ピンク・フロイド在籍時の1970年、アルバム『肉体(ボディ)』を発表している。時折ウォーターズのソロ・デビュー作として紹介されるが、正確にはロン・ギーシン(イギリスの前衛音楽家)のアルバムにウォーターズがゲスト参加したもの。ちなみに、ピンク・フロイドの他メンバー3人も1曲だけ参加している。
アルバム『ザ・ウォール』の構想を練っていた1978年にギルモアとライトの2人はソロ・デビューを果たしているが、ウォーターズはバンドの楽曲制作に専念していたこともあり、自身のソロ活動は1984年になってから本格的に始まった。
その1984年、1stアルバム『ヒッチハイクの賛否両論』を発表。ゲストにはエリック・クラプトンやメル・コリンズという豪華メンバーが招かれた。主人公の見ている夢を同時進行で追っていくという内容のコンセプト・アルバムになっている。アルバム発売後のツアーでも、途中までクラプトンがギタリストとして参加していた。
1985年末、ウォーターズは「フロイドでやれることはすべてやり尽くした」としてバンドを正式に脱退する。当初はバンド自体の活動停止を目論んでいたが、レコード会社や他のメンバーから同意を得られず、デヴィッド・ギルモアを中心にした新生ピンク・フロイドが動き始めると、ウォーターズはこれに激怒し、訴訟沙汰にまで発展した。最終的にウォーターズを除いたピンク・フロイド名義のアルバム収益の一部を、ウォーターズも受け取るという形の和解に終わった。結局、ピンク・フロイドからウォーターズが脱退し、ウォーターズ抜きの新生ピンク・フロイドが存続するという結果になった。
1986年にはレイモンド・ブリッグズ原作のアニメ映画『風が吹くとき』のサウンド・トラック盤を手掛ける。ウォーターズの他にも、デヴィッド・ボウイ、ジェネシス、スクイーズらが参加した。
新生ピンク・フロイドとの対決新生ピンク・フロイド (1989年)
1987年、2ndアルバムとなる『RADIO K.A.O.S.』を発表。前作同様のコンセプト・アルバムであるが、ますますコンセプトは複雑になってきている。ちょうどこの頃、ウォーターズ抜きで活動を再開した新生ピンク・フロイドの復活作『鬱』と発売日程やツアー・スケジュールが重なり、激しいバトルを展開するが、アルバム売上・観客動員の双方で新生フロイド側の圧勝に終わる。
ピンク・フロイドのツアーは各地のスタジアムを超満員にするロングラン公演となったが、一方のウォーターズは地方では空席が目立つような客入りだった。この結果に大きなショックを受けたウォーターズは、1990年代後半まで10年近くライブ活動を封印することとなった。「ザ・ウォール」ライブ (1990年)
1990年には前年のベルリンの壁崩壊を記念した一大ライブ・イベント「The Wall Live In Berlin」を開催する。ザ・バンド、シンディ・ローパー、ジョニ・ミッチェル、スコーピオンズ、ヴァン・モリソンなど錚々たるメンバーが参加し、20万人もの観客を動員した。その後、ライブ・アルバムとビデオが発売された(現在はDVDでも再発)。
1992年、5年振りとなる新作『死滅遊戯』を発表。ゲストにジェフ・ベックが招かれ話題を呼んだ。湾岸戦争や天安門事件を題材に取り上げるなど、ウォーターズの作品の中でも特に社会的・政治的な色合いが濃い作品となっている。プレスからは「『ザ・ウォール』以来の情熱的な作品」と評され、久々に高い評価を得た。「このアルバムが200万枚売れたらツアーをやる」と公言していたが、結局ゴールドディスク止まりだったため実現しなかった。
1998年には映画『海の上のピアニスト』の主題歌として「Lost Boys Calling」を制作。巨匠エンニオ・モリコーネと共演した楽曲で、エディ・ヴァン・ヘイレンがギターで参加している。
沈黙から復活、ツアー活動へ2006年6月
1990年代は長く沈黙を続けていたが、1999年に突如ワールド・ツアーを行うと発表。2002年には自身3度目となる来日公演が実現した(1度目は1971年に、2度目は1972年にそれぞれピンク・フロイドとして来日)。このライブ・ツアーの模様を収録したライブ・アルバムとDVDも発売されている。過去のピンク・フロイド時代のレパートリーも多数披露されている。
2002年、これまでのソロ活動を集約したベスト・アルバム『フリッカーリング・フレイム』を発表した。1984年以降のソロ・キャリアをまとめたもので、フロイド時代の作品や1970年のアルバム『肉体』からは選曲されていない。また、新曲やカバー曲も収録されている。ちなみに、このベスト盤はワールド・ツアーを開催した国でしか生産・発売されていない限定盤である。
2004年、インターネットでのダウンロード販売のみで新曲「To Kill The Child/Leaving Beirut」の2曲を発売(日本のみCD化された)。イラク戦争やブッシュ政権、ブレア政権を批判した内容となっている。