VP2はウイルス粒子のコアを形成し、RNAと結合する[33]。
VP3はコアの成分の1つで、グアニリルトランスフェラーゼと呼ばれる酵素である。VP3はキャップ形成酵素であり、mRNAの転写後修飾として生じる5'キャップの付加反応を触媒する[34]。キャップ構造は核酸を分解する酵素であるヌクレアーゼからウイルスmRNAを保護することで、mRNAの安定化に寄与する[35]。
VP4はスパイク状の突起としてウイルス粒子の表面に存在する外殻タンパク質である[26][36]。VP4は細胞表面の受容体と呼ばれる分子に結合し、ウイルスの細胞への侵入を引き起こす[37]。VP4は腸管に発現しているプロテアーゼであるトリプシンによって処理を受け、VP5*とVP8*に開裂する[38]。VP4はウイルスの病原性を決定する因子であり、またロタウイルスのP型を決定する因子でもある[39]。人の場合、ノロウイルスと同様[40]に、血液型抗原の分泌の有無とロタウイルスに対する感受性は相関関係にある。血液型抗原を分泌しない人はP[4]型とP[8]型に抵抗性である様で、このことは前述の2つの遺伝子型のロタウイルスが血液型抗原を受容体として利用することを示唆する[41]。
VP6はカプシドの主成分で内殻を構成する[26]。抗原性が高く、ロタウイルスの種の同定に用いられる[42]。また、VP6はA群ロタウイルス感染における検査に使用される[43]。
VP7はウイルス粒子の外殻を形成する糖タンパク質である[26]。構造に関わる他、VP7はG型を決定し、VP4と共にロタウイルス感染に対する免疫に関係する[27]。 NSP1は第5分節に由来する遺伝子産物で、非構造性のRNA結合タンパク質である[44]。また、NSP1はインターフェロンに誘導される応答を阻害し、ウイルスの感染から細胞を守る自然免疫系の反応を抑える。NSP1は、感染細胞におけるインターフェロン産生の増強と、隣接細胞によって分泌されたインターフェロンに対する応答に必要な重要なシグナル分子を、プロテオソームによって分解してしまう。分解の標的となる分子としては、インターフェロン遺伝子の転写に必要なIRF
非構造タンパク質
NSP2は細胞質内封入体に蓄積するRNA結合タンパク質で、ゲノム複製に必要な分子である[46][47]。
NSP3は感染細胞内でウイルスmRNAに結合しており、細胞のタンパク質合成を遮断する役割を持つ[48]。NSP3は宿主のmRNAからタンパク質を合成するために必要な2つの翻訳開始因子を不活化する。NSP3はまず、翻訳開始因子eIF4FからポリA結合タンパク質 (PABP) を外してしまう。PABPは3' ポリA尾部を持つ転写産物からの効率的な翻訳に必要な因子で、宿主細胞の転写産物のほとんどに結合している。次にNSP3はeIF2のリン酸化を促進することで、これを不活化する。ロタウイルスのmRNAはポリA尾部を欠いており、上記の2つの因子のいずれも翻訳に必要ではない[49]。
NSP4は下痢を引き起こすウイルス性のエンテロトキシンで、ウイルス性のエンテロトキシンとしては初めて発見されたものである[50]。
NSP5はA群ロタウイルスの第11分節にコードされる。感染細胞においてNSP5はヴィロプラズムに蓄積している[51]。
NSP6は核酸結合タンパク質で[52]第11分節にコードされており、位相の異なる (out-of-phase) オープンリーディングフレームから転写される[53]。
ロタウイルスの遺伝子とタンパク質RNA分節 (遺伝子)大きさ (塩基対)タンパク質分子量 kDa局在粒子あたりのコピー数機能
13302VP1125コアの頂点<25RNA依存性RNAポリメラーゼ
22690VP2102コアの内貼り120RNA複製酵素の活性化
32591VP388コアの頂点<25メチルトランスフェラーゼ、mRNAキャッピング酵素
42362VP487表面のスパイク120細胞への吸着、病原性
51611NSP159非構造05'RNAに結合、インターフェロン競合阻害
61356VP645カプシドの内殻780構造タンパク質で種特異的抗原
71104NSP337非構造0ウイルスmRNAの活性を増強し、細胞性のタンパク質合成を遮断
81059NSP235非構造0RNAのパッケージングに関わるNTPase