1946年に早稲田大学の露文学科は再開され[6]、1949年にはソ連との友好促進を目指す民間団体として(旧)日ソ親善協会が設立されてロシア語教室が開催されるなど、戦後のロシア語教育は東西冷戦の影響も受けながら徐々に拡大された。1956年10月に日ソ共同宣言で両国間の国交回復が決まると同年11月からNHKラジオでロシア語講座が開講され、1957年には同年に日ソ親善協会から改称した日ソ協会系の日ソ学院によってロシア語能力検定試験が開始された。同年はスプートニク1号による史上初の宇宙飛行も行われ(スプートニク・ショック)、ソ連の高い自然科学力を背景にした理工系教員からの要望を受けて1962年には東京大学の教養学部に在籍する1年生と2年生の一部を対象にロシア語が第二外国語に加えられ[8]、ソ連政府からの独立性を維持した正教会系のニコライ学院を含め、高等・専門教育ではロシア語教育の機会が増えていった。
1960年代までは上記のようにロシア語の研究論文を読む必要がある自然科学系の研究者、共産主義を支持する人々を中心にロシア文化への関心は比較的高かった。しかしながら、レオニード・ブレジネフ体制下でのソ連文化の硬直化や科学技術の停滞、中ソ対立などにも影響された日本共産党や日本社会党などの日本の左派(革新)政党とソ連共産党の関係の混乱などを背景にソ連(ロシア)への関心は低下した。1985年にソ連で始まったペレストロイカによって経済交流や文化的関心は高まり、ロシア語学習者も一時的に増加したが、1991年のソ連崩壊前後の経済混乱はその熱を冷まし、1996年には19世紀からの伝統を持つニコライ学院が閉校に追い込まれた[9]。
その後は日ソ学院が改称してロシア語能力検定試験の主催を続ける東京ロシア語学院や、こちらも改称しながら同学院との友好関係を維持する日本ユーラシア協会の独自講座、ロシア連邦教育科学省の認定試験として日本対外文化協会が窓口となって行われているロシア語検定試験(ТРКИ)、各大学で続けられるロシア語・ロシア文学関係の講座、それにNHKの語学番組改革の中で2017年からEテレで始まった「ロシアゴスキー」やラジオ第2放送の「まいにちロシア語」の放送などで日本におけるロシア語教育が継続されている。しかしながら、放送大学におけるロシア語講座開設が2007年度限りで終了するなど、その退潮傾向は続いている。ただ、伝統的にロシアが強国であるフィギュアスケートでは浅田真央や羽生結弦などの日本選手もロシア人指導者のコーチを受けてきた事もあり、ここからロシア語への関心を持つ例も見られる。あるいは後述するアニメ・漫画などのサブカルチャー分野の人気作品内でロシア語が使用される例もあり、2020年4月に京都外国語大学がロシア語学科を新設するなど、一定の状況変化も見られる。
ロシアとの交流は北海道や日本海側の一部の地域を除くと盛んではなく、貿易額で示される経済的なつながりもロシアと同様の近隣諸国である中国や韓国、あるいは多くの面で緊密な関係を維持しているアメリカ合衆国より薄い。そのため、日本(特に西日本)においてロシア語の重要性は低い。英語や中国語、朝鮮語に比べて語学教材も恵まれておらず、改訂も進まない結果、内容がソ連時代のままである教材も少なくない。
しかし、上記のように第二次世界大戦後も日本とソ連は軍事的対立が続き、冷戦終結とソ連崩壊後も日ロ間では領土問題などでの対立が残ったほか、漁船操業や国際協力などでの実務的必要もある。したがって海上保安庁では第二外国語として中国語・朝鮮語と並びロシア語が学ばれており、自衛隊でも第二外国語として学ばれているほか、北海道の一部の高校では地理的に近いということもありロシア語の授業が行われている。さらに稚内や根室、紋別や新千歳空港ではロシア語表記の看板が見られるなど、隣国としてのロシアの姿が実感できる。同様に、新潟東港を通じての対ロ貿易の日本海側拠点である新潟市でも日本語の他英語とロシア語を併記した看板を見ることができる。新潟市ではこれ以外にもロシア語スピーチコンテストを行うなどしている。同じく対露貿易の多い富山県伏木富山港周辺でもロシア語表記の看板が見られ、新潟県や富山県でもロシア語の授業を開講する高校がある。また、2010年代に入り「ガールズ&パンツァー」「ゴールデンカムイ」[注 8]などロシア語の台詞が多い漫画・アニメーションの人気作品が制作され、ここからロシア語に興味を持った人が若者が生まれたという指摘もある。上記のNHKテレビロシア語講座「ロシアゴスキー」では2013年から放送が始まった放送シリーズで「ガールズ&パンツァー」に出演したロシア出身の声優であるジェーニャ[注 9]を起用している。
江戸時代まで遡る日ロ両国間の政治交渉、ロシア文学や共産主義思想の受容、宇宙工学を中心とした多くの自然科学分野における重要性の存在などの様々な理由から、今でも日本の多くの大学の第二外国語でロシア語を学ぶことができるものの、日本人(特に西日本在住者)でロシア語を学ぶ人々は少ない。その中で、近畿地方(関西圏)における日本海側の最重要港湾都市としてソ連時代から貿易拠点となっていた舞鶴市では北陸地方の各都市と類似したロシア語への接触環境があり、その舞鶴市がある京都府では2020年4月に京都外国語大学がロシア語学科を新設している[注 10][10]。
また、2022年3月31日 、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、外務省はウクライナ国内の地名をロシア語からウクライナ語に合わせた日本語表記に変更すると発表した。[11]例:キエフ (Kiev) → キーウ (kyiv)
このほかに、JR東日本の恵比寿駅でもロシア語の看板を撤去するというような事案が発生している。[12]
ロシア語の学科がある主な大学は以下の通りである。このうち1994年に設立されたロシア極東連邦総合大学函館校は他校とは違って日本の教育制度の中では専修学校として扱われ、外国大学の日本校として指定されている。一方、ロシアではウラジオストクにある極東連邦大学の正式な分校として扱われ、本校への留学も含んだロシア語教育が重点的に行われている。 ウクライナ東部や南部ではロシア語が広く使われている。また、ウクライナ語とロシア語の社会方言が混じった口語の混合言語であるスルジク(суржик)も使われている。ウクライナではソ連崩壊後、言語問題がしばしば発生している。2014年にはロシア語話者の多いクリミア共和国とセヴァストポリ特別市が独立を宣言し、それらのロシアへの編入の宣言に至った(クリミア危機)。それと同時に東部のドンバスでも紛争が発生し、一部地域がドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国として事実上独立した。2022年にロシアによるウクライナ侵攻に発展し、同年9月30日にロシアはドネツク・ルガンスクの両共和国及びザポロージェ州とヘルソン州の併合を宣言した。
札幌大学
筑波大学
上智大学
津田塾大学
東京外国語大学
創価大学
新潟国際情報大学
静岡県立大学
中京大学
富山大学
大阪大学
同志社大学
京都産業大学
京都外国語大学
神戸市外国語大学
ロシア極東連邦総合大学函館校
ウクライナ