ロミオとジュリエット
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これは、上演の速記録などを基礎にして製作され、作者の許可なく刊行されたものと推定されている。不完全な部分も多いが、実際の上演の様子を反映しており、資料的価値は決して低くない。1599年に刊行の「第二・四折本」(Second Quarto)は、シェイクスピア自身が手を加えた原稿を用いているとされ、現在我々が知る『ロミオとジュリエット』の原型となっている。

以上の「第一・四折本」「第二・四折本」に加え、シェイクスピアの死後、1623年に出版された初の全集「第一・二折本」(First Folio)の三種類が、『ロミオとジュリエット』の古刊本として重要視されており、その後に刊行される『ロミオとジュリエット』の底本となっている。
物語の成立と変遷

シェイクスピアの全戯曲のほとんどは、既存の物語やエピソード、詩などをベースに翻案したものである。シェイクスピアが『ロミオとジュリエット』を書くにあたって直接種本としたのは、アーサー・ブルックの物語詩『ロミウスとジュリエットの悲しい物語』(1562年、イギリス)と言われている。が、ブルックのこの作品が文学史に登場する過程は複雑である。

ロミオとジュリエットの物語の成立は、西欧の民間伝承やギリシアの古典物語に端を発している。中でも特に有名なのは、古代ローマの詩人オウィディウスがギリシアの神話に基づいて著した『ピュラモスとティスベ』で、シェイクスピアは『真夏の夜の夢』の中でも『ピュラモスとティスベ』の話題を取り上げている。

ナポリにて1476年に出版されたマスチオ・サレルニターノ作の小説集には、シェイクスピア作『ロミオとジュリエット』の原型と思われるエピソードが登場する。その作中には、修道士の仲介、計略が失敗する過程など、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』に近いモチーフが含まれている。ただし物語の舞台はシエーナで、恋人達の名前はマリオットとジアノッツァである。

ルイジ・ダ・ポルトが書いた物語(1530年、イタリア)では、舞台はヴェローナに、主人公二人の名もロメオとジュリエッタになっている。物語の筋や登場人物もシェイクスピアの作にかなり近づいているが、ダ・ポルト版の特筆すべき相違点としては、ロメオが毒を仰いで死ぬ直前にジュリエッタが目を覚まし、抱きしめ合いながら言葉を交わすシーンがある。

マッテオ・バンデルロは『小説集』(1554年、イタリア)のなかで、ロミオとジュリエットの物語を書いている。このなかには、パリスや乳母に該当する人物も現れており、ジュリエットが仮死の水薬を飲む過程も、シェイクスピアの作品にかなり近い。マッテオ・バンデルロの物語は、1559年にピエール・ボエステュオーによってフランス語訳され、出版された。ボエステュオーは、物語全体に修辞や感傷的表現を増やし、ジュリエットが仮死から目覚める前に、ロミオは死んでしまうように改訂した。

ボエステュオーの訳本は、数年後には英訳された。それが、先に挙げた『ロミウスとジュリエットの悲しい物語』と、ウィリアム・ペインターの散文『ロミオとジュリエッタ』(1567年、イギリス)の二つである。

ロミオとジュリエットの物語は、対立する二つのグループと、それに翻弄され悲しい結末へ至る恋人達という、時代や文化背景を越えた、普遍性のあるドラマ的構図を含んでいる。それ故に、古代の民間伝承から中世のシェイクスピアに至るまでの間、何度も翻案をされ続けてきた。

シェイクスピア作の『ロミオとジュリエット』は、彼の属していた宮内大臣一座の人気の演目として、観客達に受け入れられた。その後の時代でも、欧米を中心に、様々な演出家、俳優達によって、多くの劇場で何度も上演された。時にはオペラバレエに翻案されることもあった。上記で紹介した種本が、戯曲化されて上演されることもあった。現代においては映画などの分野でも、題材として取り上げられている。
翻案
ミュージカル

ウエスト・サイド物語 - アーサー・ローレンツ作、レナード・バーンスタイン音楽、ジェローム・ロビンズ演出、1957年初演、アメリカ(ロミオとジュリエットを現代アメリカに翻案したもの)

ロミオとジュリエット - ジェラール・プレスギュルヴィック作詞・作曲、2001年初演、フランス。日本では下記の翻訳版を上演。

ロミオとジュリエット (2010年の宝塚歌劇)…上記のミュージカルを翻訳した宝塚歌劇団による公演。2010年初演。初演の演出・潤色は小池修一郎

東宝版…上記のミュージカルを翻訳した男女俳優による日本公演。2011年初演。初演の演出・潤色は小池修一郎ロミオとジュリエット (2001年のミュージカル)#ロミオ&ジュリエットに詳述。


シェイクスピア作『ロミオとジュリエット』の初の続編作品として『ロミオとジュリエットその後/After Romeo & Juliet』が、2013年3月11日?14日、東日本大震災の復興支援チャリティー・ミュージカルとして岩手県陸前高田市、東京新宿、大阪梅田の3ケ所で、主演:川ア麻世紫とも、朗読:杉浦幸(脚本・音楽・プロデューサー: ジャンモンド/縄文土)により初演。サウンドトラック音楽映像作品DVD『RE:MONDE(地球再生)』が2013年4月12日、米国ロサンゼルスで開催の「MTVミュージック・ビデオ・アワード」公式イベントに出展された。

映画

ロミオとジュリエット - ジョージ・キューカー監督、1936年、アメリカ、R(ロミオ):レスリー・ハワード、J(ジュリエット):ノーマ・シアラー

ロミオとジュリエット - レナート・カステラーニ監督、1954年、イギリス、R:ローレンス・ハーヴェイ、J:スーザン・シェントル

ロメオとジュリエット物語 - レオ・アルンシュタム、レオニード・ラブロフスキー監督、1954年、旧ソ連、R:U・ジダーノフ、J:ガリーナ・ウラノワ


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