第一から第六の歌からなる作品。登場人物(作中では物語の書き手としても描かれる)であるマルドロールを中心に繰り広げられる物語。しかしマルドロールに関する描写や物語の舞台となる場所など、常に変化し首尾一貫したものではない。またマルドロールは多くの場面において変身を繰り返す。フランスのノーベル賞作家ル・クレジオはこの点に注目し、評論を執筆している。マルドロールは物語の中で繰り返す残虐な行為の数々から悪の化身と言っても過言ではない。なお、第一の歌は出版事情から三つの版が存在する。
「ポエジー」1870年発表
第一集、第二集が出版された。第二集では特にパスカル、ラ・ロシュフーコー、ヴォーヴナルグなどの「箴言」や名句などを「剽窃」の手法によって書き換えている(この技法の研究についてはジャン=リュック・エニグ『剽窃の弁明』に詳しい)。「マルドロールの歌」がその過激な内容から発売を差し控えられたことを考慮し、デュカスは自らの出版者に宛てた手紙の中で「(「マルドロールの歌」で描かれた)悪を善の方向へ修正する」と書いていることからも、実際に店頭に並ぶように苦心した事が窺われる。
日本語訳
『マルドロオルの歌』青柳瑞穂訳 駒井哲郎画 木馬社 1952/講談社文芸文庫 1994
『ロートレアモン全集 第1・2巻 マルドロオルの歌』栗田勇訳 ユリイカ 1957
『ロートレアモン全集 第3巻』栗田勇訳 ユリイカ 1958
『ロートレアモン詩集』渡辺広士編訳 思潮社 1968
『ロートレアモン全集』栗田勇訳 人文書院 1968/「マルドロールの歌」角川文庫、新版1995
『ロートレアモン全集』渡辺広士訳 思潮社 1969
『ロオトレアモン詩集』青柳瑞穂訳 ほるぷ出版 1982
『ロートレアモン伯爵 イジドール・デュカス全集』豊崎光一訳 白水社 1989
『マルドロールの歌』藤井寛訳 福武文庫 1991
『マルドロールの歌』前川嘉男訳 集英社文庫 1991
『ロートレアモン全集 イジドール・デュカス』石井洋二郎訳 筑摩書房 2001/ちくま文庫 2005
研究・論考
ガストン・バシュラール『ロートレアモンの世界』平井照敏訳、思潮社 1965年。改題『ロートレアモン』1984年
モーリス・ブランショ『ロートレアモンとサド』小浜俊郎訳、国文社 1970年
ル・クレジオ『来るべきロートレアモン』豊崎光一訳、朝日出版社、1980年
フィリップ・ソレルス, Logiques
アンドレ・ブルトン『黒いユーモア選集』河出文庫 新版2007年
レイラ・ペロネ=モイセス/エミール・ロドリゲス・モネガル『ロートレアモンと文化的アイデンティティー イジドール・デュカスにおける文化的二重性と二言語併用』寺本成彦訳、水声社 2011年
出口裕弘『帝政パリと詩人たち ボードレール・ロートレアモン・ランボー』河出書房新社、1999年。旧版『ロートレアモンのパリ』筑摩書房
前川嘉男『ロートレアモン論』国書刊行会、2007年
石井洋二郎『ロートレアモン―越境と創造』筑摩書房、2008年
吉本隆明『書物の解体学』。作家論でロートレアモンに関する一章がある(中公文庫・講談社文芸文庫ほか)。
※フランス語その他、日本語訳のない論文については、フランス語版Wikipediaを参照。 『ロートレアモン全集』石井洋二郎訳
脚注[脚注の使い方]^ 『ロートレアモン全集』石井洋二郎訳、筑摩書房、2001年
参考文献
外部リンク
⇒イジドール・デュカス及びロートレアモンに関する研究総合サイト 最新情報など
⇒L.L. de Marsによるイラストサイト
⇒パリ第三大学 ユベール・ド・ファレーズのグループによるサイト 全集など
カタログロートレアン
⇒ジャン=ルイ・マンソーによる「マルドロールの歌」の舞台化
⇒モントリオール大学 ギ・ラフレッシュによる研究サイト
典拠管理データベース
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⇒FAST
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