日本では同作品の翻訳本が1923年に出版された(宇賀伊津緒訳、春秋社)が、翻訳者の宇賀はrobotを「人造人間」と訳し、タイトルも『人造人間』とした。原典のままカタカナ表記した「ロボット」が普及したのは、第二次世界大戦以降であった。 起源とされる上記作品においては「ロボット」は「人の代わりに作業(労働)をさせることを目的に」、「人(の姿と自律行動)を模して」作られたものであるとされ、同作品が広範囲に流布したことにより当初はその意味で使われたが、その後次第に、各分野においてやや違う意味でも使われるようになった。 ヨーロッパでは1930年代中頃から『自動化』という意味で、高度に自動化されていれば人の形をしていないものでもロボットと呼ぶようになった。ドイツのカメラメーカーであるオットー・ベルニングは1934年に発売したモータードライブ内蔵カメラを『ROBOT』と命名した。 工業分野では明確に定義が定められるようにもなった。たとえばJISの「JIS B 0134」(1998年)では[8]「産業用ロボット」の定義を「自動制御によるマニピュレーション機能又は移動機能をもち,各種の作業をプログラムによって実行できる,産業に使用される機械。」とした。さらに「JIS B 0134」では産業用マニピュレーティングロボットに関する用語も定義された。平成18年のロボット政策研究会報告書では「センサ、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」と定義された[9]。 基本的に、ある程度の工程なり手順なりを自動的かつ連続的に行うものであり、単一の動作のみを行う装置(ベルトコンベアー、エスカレーターなど)や、絶えず人間が操作をする必要がある装置(リフト装置やエレベーター)、操縦者が搭乗する必要性があるもの(ブルドーザーやショベルカーなど)はロボットに含めないことが多い。 その一方で、人の形を模した(もしくは類似した)外観である機械装置であれば、まったくの手動操作・操縦であっても、範疇に含む場合があり、パワードスーツなどを含めた「人の形をした乗り物または作業用機械」についても同様に、一般的にはロボットと呼ばれている。 モーター等の動力が内蔵され機械的または電気的に人間の操作を伝達して動作するマニピュレーターも一種と見なされ、ロボットアームとも呼ばれる(医療ロボットのダ・ヴィンチや国際宇宙ステーションのカナダアーム2など)が、これらは厳密な定義による分類ではなく、多分に慣用句的用法である。 人間ではなく生物の動きを模した機械もロボットに含まれる[10]。 物体としては存在しないが、「人の代わりになんらかの作業を、ある程度の工程なり手順なりを自動的かつ連続的に(かつ効率的に)行うもの」という定義から、コンピュータ言語によるプログラムやソフトウェアも範疇に含まれる場合もある。例としてインターネットの情報を自動検索するソフトウエア「検索エンジン」などはロボット検索(命令(検索ワードの入力)するだけで、さまざまな結果・情報の取得まで自動で行なう)と呼ぶ。これらは機械的ロボットとの区別のために短縮形のボット(Bot)と呼ばれる(インターネットボット、ボットネットなど)こともある。 別の用法として、「機械的」という概念を人間にあてはめ、「自分で判断をしない、指示待ち的な人間」や「自分の意志ではなく、他人に操られて動く人間」を、やや侮蔑的に比喩として呼称することもある。英語においても、同様の比喩に用いるが、こちらも先に「オートマトン(オートマタ、機械人形)」が比喩に用いられていた。
語義の多様化
ロボットとロボットでない機械の線引き
歴史
古代の神話には、自律的に動く人型の人工物がいくつか登場する(ゴーレムやピグマリオン、タロースなど多数)。
紀元前4世紀、アルキタスは鳩型の空飛ぶ機械を製作したとも言われている。
紀元前4世紀、アリストテレスはオートマタによって人間の奴隷を廃止できる可能性について議論したとされる。
紀元前4世紀、「列子」に人型の機械人形を作成した人物に関する記述がある。「韓非子」にも空飛ぶ鳥型の人形の記述がある。
紀元前3世紀、クテシビオスは人形が周りを回る水時計を作製した。また、アレクサンドリアのヘロンやビザンチウムのフィロンは様々な自動機械の仕組みを発明した。
1088年、機械学者の蘇頌は人形が数時間ごとにチャイムを鳴らす大時計を作成した[11][12]。
12世紀、機械工学者のジャザリーは飲み物を給仕するものや、楽器を演奏するものを作製した。
12世紀、鎌倉時代の仏教説話集『撰集抄』に人間そっくりの生物的ロボットと言えるものの記述が登場し、これが日本のロボット史の最初とされる[4]が、これは人骨を集めて作った人形に魂を宿す魔術によって蘇るという話でありロボットと言えるのか意見の分かれるところである。
12世紀、アルベルトゥス・マグヌスがアンドロイドを作ったと記録されている。
13世紀、アルトワ伯ロベール2世
1495年、レオナルド・ダ・ヴィンチが、現代で言えばヒューマノイドとして捉えられる、詳細な設計図も含んだ一群のスケッチを作成する(ダ・ヴィンチのロボット)。
1533年、レギオモンタヌスは鷲型の空飛ぶ機械を製作した[13]。また、ジョン・ディーは空飛ぶカブトムシの機械を製作した。
1622年、からくり人形の竹田座が大阪に開業(1768年まで)[4]。
1739年、ジャック・ド・ヴォーカンソンがアヒルを模したオートマトンを開発する。
1770年、「トルコ人」と呼ばれたチェスを指すオートマタと詐称した物が作製される。
1773年、ピエール・ジャケ・ドローによる文字を書く人形が作製される。
1796年、細川半蔵が茶運人形などの構造を図解した「機巧図彙」(からくりずい、きこうずい)を著す。
1886年、ヴィリエ・ド・リラダンが「未来のイヴ」という小説でアンドロイドという語を初めて使ったとされる。
1921年、カレル・チャペックが「ロボット」の造語を使用し、その概念が広まった。
テレヴォックスとR・J・ウェンズリー(1928年)
1926年、ウェスティングハウス・エレクトリックのR・J・ウェンズリーが、3つの音程に反応してリレーの操作を行い、電話での遠隔操作も可能な装置「テレヴォックス
1927年、アンドロイドが登場する有名なSF映画『メトロポリス』が上映される。
1928年、世界初のヒューマノイドとされる「エリック」が作製される。
1928年、日本初のロボット[4]と認識されている「學天則」を、生物学者の西村真琴が製作した。