世界保健機関 (WHO) は「中程度に危険性がある」 (moderately hazardous) と分類している[7]。ヒトや他の哺乳類に対しては中程度の毒性だが、昆虫や魚などの水生生物にとっては猛毒である。この毒性の違いについては、脂溶性のロテノンはえらや気管からは容易に吸収されるのに対し、皮膚や消化器からは吸収されにくいということから説明される。
小児での最低致死量は143mg/kgである。飲み込むと嘔吐をもよおすため、ヒトでの死亡事例はまれである[8]。自ら意図して摂取した場合、致命的となりうる[9] 。
日光に当てると分解し、通常の条件では6日程度の寿命である[10]。
アメリカ合衆国農務省の国家有機農作物プログラム (National Organic Program) で非合成物と認められており、有機農法に使えるとされている[11]。 2000年、ラットにロテノンを注射するとパーキンソン症候群の発症の原因となる、と報告された。試験内容は、組織への浸透性を高める目的でジメチルスルホキシドとポリエチレングリコールをロテノンと混合し、5週間にわたって頸静脈への注射を続けるというものであった[12] 。 この研究は、ロテノンへの被曝がヒトにおけるパーキンソン症候群の原因となることを直接的に示すものではないが、環境中に存在する毒への継続的な接触が発病の可能性を高める、という考え方と矛盾しない[13]。 また、ラットの神経細胞(ニューロン)および小膠細胞の初代培養細胞は、酸化的損傷を受ける、あるいはドーパミン作動性ニューロンの死が起こるロテノン量が少ない(10nM以下)ことが示されている[14]。パーキンソン症候群により死ぬのは、脳の黒質のそれらの神経細胞である。 神経毒である1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン (MPTP) が(ラットではなくヒトなど霊長類で)パーキンソン症候群の原因となることは以前より知られており、これは複合体Iの電子伝達系を阻害し、黒質中ドーパミン作動性ニューロンを殺すことによるものとされている。この前例により、ロテノンは同様にパーキンソン症候群を引き起こす可能性があると考えられ、研究が行われた。MPTPとロテノンはともに脂溶性であり、血液脳関門を通過することができる。
パーキンソン症候群
参考文献^ ⇒毒物及び劇物取締法 昭和二十五年十二月二十八日 法律三百三号 第二条 別表第二
^ Ambrose, Anthony M.; Haag, Harvey B. (1936). “Toxicological study of Derris”. Industrial & Engineering Chemistry 28 (7): 815?821. doi:10.1021/ie50319a017
^ “ ⇒Useful tropical plants”. ASNOM (2008年1月2日). 2008年3月16日閲覧。
^ Peter Fimrite (2007年10月2日). “ ⇒Lake poisoning seems to have worked to kill invasive pike”. San Francisco Chronicle. 2008年4月11日閲覧。
^ National Toxicology Program - Rotenone at ntp.niehs.nih.gov