ロードバイク
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また、この時代になるとダブルコグと呼ばれる左右で歯数の違うギアを装備した車両が一般的となり、起伏にもある程度対応できるようになった[注釈 1]。しかし、ダブルコグ式は坂に差し掛かるたびに後輪を逆に取り付ける必要があるため交換に時間を要し、また固定に用いられるウィングナットは低温状況下において、かじかんだ手での着脱が困難なものであった。

1930年代になると、現在のロードバイク用ハンドルとして一般的なマースバーが使われ始め、1933年にウィングナット留めの欠点を補ったカンパニョーロの原点ともいえるクイックリリースシステムが登場した。

4年後の1937年には、ツール・ド・フランスにおいて変速機が使用できるようになった[注釈 2]

第二次世界大戦によってロードレースの開催が一時中断するものの、1947年にツール・ド・フランスが再開されるとふたたび技術革新が進み、フロントギアへの変速機構の導入や、木製リムから金属製リムへの移行などが行われた。

1950年頃になると、クランクを逆転させて変速する必要がないスライド式のディレーラーが前後とも主流となり、まもなくリアはタケノコ式のディレーラーに移り変わっていった。

1960年代初頭には、変速性能が良いパンタグラフ式[注釈 3]が前後とも主流になった。こうして変速機構が進化するなか、ブレーキを備える固定ギアを用いる選手もまた1960年代前半頃まで少数ではあるが存在した。

1970年代に入ると、1971年にコンポーネントという概念を形にしたパーツセット「ヌーボレコード」(nouvo record。イタリア語で「新記録」)をカンパニョーロが発売し、翌年にはシマノデュラエースを発売。カンパニョーロはこれに対抗して、1973年に「スーパーレコード」を発売するなど、ロードバイク業界は一気に変化を遂げた。1978年には、シマノが現在主流となっている「カセットフリー」(スプロケット)を実用化。デュラエースEXシリーズの一部として発売された。1980年代以降、ロードバイクもマウンテンバイクで培われた新しい技術を採り入れ、軽量化や新素材の開発も進み、信頼性・操作性が格段に向上した。
特徴

UCIが主催するロードレース用自転車に準じる。UCIの規定の範囲内に置いて高速走行性能を優先して設計されるため、決してロードバイクが最速ではなく、空気抵抗の点ではさらに先鋭化させたリカンベントも存在する。ドロップハンドルと呼ばれる特徴的な形状のハンドルをもち、泥よけやスタンドなど、走ることに不要な部品は装備せず、前照灯や後部反射板も装備していない。溝が浅く少ない、幅の細い高圧タイヤを履き、転がり抵抗の減少を図っている。部品や素材は開発が続けられており、軽量化が進んでいる。1990年代までは「ロードレーサー」と呼ばれていた。

UCIのロードレースとしての範囲以外に対しては拘束力は無い、そのため「UCIが管轄しないロードレース」や「トライアスロンのバイクセクション」、「単なる街乗り」などに対しては拘束力は無い。ただし、ロードバイクは比較的速く走行でき、入手性も高いためUCIに管轄されない範囲でも活用されることが多いが、参加する競技や生活する自治体の要件を満たした自転車である必要はある。
安全性

運転に当たって前傾姿勢を取るため前方視界が限られることなどから、シティサイクルなどに比べて事故の当事者となり得る可能性が高いため、一般道での走行には細心の注意を必要とする[注釈 4]
質量

車体質量が小さいほど加速や登坂に要するエネルギーは少なくて済むために、ロードバイクでは軽量性が重視される。現在では、新素材・設計の導入によりその質量は非常に小さく、一般的なシティサイクル実用車の1/2 - 1/3(もしくはそれ以下)の質量になる。軽量なものでは5kgを切るような車体を作成することも可能である[4]。どこまで実用的なのかは不明だが、2Kg台のロードバイクも存在する。
競技主催者が定める重量制限

国際自転車競技連合(UCI)の規定では、過度な機材の軽量化を防止するために質量の最低重量を6.8kgと設定している。2000年代以降は炭素繊維強化プラスチックなど軽量な素材が登場し、最低重量を下回ることも容易となった。プロ競技においてはバラストとしてGPSやルート表示機能を備えたサイクルコンピュータやパワー測定装置、ディスクブレーキなどの機材を装着して規定をクリアする場合もある。
構成部品
フレーム詳細は「フレーム (自転車)」および「フレーム素材 (自転車)」を参照

ほぼすべてがシンプルなダイヤモンドフレームを採用しているといってもよい。これにはロードレースではUCIの規定によりダイヤモンドフレーム以外の機材を用いることが許されていないという理由もある。ただし、そのような規制がなかった1990年代には、個性的なフレームの自転車がタイムトライアル競技で採用されていた。UCIでなく国際トライアスロン連合が統括するトライアスロン競技用として、非ダイヤモンドフレームの製品もあるが、以前に比べると減少傾向にある。1cm刻みのフレームサイズを用意できたパイプ接合の頃に比べ、サイズ別の成型型を用意しなければならないCFRP製一体成型が普及することに伴い、粗いサイズ展開になりつつある。

ロードバイク(ロードレーサー)は、源流を同じくするトラックレーサーとともに、現存する競技用、あるいはそれに準ずる自転車の最も古い形態であるということができ、最もシンプルな形をしている。より速く走るためにできるだけ軽くし、無駄なものを可能な限り排除した設計がなされている。そのため、積載能力や走行以外の二次的な用途を前提とした設計はあまり考慮されていない。なかには乗り手の体重制限を設けてまで素材の肉厚を切り詰め、軽量化を図ったフレームも存在する。

フレーム素材は、クロムモリブデン鋼(クロモリ)に代表される(スチール)、アルミニウム合金カーボンが主流である。またかつてはアルミ+スチールやアルミ+カーボンなどのハイブリッドフレームも販売されていた。2014年現在、トップカテゴリーではフルカーボンフレームが主流だが、入門用のものではアルミフレームも多く、スチールフレームは軽量化の面でアルミやカーボンに劣るためレースではほとんど使用されなくなったが、一般的に耐久性が高く長い期間使用できることやクラシカルな細身のフレームは独特の美しさを感じさせることもあり根強い人気がある。わずかだが荒れた路面での振動吸収を狙ったサスペンション機構を搭載する物も存在する。
ホイール

プロレース、ハイレベルなアマチュアにおいては、コースに応じて高速巡航時の空力性能に優れたエアロホイールや、ヒルクライムに適した軽量ホイールなどが使い分けられる。また、規定で認められている場合には直径が違うホイールを使い分けることもある。この場合には、規格の違うホイールはフレームに適合しないため、車両ごと交換が行われる。
規格

ロードバイクのタイヤは、700C、650C(26インチWO)。主流は700Cであり、ロードレースなどUCI管轄の自転車競技で700C以外が使われることは稀だが、トライアスロン用機材を中心に650Cのものが存在する。650Cのホイールは、700Cよりも径が小さいことで空気抵抗の少ないポジションがとりやすくなるため、集団走行やドラフティング(他の競技者の真後ろについて空気抵抗を軽減する技術)が原則として禁止されているトライアスロンでは、650Cは合理的な選択である。また、650Cはタイヤの外径が小さいため、タイヤを回転させるためのトルクが小さく、さらにギア比も小さくなることから加速の点では有利である。そのため、一時期ロードレースでも山岳での勾配が険しいコースで用いる選手もいた。しかし、直進安定性、高速巡航性能、コーナリング特性は700Cに比べて劣っているというのが定説である。
流通・製造箇所による分類

ホイールには大きく分けて2種類の製品がある。技術的な分類ではなく、流通や製造箇所による分類である。
手組み(てぐみ)ホイール
従来からのタイプで、販売店のメカニック等によって文字通り一つ一つのパーツから手で組まれたものをいう。ほぼすべてのパーツを自分の好みや用途、体型などさまざまな要素に合わせて選べるため、自分に合ったホイールを作ることができるという利点がある。また市販されている部品を使うため、補修、整備も容易である。現在では補修、整備の容易さからツーリング用に使われたり、完組みホイールに比べて安価なために練習に使われたりする場合が多い。全体としてのバランスはよいが、特化した性質がないのが欠点ともいえる。全く同一の物でも、工場生産されたものは後述の「完組ホイール」である。
完組み(かんぐみ)ホイール
1990年代に登場した、工場生産による市販の既製品である。機械による製造、あるいは熟練の担当作業員による組み立てによって、安定した品質の製品を大量に供給することが可能で、現在ではこのタイプが主流になりつつある
[注釈 5]。すべてのパーツを専用に設計することもできるためスポークの本数を大きく減らしたホイールなども生産でき、平地巡航目的、山岳コース対応の軽量モデルなど、競技の設定に応じて専用設計が行える利点があるため、手組みに比べてレースに用いられることが多い。
構造

ホイールはハブ本体、リム、スポーク、ニップルから成り立っている。
ハブ本体
ホイールの中心にある回転部分。良いホイールはハブ本体のベアリングの精度が良いか、ハブ本体が軽量に作られている。ハブの本体はアルミ製が多いが、軽量を謳っているモデルは負荷の少ない部分にカーボンを用いることもある。前輪用のオーバーロックナット寸法は長らく100mmが続いているが、後輪用は120-142mmと幅があり、時代を遡るほど狭い傾向がある。2022年時点ではリムブレーキモデルで130mm、ディスクブレーキモデルで142mmというのが定番。
リム
ホイールの外周部にあたる
リムは、素材として主にアルミが用いられるが、高級モデルを中心にカーボンを用いたものも存在する。ちなみに、レースの世界ではほとんどがカーボン製のリムを使用している。また昔ながらの木製リムもわずかではあるが流通している。マグネシウムのリムも一部流通しているが主流となり得るほどのバリエーションは存在しない。さまざまな形状があるが、大別すると通常のリムと平地巡航能力を上げたディープリムがある。ディープリムは重量で劣るが、空気抵抗の減少によって高速巡航能力が上がるように設計がなされている。
スポーク
スポークの材質には、ステンレスや鉄、チタンなどがある。一般的にはステンレスが使われているが、完組みホイールではアルミスポークを採用したものもある。チタンは大変高価でありながら伸びやすいため、普及してはいない。


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