ロングアイランド
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第二次世界大戦後の郊外移住のトレンドと経済発展の波に乗りナッソーは1950年から70年代まで全米で最も成長著しい郡となった。サフォークは1990年代情報技術などの発展と共に徐々に人口は増加したが、ナッソーに比べると未発展の地域も多い。夏はニューヨーク都市圏の人々のリゾート地として賑わうサフォーク(サウスフォーク地域)であるがグリーンポイントやハンプトンズなど最東端には郊外というよりはむしろ田舎と呼べる小さな町も残っている。ハンプトンズはアメリカでも最も高級な別荘地のひとつであり、ニューヨークの富裕層の多くがこの地域に別荘を持つ。また島全体が低地で、気候も温暖であり、近郊農業地帯として発達しておりニューヨーク市に向けた野菜の栽培が盛んである。ノースフォーク地域は以前はジャガイモ生産が活発であったが現在はワイン生産の地として有名になった。サウスフォーク地域には海水浴だけでなくモントーク灯台などの観光地もある。漁業もさかんで、かつては捕鯨の拠点でもあった。
人口

人口推移
年人口%±
1790
37,108?
180042,90715.6%
181048,75213.6%
182056,97816.9%
183069,77522.5%
1840110,40658.2%
1850212,63792.6%
1860379,78878.6%
1870540,64842.4%
1880743,95737.6%
18901,029,09738.3%
19001,452,61141.2%
19102,098,46044.5%
19202,723,76429.8%
19304,103,63850.7%
19404,600,02212.1%
19505,237,91813.9%
19606,403,85222.3%
19707,141,51511.5%
19806,728,074?5.8%
19906,861,4742.0%
20007,448,6188.6%

2000年国勢調査によると4郡を合わせた島の全人口は7,448,618人で、そのうち2,465,326人がキングス郡(ブルックリン)に2,229,379人がクイーンズ郡に住んでいる。2郡の合計は4,694,705人で人口比63%になる。サフォークの人口は1,419,369人、ナッソーは1,334,544人で合計は2,753,913人。このことからクイーンズには29.9%が、ブルックリンには33.1%が、ナッソーには17.9%が、サフォークには19.1%という人の散らばりがあることがわかる。以前までは都市に近いナッソーの人口の方がサフォークを上回っていたが郊外地区の東側への発展と共に1990年の国勢調査で後者が上回った。ただサフォークはナッソーの倍近い面積があるためナッソーの人口密度は依然として前者より高い。

島の全人口は全50州に照らし合わせると38番目になり、もし独立国家であれば人口はスイスイスラエルの中間96位にランクインすることになる。

人種構成としてはクイーンズ、ブルックリンには非白人系の人種が多数派で、ナッソーとサフォークは白人系が多数派である。宗教はカトリックが最多。ロングアイランドは多くのイタリア系アメリカ人が居住する地域であり、その数は約70万人に上るとされている。また同島は「全米で最も人種差別が多い郊外地域」とされており、これは個人個人の差別意識ではなくレジデンシャル・セグレゲーションと呼ばれる人種による住み分けが原因とされている。例えばナッソーのガーデンシティ地区には豪邸が立ち並び平均世帯収入が12万ドル(約1200万円)を超える多くの上流階級が住んでおり人口の92%が白人である。一方、労働者階級が多く住むナッソーのヘンプステッド地区の平均世帯収入は4万6千ドル(約460万円)で51%が黒人、32%がヒスパニックである(市長も黒人)。ちなみに駐在等の日本人が比較的多いのは中流階級の多いポートワシントン地区である(クイーンズ、ブルックリンを除く)。同地区の白人比は85.97%で平均世帯収入は8万5千ドル(約850万円)である。

ロングアイランドの人種・宗教構成人種宗教
郡人口白人黒人アジアその他混血ヒスパ
ニックカトリック無宗教ユダヤ教プロテス
タントデータ無し
 キングス 2,465,326人41.2%36.4%7.5%10.6%4.3%19.8%37%4%15%8%33%
 クイーンズ 2,229,379人44.1%20.0%17.6%12.3%6.1%25.0%29%37%11%5%15%
 ナッソー 1,334,544人79.3%10.1%4.7%3.8%2.1%10.0%52%9%16%7%15%
 サフォーク 1,419,369人84.6%6.9%2.4%4.0%2.1%10.5%52%21%7%8%11%
 合計 7,448,618人57.2%21.2%9.0%8.6%4.0%17.8%40%18%12%7%20%

地理アウターランド

同島の面積は面積は3,629 km2で奈良県とほぼ同じ大きさ。東西約190kmの長さは東京郡山の直線距離に相当する。

ロングアイランド島は地理的にはアウターランドに分類され巨大な氷河モレーンと砂地によって形成された。このモレーンは約21000年前の最終氷期、ウィスコンシン氷河の影響を受け砂礫層と柔らかな地盤から成っている。現在の北海岸に位置する北部モレーンはハーバーヒル・モレーンとして知られ、南海岸のそれはロンコンクーマ・モレーンとして知られる。ロンコンクーマは現在ロングアイランド高速道路が通る島中央部まで広がっており同島の地盤を形成した。また南部に存在した巨大な氷河は海岸線を削り取り、ヘンプステッド・プレーンとして知られる同地はアパラチア山脈東側で稀に見られるプレーリーのひとつである。氷河が解け、その淵が北部に後退するにつれ北海岸と南海岸の海岸には差異が生まれた。北海岸は残留した氷河の影響から岩場が多く、南海岸は細かな砂地となった。島中央を貫く低標高の尾根は氷河が残していったモレーンである。メルヴィル地区の近くにある海抜122mのジェインズヒルはこのモレーンの最高地点で、他には海抜101mのボールドヒルなどがある。またこの氷河はロンコンクーマ湖や数多くのケトル(ごく小さな湖)を作り出した。ロングアイランド島の最高点ジェインズヒル。海抜122m。

島には多くの帯水層があり島に必要な水を十分に供給できる量がある。その為島で使用される水はほぼ全てがこの帯水層から汲み上げた地下水で、主に使用されているのは一番浅い層であり、3つの主要な層と1つの小さな層からなっている。最深部からロイド、マゴシー、アッパーグレイシャルという名が付けられている。水の供給源は降雨によるものが大半であり25年から1000年をかけ地面に染み込んでろ過されていく。その水量は700億ガロン(260 km3)と推定されており、これはロングアイランド島全体を水深90mの水槽にすることができるほどの量である。そのため長い干ばつにも十分耐えうる。一日に約400万ガロンの水がナッソーとサフォークのあたりから汲み上げられ供給されており、そこに住まう人々の生活水としても利用されている。現在ではほぼ全ての家が水道管設備を備えているが中には家庭用の井戸を使用している場合もある。ナッソーとサフォークはこの巨大帯水層の存在に依存しており汚水の再処理地域としても知られている。汚水処理はロングアイランドの発展には必要不可欠な存在であるが、発展と共にこの地下水の水質が懸念されており現在同島の今後の発展を揺るがしかねない深刻な問題となりつつある。

1985年には合衆国最高裁判所により同島は「半島」であるという決議がなされた。これは州境などをめぐる問題の結果であった。ちなみに同島の最西部を流れマンハッタン島とを隔てているイーストリバーは厳密にはではなく海峡である。
気候

温暖で湿気の多い夏と厳しい寒さの冬があり、大まかな気候区分としては他の東海岸北部の沿岸エリアと同じである。ケッペンの気候区分ではCfa(温暖湿潤気候)及びDfa(冷帯湿潤気候)に属し日本の東北地方と同じ区分である。北大西洋海流で温められた大西洋からの海風によって高緯度であるが温暖な気候を生み出している。その為、激しい雷雨などもしばしば見られる。ただしハリケーンの直撃はほとんど無い。
気温

気温は西と東で変化し西側(ナッソーなど)は東側サフォークに比べ幾分暖かい。これは西側が大陸に近いことや都市の発展によりヒートアイランド現象を起こしていることが理由とされる。東側は大西洋とロングアイランド湾の気流をダイレクトに受ける地理であり自然も多い為やや涼しい。サフォークの最東端に位置する街パイン・バレンズでは雲と風のない乾燥した夜の気温は放射冷却により島西部に比べ11度近く低くなる。

月ごとの最高・最低気温の比較地域1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
ロングアイランド4.5/-3.55/-39/0.514/519.5/9.523.5/1526.5/1826/1722.5/13.517/7.512/37/-1
ニューヨーク市4/-25.5/-110/2.515.5/720.5/1224.5/16.527/19.526/1922.5/1517/1011.5/5.56.5/1
東京10/210/213/518/1123/1525/1929/2331/2427/2122/1517/1012/5
青森県八戸市2.5/-4.52.8/-4.46.6/-1.713.6/3.518.5/8.420.6/12.624.5/1726.5/19.122.9/14.817.7/811.3/2.25.4/-1.8

注:青森県八戸市は同緯度にあたる都市。ロングアイランドの測定地はロングアイランド・マッカーサー空港。ニューヨーク市の測定地はセントラルパーク。東京・八戸の気温は気象庁のデータを参照。
冬に発生する低気圧ノーイースターの動き。

ロングアイランドの冬はニューヨーク市同様その緯度の高さから厳しく、12月から3月にかけて一定の降雪量があり、11月下旬や4月上旬でも大量降雪が見受けられる。冬になると(特に明け方)海上の気温が陸上のそれと比べ高くなる為、海上で湿気を帯びた空気が陸地で吹雪やシャーベットの嵐を生む。ほぼ毎年ノーイースターと呼ばれる低気圧の嵐が同地を覆い、30cmから60cmの降雪と共に台風並みの強風でブリザードを生み出す。年間降雪量の平均はおよそ50-89cmと豪雪地帯ではないが、ごく稀に一部地域では190cm近くの積雪を記録することもある。また暖冬の場合は積雪25cmほどである。北海岸西部は南海岸や東部に比べ降雪が多い。
ハリケーン・竜巻

同島は緯度が高くまた海水も比較的冷たい為ハリケーンは北上するに従ってその勢力を弱めるが、稀にカテゴリー1レベルのものが上陸することもある。カテゴリー3も含む上陸した強烈なハリケーンとしては1938年ニューイングランド・ハリケーン1944年の無名ハリケーン、1960年のドナ、1976年のベレ、1985年グロリア1991年のボブ、1999年フロイドなどがある。(フロイドに関しては上陸時にカテゴリー1のハリケーンであったのか強烈な熱帯低気圧であったのか気象学者の意見が割れている)99年フロイドの進路

東海岸南方で合衆国に上陸するハリケーンはニューヨーク近くまで北上すると分解されるか熱帯低気圧に変わる。ハリケーンレベルの熱帯低気圧の記録としては1996年のバーサ、2004年のチャーリー、2006年のアーネストなどがある。アーネストは上陸時熱帯低気圧に変わっていたが、その激しさゆえ島内の一部が停電となった。


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