アフメト・ダウトオール首相は「空・陸の国境侵犯には、誰に対してであろうと、あらゆる措置を取る権利がある。我々が戸惑うことはない」と述べた[2]。エルドアン大統領はロシア軍が空爆を行っているトルコに近いシリア北西部について「私たちと同じトルコ系民族が暮らす地域で、ISとは関係がない。親戚が爆弾で攻撃を受け、攻撃が激しさを増していることに強く抗議する」と述べた[3]。そして国連安全保障理事会と潘基文国連事務総長に書簡を送り、「国籍不明の戦闘爆撃機2機が自国領空を侵犯したことから1機を撃墜した」と説明し、自国の対応は正当だったと主張した[12]。30日、エルドアン大統領は、ロシアのプーチン大統領が「トルコはISから石油を密輸している」と指摘したことについて「証拠があるなら見せてもらいたい。証明されれば私はこの職にとどまっていられない」「テロ組織と商売をするほどトルコは下品ではない」と否定し、ダウトオール首相も12月1日に「根拠のない誹謗中傷だ」と反発した[13]。 バラク・オバマ大統領は「トルコには、自国の領土と領空を守る権利がある」「ロシアが、穏健な反政府勢力を攻撃していることが問題だ(ISの壊滅を掲げながら、アサド政権を擁護することを目的に反政府勢力への攻撃を行ってきたことが、今回の事態の背景にある)」と述べた上で、「トルコとロシアが直接話し合いを行い、事態がエスカレートしないようにすることが重要だ」と述べた[3]。30日、国務省のトルドー報道部長は、ロシア軍機がトルコの領空を侵犯したことを示す「トルコ側と我々独自の証拠がある」と明言した[14]。 フランソワ・オランド大統領は「重大な事態で残念なことだ。事態がエスカレートすることは避けなければならない。われわれが取り組まなければならないのはISとの戦いだ」と述べた[3]。 国際連合のデュジャリック報道官は「関係するすべての国に緊張を緩和するためのあらゆる措置をとるよう求める。こうした事態が繰り返されないためにも、原因の究明が必要だ」と述べ、ロシア・トルコ双方に冷静な対応を呼びかけた上で、「シリアでの空爆に関わる国々は、不測の事態を招かないよう、細心の注意が必要だ。とくに一般市民の巻き添えを避けるよう、最大限の配慮をしなければならない」と述べ、ISへの軍事作戦を進める各国に対して慎重な対応を呼びかけた[3]。 9時22分頃、ロシア軍機2機がトルコ南部の領空に侵入し、旋回して9時24分に再び領空内に2.52 - 2.13km入り込み、17秒間侵犯し、トルコ軍は1回目に11回、2回目に10回警告した後撃墜したと分析した[15]。また、ロシア軍は10月3・4日にもトルコ領空を侵犯し、トルコ政府はロシアに再三に渡り「次の領空侵犯は容認できない」と警告していたとしている[15]。そして「複数の加盟国の状況分析とトルコの情報が合致している」、「トルコが領土(領空)を保持することを支持する」とロシアに警告し、両国の直接対話による緊張緩和を求め、「NATOの境界での事態を注意深く追う」とロシアが報復などの行動に出ないよう警告し、さらにロシアの軍事行動について「ISがいない地域を標的にしている」と批判すると同時に「共通の敵はISだ。あらゆるISとの戦いを歓迎する」と軌道修正を求めた[12]。 この事件をきっかけにロシアは対トルコ経済制裁を発動し、トルコを苦しめた。さらにトルコはこれと前後してロシア以外の多くの国とも外交関係が悪化し、テロも頻発したため観光収入は激減した。2016年6月、追い詰められたエルドアンはプーチンに書簡で撃墜事件を謝罪し、ロシア兵士を殺害したトルコ人の訴追を約束することでロシアとの和解を図った。この様はプーチンとエルドアンを両国の伝統的君主になぞらえ「スルタンがツァーリに跪いた」と表された[16]。
アメリカ合衆国
フランス
国際連合
北大西洋条約機構
その後
本事件を主題とした映画
Небо(空)
(国際公開及び英訳題名:Mission "Sky")[17]2021年制作のロシア航空アクション戦争映画。監督はイゴール・ペトローヴィチ・ペトレンコ(ロシア語: Игорь Петрович Петренко Igor Petrovich Petrenko)。トルコ空軍所属のF-16によって、ロシア空軍機であるSu-24M型機が撃墜され、機長オレグ・ペシコフ(Олег Пешков)中佐(死後に「ロシア連邦英雄」追贈)と、副操縦士コンスタンチン・ムラフチン(Константин Мурахтин)大尉が射出座席により墜落する機体から脱出するも、シリア反体制派武装勢力による地上からのパラシュート銃撃によりオレグ・ペシコフ中佐が戦死、戦闘捜索救難作戦に参加したヘリコプターであるミル設計局製Mi-8が着陸後に前記武装勢力による銃撃を受けた結果、ロシア海軍歩兵隊員「アレクサンドル・ポズニッチ」(Александр Позынич / Alexandr Pozynich)が戦死、副操縦士コンスタンチン・ムラフチン(Konstantin Murakhtin) 大尉のみが敵地脱出に成功し生還した。
脚注[脚注の使い方]^ a b c d e f g h “トルコによるロシア軍機撃墜
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