レーダー
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雨や雪などの反射波によって物標の識別が困難なときに用いる[13]
表示装置詳細は「レーダー・ディスプレイ(英語版)」を参照

レーダーの指示方式は、アナログ信号処理方式、デジタル信号処理表示方式、両者の合成表示方式の3つに大別される[14]ディスプレイは「指示器」や「表示部」とも称され、アナログ表示の時代には、PPIスコープ方式のブラウン管(CRT)が主流であった[15][16]。現代は多くでデジタル方式で、液晶ディスプレイ(LCD)が用いられ[17]、その画面サイズなどの呼び方(「○○インチ」等)も他の機器と変わらない[17]
アナログ表示

アナログビデオの表示は、その画面表示の更新がアンテナの動きおよび電波の発射と同期して行われるため、画像繰り返し速度(リフレッシュレート)が低くなり、CRTの残光性への依存が大きく、明るい場所で画像を見ることが困難になるという問題があった[14]
PPIスコープ
PPIスコープ(Plan Position Indicator scope、Pスコープとも)は、レーダーの位置を基点として、アンテナビームの回転に同期させて放射状に掃引を行なって、受信した信号を表示するものである
[14]。すなわち、レーダーの位置を中心として、レーダーで捉えられた目標が鳥瞰的に表示されることから、(下で説明するAスコープ、Bスコープ、Eスコープなどと比べて)直感的に理解しやすいという大きなメリットがあった[14]。PRIスコープでは、レーダー波の波長が長いと近接した複数の対象物が同一の光点として表示されてしまうため、多数の目標を捕捉する際の分解能を高めるためには、レーダー波長の短波化が必須。[注 2]
Aスコープ
縦軸に受信信号強度、横軸に距離を取って波形を表示するものである(
心電図のようなイメージ)。開発初期から用いられてきたが、現在でも受信信号強度の測定や信号の弁別のためのオシロスコープ表示として用いられている[14]。ある一定距離の目標物にアンテナを向ける場合、アンテナの角度が目標物に近づくにつれ、波形の山が大きくなっていき、方向が完全に一致すると波形が極大値(ピーク)を表示する。Aスコープでは、レーダー送信機のアンテナの方向は別に表示されるため、他方向に多数の対象物が存在する場合、測定結果を一覧できない。[注 3]
Bスコープ
横軸に方位、縦軸に距離を示す方式
[14]。この方式はAスコープでは比較的読み取りが明瞭な波形の強度(ピーク)情報が、PPIスコープに類似した光点の強弱のみで表されるので、正確な読み取りにはやや経験を要する。[注 4]
Eスコープ
PPIスコープやBスコープが水平面の情報を表示するのに対して、垂直面の表示として用いられるのがEスコープである。横軸に距離、縦軸に仰角を表示するものと高さを表示するものがあり、後者はRHI(Range Height Indicator)と称される
[14]

Aスコープの一例。40マイル以内に複数の目標が存在する波形であるが、アンテナを動かし、その角度情報を元に推測をしなければ正確な方角と、二次元的な情報が得られない。

Bスコープの一例

A、B、Eスコープの一例。

PPIスコープ(1980年)

PPIスコープの動作イメージ(イラスト動画)

デジタル表示

レーダービデオをデジタル処理し、更にコンピュータで相関処理、識別処理などを行った結果から、目標のシンボル表示、高さおよび速度の数字表示などを高いリフレッシュレートで表示する方法である[14]。スキャナー(送信アンテナ)が1回転するたびに得られる情報は機器内の記憶装置に貯えられ、1画面ごとに書き換えられる方式を採用しており、それにより様々な機能を表示できる[17]。現代のレーダーの表示画面は、ほとんどがデイライト・タイプ(: daylight type)と呼ばれるものであり、通常の昼間光のもとでも見られるようになっている[17]

トルコの船舶 Tamer Kiranのレーダー画面(2007年)。日本無線製。

ワシントン大学の調査船の操舵室のレーダーモニター(2008年)。古野電気製。

現代の船舶で一般的なナビゲーションシステムのレーダー表示(2006年)

強襲揚陸艦タラワ」の航空管制用レーダーの画面(2007年)

1990年代の、空港の航空交通管制レーダーの画面

航空交通管制レーダーモニター(2013年ワシントン・ダレス国際空港

ボーイング737のナビゲーション画面の気象レーダー表示(2011年)

気象レーダーの画面(2022年。テキサス州竜巻。)

レーダー方程式

レーダーと目標との関係は、レーダー方程式(radar range equation)によって表される。これはレーダーの受信電力(受信機に到達する信号エネルギー)を、レーダーの送信出力とアンテナ利得、レーダー反射断面積、送信波長(周波数)、および目標までの距離の関数として計算するものである[18]。 S E = P G 2 T λ 2 σ ( 4 π ) 3 R 4 {\displaystyle SE={\frac {PG^{2}T\lambda ^{2}\sigma }{(4\pi )^{3}R^{4}}}} S E {\displaystyle SE} :レーダーの受信信号エネルギー [Wsec]
P {\displaystyle P} :平均送信電力(尖頭電力×デューティサイクル)[W]
G {\displaystyle G} :アンテナ利得(非dB形式)
λ {\displaystyle \lambda } :送信信号の波長 [m]
σ {\displaystyle \sigma } :レーダー反射断面積 [m²]
T {\displaystyle T} :パルスが目標を照射する時間 R {\displaystyle R} :目標とレーダーとの距離

また、パルスレーダーのようにアンテナを共用している場合のレーダー方程式は次式によって与えられる[19]。これはレーダー受信機内の受信電力を考えたものであり、レーダー受信電力方程式(radar received power equation)と称するべきものである[20]。 P r = P t G 2 λ 2 σ ( 4 π ) 3 R 4 {\displaystyle P_{r}={\frac {P_{t}G^{2}\lambda ^{2}\sigma }{(4\pi )^{3}R^{4}}}} P r {\displaystyle P_{r}} :レーダーの受信電力
P t {\displaystyle P_{t}} :レーダーの尖頭電力
G {\displaystyle G} :アンテナ利得
λ {\displaystyle \lambda } :波長 R {\displaystyle R} :目標とレーダーとの距離

水平線上の探知可能距離の方程式探知可能距離(Km)=4.12×(√自分の高度(m)+√相手の高度(m))


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