ロサンゼルス級原子力潜水艦
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この結果、スキップジャック級以来の涙滴型船型は放棄され、完全な魚雷型(円筒型)を採用している。この船型は、涙滴型よりも抗力が小さいので高速を出せる一方で、操艦の面でやや問題があるとも言われている。

構造強度はパーミット級やスタージョン級に比べていくらか削減され、セイルや潜舵も耐氷能力がない。この結果、潜入深度が減少したほか、氷海行動能力を含めた情報収集任務に対する適合性が損なわれることとなった。これを改善するため、フライトIIIでは氷を割って浮上できるように潜舵をセイル側面から艦首(引込み式)に移設し、氷海下でのオペレーション能力が追加された。

水上艦用原子炉を改良したゼネラル・エレクトリック社製S6G型 原子炉は、ナーワルにおける自然循環型原子炉の成果を一部採用し、低出力運転時にはポンプを停止したままでも運転可能である。

これらの設計上の努力により、放射雑音レベルは、ほぼベンジャミン・フランクリン級弾道ミサイル潜水艦あるいは通常動力型バーベル級にほぼ等しく、静粛性でスタージョン級を上回る(-15db)と同時に、スキップジャック級を上回る速度性能(+2kt)を手に入れた。その一方、従来の原子炉よりも大型のS6G型の採用により、予備浮力は非常に少ないものとなり、発展性は非常に限られたものとなった。それでも本級は、増大する任務と進歩する技術に対応して、装備の改修を進めてきたが、最終3艦においては、ついに設計上のマージンを完全に食い潰してしまったと言われている。
C4ISRシステム

本級は、統合ソナー・システムを装備した最初の攻撃型原子力潜水艦である。その機種はBQQ-5Dであるが、フライトIIIにおいては、TEWA機能およびUBFCSをも統合したBSY-1統合戦闘システムのサブシステムとなっている。BQQ-5Dは、下記のようなソナーの集合体である。
艦首装備ソナー
直径15フィートの球形アレイを採用し、アクティヴとパッシヴの両用である。出力は75,000ワット。
BQG-5D フランク・アレイ・ソナー
長波のパッシヴ・ソナー。
BQS-15 近距離短波ソナー
氷塊・機雷探知用
TB-16D 曳航ソナー
通常の曳航ソナーで、直径89mm、全長792.5mのケーブルと、これによって曳航される73.15mのソナー・アレイによって構成される。
TB-23 曳航ソナー
新型の「薄線」型曳航ソナーで、より長距離の探知に使用される。実際にはBQQ-5のサブシステムではなく、BSY-1に直結されている。

BQQ-5によって目標を探知した後の処理、つまり脅威度判定から攻撃指令、攻撃の実行については、フライトIではその大部分がオペレーターに任されていた。ただし、水中攻撃指揮装置(UBFCS)としては、はじめて完全に自動化されたMk 117を使用しており、従来使用されてきたアナログ式のものよりも大幅に効率化されていた。

その後、Mk 36 TWS(トマホーク武器システム)の配備に伴い、Mk 117は、トマホークの射撃管制能力を付加されたCCS Mk 1(Combat Control System)に発展した。また、フライトIIIより、BSY-1統合戦闘システムのサブシステムとしてのCCS Mk 2が搭載されるようになっている。
魚雷発射管パサデナ(Pasadena、SSN-752)の魚雷発射管室。右手上段および下段にMk 48魚雷が配置されている

本級は、従来のアメリカ海軍攻撃潜水艦と同様、4門のMk 67 533mm水圧式魚雷発射管を備えている。これらは、Mk 48 ADCAP魚雷サブロック対潜ミサイルサブ・ハープーン対艦ミサイルトマホーク巡航ミサイル、各種機雷を射出することができる。弾薬庫の容量は、533mm魚雷に換算して22基分であり、また、発射管内に4基を搭載できることから、合計兵装搭載数は26基となる。なお、機雷は、533mm魚雷1基分のスペースに2基を収容することができる。

魚雷発射管4門という搭載数は、アメリカ海軍の攻撃型潜水艦としては標準的な搭載数であるが、特に対艦・対地ミサイルを使用するとき、同時に投射できる火力が少ないことが問題視された。このことから、本級は、のちにミサイル専用の垂直発射装置を搭載することとなった。
ミサイル垂直発射装置VLS、上部ハッチを開口した状態

ロサンゼルス級のフライトII以降は、ミサイル発射用の垂直発射装置(VLS)を12セル[注 8]搭載しており、これにより、対水上・対地火力投射能力は大幅に強化されることとなった。

この垂直発射装置からは、TLAM(トマホーク対地ミサイル)、TASM(トマホーク対艦ミサイル)、サブ・ハープーンを運用することができるが、対水上火力としてはMk 48 ADCAP 魚雷が主用されており、また、TASMとサブ・ハープーンの搭載が中止された現在、これは事実上TLAM専用の発射装置となっている。
比較表

SSN各型の比較バージニア級シーウルフ級ロサンゼルス級リプスコムナーワル
Block V -Block I - IV準同型1,2番艦フライトII/IIIフライトI
船体水上排水量不明7,568 t7,460 t6,255 t - 6,330 t6,080 t - 6,165 t5,813 t4,450 t
水中排水量10,400 t7,800 t12,139 t9,150 t7,102 t - 7,177 t6,927 t - 7,012 t6,480 t5,350 t
全長140,4 m114.8 m138 m107.6 m109.73 m111 m95.91 m
全幅不明10.4 m12.2 m10.1 m9.8 m11.46 m
吃水不明9.3 m10.9 m10.67 m9.75 m9.8m不明8.8 m
主機機関原子炉+蒸気タービン
方式GTTE
原子炉GE S9GWEC S6WGE S6GWEC S5WGE S5G
出力40,000 shp45,000 shp30,000 shp12,500 shp17,000 shp
水中速力不明推定34 kt25 kt35 kt31 kt23 kt25 kt
兵装水雷533mm魚雷発射管×4門660mm魚雷発射管×8門533mm魚雷発射管×4門
ミサイルVLS×40セルVLS×12セル―VLS×12セル―


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