ロシア語
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一方で、英語が通じることは少なく[23]、2005年時点の調査では、英語を話すことができると答えた人々の割合は9%にすぎず、ロシア語を話すことができると答えた人々の割合は中央アジア全体で80%を超えている[24]
現在、ロシア語は全人口の14.2%に当たる人々が第一言語として使用しており、その他の人々もその多くがロシア語を第二言語として使用しているなど異民族間の共通語・準公用語的な地位にある。
タジキスタン

タジキスタンではロシア語は帝政ロシア?ソビエト連邦時代の共通語であったため、現在でも第二言語として教育・ビジネス等で多く使用されている。ただし、2009年10月から国語法が成立し、公文書や看板、新聞はタジク語を用いることを義務づけられた[25]
また、ソビエト連邦の崩壊後に起きたタジキスタン内戦によるロシア人の大量国外流出によりロシア語の通用度が急激に低くなったが、現在では出稼ぎ先の大半はロシアであることと、高等教育にはロシア語習得が不可欠であることから、ロシア語教育も重要視されつつあり[25]、国民の間ではロシア語学習熱が強い。
キルギス

キルギスではロシア語が公用語キルギス語国家語とされている (憲法第10条第1項、第2項[26])。
2017年の国勢調査によると、母語話者の割合はキルギス語が55.2%、ウズベク語が4.7%、ロシア語が34.0%となっている。
独立以降公用語から除外されたウズベキスタンなどとは違い、引き続き公用語に制定されている。これは、国の中枢を占めていたロシア人などのロシア語系住民の国外流出(頭脳流出)を防ぐためであり、現在でも山岳部を除く全土で通用し、教育、ビジネスや政府機関で幅広く使用される。また医療用語などはロシア語にしか翻訳されていない単語があるため、ロシア語が理解できないと生活に苦労する場合もある。
首都ビシュケクとその周辺では多くの住民はロシア語を使って生活しており、キルギス語が上手に話せないキルギス人も少なくない。このため、現地生まれのロシア人はキルギス語を話せない人がほとんどを占めている。
その他の旧ソ連圏

エストニアの他に同じくヨーロッパ連合加盟国となったラトビアリトアニアなどの旧ソ連諸国でも、公用語にこそなっていないもののロシア系住民を中心に広く使われているがEUの公用語には加わっていない。2018年には、ロシアに対する反感や地位低下を背景に、先述したウクライナ、カザフスタンのほかにラトビアモルドバでロシア語離れの動きがあるとも報じられている[27]。その中ではカザフ語やアゼルバイジャン語の表記がキリル文字からラテン文字へ変更されたことが挙げられている。ただし、ソ連時代からロシア人の居住比率が10%程度だったリトアニアを除くと上記の各国でロシア系住民の比率は相対的に高く、特に中央アジアにおいては相対的に賃金水準の高いロシアの都市部へ出稼ぎ労働者が流出を続ける状況もあって、ロシア語が対ロシア、および地域諸国内の商業・行政面における共通言語(リングワ・フランカ)として現在でも使用され続けている。
イスラエル詳細は「イスラエルにおけるロシア語」を参照

1999年のデータではイスラエルへの旧ソ連からの移民は75万人にのぼり、ロシア語のテレビ・ラジオ放送局もある。イスラエルの公用語はヘブライ語だけだが公用語ではない英語にならび移民の影響でロシア語も広く使われている。
アメリカ合衆国

アメリカ合衆国におけるロシア語話者には2つの類型がある。1つは政治的な理由でロシア帝国やソビエト連邦から移住した人々やその子孫である「ロシア系アメリカ人」、そしてロシア統治時代のアラスカ住民の子孫である。

ロシア帝国ではロマノフ朝と非常に強い関係を持ったロシア正教会の主流派が絶大な権力を持ち、正教の反主流派である古儀式派モロカン派、そして少数民族となったユダヤ人が信仰を守るユダヤ教などを抑える体制ができていた。特にユダヤ人に対しては「ポグロム」と呼ばれる大量虐殺が一般民衆の手で頻発したため、1880年代以降にユダヤ人がアメリカ合衆国へ集団移住する例が始まった。彼らはニューヨークやサンフランシスコなどの都市部に集住した。

続いて、1917年のロシア革命により社会主義体制のボリシェヴィキ政権が誕生し、ロシア内戦を経て1922年にソビエト連邦が成立したことで、貴族、地主、教会関係者などの旧支配層、さらに政治的混乱と迫害をおそれた一般民衆が多くロシアを脱出し、その一部が新大陸である、既にロシア系コミュニティが成立していたアメリカ合衆国を目指した。これらの亡命者は「白系ロシア人」とも呼ばれ、多くの文化人も含まれていたことから、アメリカでのロシア語及びロシア文化の伝達を促進した。ソ連成立後も合法的な出国を認められる文化人は少数ながら存在し、彼らもに1933年にソ連との国交を樹立したアメリカ合衆国へ移住する例が生まれた。

第二次世界大戦後は東西冷戦が激化し、両陣営の中心となったソ連からアメリカへの移住は厳しく制限され、ごく少数の亡命者を除けば人口移動は起きなかったが、1970年代に入るとソ連政府は自国民のユダヤ人がイスラエルへ移住することを一定数の範囲で認めるようになり、その一部がアメリカへ再移住した。そして1980年代のペレストロイカ政策によるソ連の自由化、そして1991年のソビエト連邦崩壊によるロシア連邦の成立により、ロシア人の国外出国は容易となり、アメリカへの移住者が再び増加した。移住理由には、国内での民族対立を背景とした政治的亡命、より豊かな生活を求める経済移民、ソビエト体制での高い教育水準で育成された技術者のアメリカ企業による雇用などがあり、ロシアン・マフィアによる非合法移住、英語では「メールオーダーブライド(英語版)」とも呼ばれる、業者を介した簡易な国際結婚によるロシア人女性の渡米なども含まれる。

彼らもアメリカにおけるロシア語人口の増加に寄与し、21世紀に入ってその数は減少したとされるものの、2000年の国勢調査では70万人がロシア語話者と答え、ロシア系アメリカ人自体はアメリカ全体の人口の約1%である約300万人とされる。

一方、ロシア帝国は16世紀から進めたシベリア征服の結果、ベーリング海峡を越えて北米大陸の北西端にあるアラスカに到達していた。1784年にはアラスカ南部のコディアック島に根拠地を置き、1799年にアラスカ領有を宣言、1821年には正式に「ロシア領アメリカ」が成立していたが、ロシア帝国にとってアラスカはあまりに遠く、有効な植民地統治は困難だった。これは逆に、帝国内での迫害から逃れたい古儀式派にとっては好都合だった。1867年にアメリカ合衆国がロシアからアラスカを購入すると、ロシア帝国の役人や毛皮商などは本国へ帰還したが、古儀式派は帰国を拒否し、自らの信仰が保証されるアメリカ国民になることを選択した。その際に「ロシア語ネイティブのアメリカ人」が生まれ、さらにソビエト政権の成立後にアラスカとシベリアとの交流が断絶したため、アラスカのごく一部ではロシア帝国時代からの古儀式派信仰とロシア語が保存された。特にアラスカ本土、コディアック島から約250km離れたニニルチク(英語版)(露: Нинилчик)では下記の「方言」で記す通りに発音や性の構造などで現在の標準ロシア語との差異があるとされ、同地では20世紀末からモスクワ大学などの研究者が言語収集を行っている[28]
文字詳細は「ロシア語アルファベット」を参照

ロシア語では以下の33個のキリル文字が用いられている。音価は固有語におけるもののみに限って紹介するが、外来語の中では延長線上の軟音化・硬音化が行われる場合もある。またロシア語における母音弱化は非常に複雑な変化をもたらすため、この表では概ねそれに触れない。

文字文字の名称音価 (IPA)発音上の注意等
大小露文羅文カナ硬音軟音
Аааaア/a/Яに同じ
Бббэbeベ/b//b?/
Вввэveヴェ/v//v?/語末では [f] と発音。またしっかりしていない発音では特に母音に挟まれた в は「ワ」に似たような音価 [?] などで発音されることがある
Гггэgeゲ/g//g?/形容詞・代名詞の活用の語尾の中では в と読むものがある。また特定の感動詞教会スラブ語由来の言葉では伝統的に [?] で発音される
Дддэdeデ/d//d?/軟音は実際に舌端音の [d??z?] といったように発音される
ЕееjeイェЭに同じ/je/「イェ」に近い 外来語では不規則的に子音後で硬音化するものがある
ЁёёjoヨОに同じ/jo/「ヨ」に近い(母音の実際の音価は [?] )。多くの場合トレマ無表記で E と同じく書かれるが読み方には影響しない
Жжжэzheジェ/?/-そり舌気味で発音される [z]。日本語にないが、例えば中国語の「肉」(rou) の発音 [?o????] の [?] はこれに近い。

※正書法における жж や зж は伝統的に別の、唯一固有の文字を持たない基本音素 /??/ を表すものが多い(例: жжет [???t]、езжу [?je???]、但し разжать 等はこの音素を含んでいないため [r????at?])。20世紀以来に本来 [??] と読むべきところを「書かれたまま」 [??] と読むのが普及したため、この音素はロシア語話者の間では珍しくなっている。日本語に喩えて音を説明すると「家事」[ka??i] の [?] がやや長めに発音された感じになる。
Зззэzeゼ/z//z?/同じスラヴ語派ポーランド語と違って軟音化のときは [z?] になる程度であって、日本語の「家事」[ka??i] における子音 [?] にまでなることはない


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