された。作戦終了と同時にアメリカ艦隊の攻撃が伊五〇七に牙が剥かれる中、伊五〇七は再び海の中へと姿を消していった。

そして、作戦終了時に「生きろ」という最後の命令を下され戦闘海域から離脱した折笠とパウラの乗る潜水艇は、また同じくあの海に響く美しい歌声だけを残して消えていった。

それから時は経ち現代。当時アメリカ海軍側として伊五〇七を相手に戦った年老いたマイナット中尉は若き日本人ジャーナリストに自分の知ることの顛末の全てを話し去っていった。ジャーナリストの左腕には、かつて絹見がパウラに自身の妻の形見と称して渡していた腕時計があった。
キャスト
潜水艦伊507艦長 絹見真一
少佐役所広司
「若手を育てるための人材の浪費」「若者の血を見たくない」という考えから特攻作戦に反対したため、一部からは「腰抜け」と蔑称で呼ばれており、潜水艦乗りにもかかわらずその一件で陸上勤務として閑職に追いやられていた。浅倉によって伊507の艦長に任命され、原爆輸送艦艇の撃沈を命じられ出撃する。亡き妻の形見である腕時計を大事に身に着けているが、本人いわくその理由は軍人でありながら妻を娶り、国を守る以上妻を幸せに出来なかったことへの戒めである。浅倉の反乱に遭遇するも、浅倉の目論む日本の破滅には賛同せず、あくまで日本を救うことを貫く。そして浅倉の自決後に正規の命令のない中で、自らの独断でテニアン島を砲撃し、東京への原爆投下を阻止しようと決める。そして乗員に自らの意思を伝え、下艦を選んだ反乱将兵を除く皆の賛同を得る。その一方パウラについては「ローレライ」が必要だと思い、共に行かせると決め彼女もそれに賛成した。反乱将兵を降ろした後、テニアン島へ向けて針路をとる。パウラの負担を軽くするため艦内の全ての魚雷から信管を取り外し、テニアン沖にて「ローレライ」で攻撃を避けながら敵駆逐艦の舵を狙って魚雷攻撃を行い、艦同士の衝突を引き起こす。これによって魚雷を撃ち尽くすが前方に現れた敵潜水艦隊に対して最後の魚雷であるN式潜航艇の魚雷発射を決定。魚雷が外付けされている関係で信管を外せない魚雷を撃つことに折笠は不安を訴えるも、パウラの意思もあって折笠に魚雷を撃たせ、敵潜水艦を撃沈。伊507が沈んだと敵艦隊に誤認させることに成功する。その後、折笠に自分たち大人が起こした戦争に子供を巻き込んだことを詫びてN式を切り離し、油断する敵艦隊の隙を突いてテニアン沖に艦を浮上させ艦橋に上がり田口に原爆を積んだB-29を砲撃するよう命令。B-29の撃墜を見届けてから帰還の途につくと皆に命じ、敵艦隊から砲撃が起こる中伊五〇七は潜行していった。
N式潜航艇正操舵手 折笠征人上等工作兵:妻夫木聡
長崎県生まれの人間魚雷「回天」特攻隊員。家族を失った悲しみもあって特攻作戦への決意は固いが、高須の指示によりN式潜航艇の操舵手として伊五〇七に乗り込む。そして、清永の好奇心をきっかけにパウラと出会い、彼女と心を通わせるようになる。N式潜航艇から外に出られなかったパウラを無断で出した件で、便所掃除の雑用を命じられるが結果として高須や田口の反乱時に彼らに見つかることなく姿を隠すことに成功する。そして木崎の合図で艦を潜行させ、アメリカへの投降を阻止した。その後、原爆投下を止めようとする絹見に自分も付いていくと言うが、パウラは艦から降ろすよう具申する。だが、絹見はパウラを必要とし、パウラも自分の意思で艦に残ることを決意。テニアン沖の海戦にて清永との死別を経てパウラと共にN式に乗り、パウラを気遣いながらN式の魚雷を発射して敵潜水艦を撃沈。消耗したパウラを見てN式の収容とパウラの治療を絹見に具申するが、絹見から自分とパウラの一切の任務の終了とN式の切り離しを告げられ、生きるよう言われてN式を切り離され、パウラと共に伊五〇七から離れていった。
先任将校 木崎茂房大尉柳葉敏郎
真珠湾以来、絹見が頼りにする部下で、彼自身も絹見に信頼を寄せている。娘からもらったあやとりの紐を手にしている。高須の反乱において姿を隠していた折笠に気付き、急速潜行するよう合図を送り、高須によるアメリカへの投降を阻止する。


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