レーザー
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レザーとも表記される場合もある[1]

レーザーの発明により、非線形光学という学問が生まれた。発生する電磁波は、可視光とは限らない。紫外線X線などのより短い波長、また赤外線のようなより長い波長の光を出す装置もある。ミリ波より波長の長い電磁波を放射するものはメーザーと呼ぶ。
原理

レーザー光は、コヒーレント光を発生させるレーザー発振器を用いて人工的に作られるである。

レーザー発振器は、キャビティ(光共振器)と、その中に設置された媒質、および媒質をポンピング(電子をより高いエネルギー準位に持ち上げること)するための装置から構成される。キャビティは典型的には、2枚の鏡が向かい合った構造を持っている。半波長がキャビティ長さの整数分の一となるような光は、キャビティ内をくり返し往復し、定常波を形成する。媒質はポンピングにより、吸収よりも誘導放出の方が優勢な、いわゆる反転分布状態を形成する。すると、キャビティ内のは媒質を通過するたびに誘導放出により増幅され、特に光がキャビティに共振し定常波を形成している場合には再帰的に増幅が行われる。

キャビティを形成するのうち一枚を半透鏡にしておけば、そこから一部の光を外部に取り出すことができ、レーザー光が得られる。外部に取り出したり、キャビティ内での吸収・散乱などによりキャビティ内から失われる光量と、誘導放出により増加する光量とが釣り合っていれば、レーザー光はキャビティから継続的に発振される。

媒質は反転分布を形成するため、三準位モデル四準位モデルなどの量子力学的エネルギー構造を持っている必要がある。媒質のポンピングは、光励起、放電、化学反応、電子衝突など、さまざまな方法で行われる。光励起を用いるものの中には他のレーザー光源を用いる方法もある。また、半導体レーザーでは、ポンピングは電流の注入により行われる。

1958年C・H・タウンズA・L・ショウロウによって理論的に実現の可能性が指摘され、1960年5月16日T・H・メイマンルビー結晶によるレーザー発振を初めて実現した。
特徴
可干渉性(コヒーレンス)

レーザー光を特徴づける性質のうち最も重要なのは、その高いコヒーレンス(可干渉性)である。レーザー光のコヒーレンスは、空間的コヒーレンスと時間的コヒーレンスに分けて考えることができる。

光の空間的コヒーレンスは、光の波面の一様さを計る尺度である。レーザー光はその高い空間的コヒーレンスのゆえに、ほぼ完全な平面波球面波を作ることができる。このためレーザー光は長距離を拡散せずに伝播したり、非常に小さなスポットに収束したりすることが可能になる。この性質は、レーザーポインターや照準器、また光ディスクのピックアップ、加工用途、光通信など様々に応用する上で重要である。空間的にコヒーレントな光は、白熱灯などの通常光源と波長オーダーの大きさを持つピンホールを用いることでも作り出すことが出来る。しかし、この方法では光源から放たれた光のごく一部しか利用できないため、実用的な強度を得ることが難しい。空間的にコヒーレントな光を容易に実用的な強度で得られることがレーザーの最大の特長のひとつである。

一方、時間的コヒーレンスは、光電場の周期性がどれだけ長く保たれるかを表す尺度である。時間的コヒーレンスの高いレーザー光は、マイケルソン干渉計などで大きな光路差を与えて干渉させた場合でも、鮮明な干渉縞を得ることが出来る。干渉縞を得ることの出来る最大の光路差をコヒーレンス長と呼び、時間差をコヒーレンス時間と呼ぶ。レーザーの時間的コヒーレンスは、レーザーの単色性と密接な関係がある。一般に、時間的コヒーレンスの高い光ほど単色性が良い。特に、完全な単色光の電場は一定の周波数の三角関数であらわされるので、そのコヒーレント長は無限大である。高い時間的コヒーレンスを持つように配慮して設計されたレーザーは、ナトリウムランプなどよりもはるかに良い単色性を示す。レーザーの時間的コヒーレンスはレーザージャイロのように干渉を利用した応用において重要である。また、レーザーの単色性は、レーザー冷却などの用途に重要である。
パルス発振

レーザーのもうひとつ重要な特徴は、ナノ秒?フェムト秒程度の、時間幅の短いパルス光を得ることが可能な点である。チタンサファイヤレーザーの高次高調波発生などではアト秒の時間幅も実現されている。レーザー以外の光パルス光源としてフラッシュランプ(キセノンランプ)、LEDなどがあるが、レーザーに比べて出力が低い。

パルスレーザーは短い時間幅の中にエネルギーを集中させることが出来るため、高いピーク出力が得ることができる。レーザー核融合用途などの特に大がかりなものでは、ペタワットクラスのレーザーも使われる。また時間幅の短いレーザーパルスは、時間とエネルギーの不確定性関係のため広いスペクトル幅を持つ。パルスレーザーは、時間分解分光非線形光学、またレーザー核融合などの分野で重要な道具である。レーザーを用いた応用物理研究分野などでは、ボーズアインシュタイン凝縮へパルスレーザーを使用することで、数論上の方程式を物理実験具現化することに成功している。フェムト秒のパルス光を発振させる為に連続光からパルス発振へ変換させるミラー(共振器内部の鏡)に半導体可飽和吸収ミラー(SESAM)を用いたレーザーも使用されている。

高分離解析時間、高分解性能の利得を応用しながら必要な出力を保つため、フィードバック制御機能が追加されないシンプルな媒質として欧米ではSESAMを用いたシンプルなレーザーへのさらなる応用と研究が期待されている。連続光を反射せず、ある程度保持して溜めてから出すというSESAMの特性はパルスレーザーに物理的消耗変化として現れる。この場合、放熱管理がレーザー自体の寿命と利得を左右する。
歴史
基盤となる理論

1917年、アルベルト・アインシュタインの論文 Zur Quantentheorie der Strahlung(放射の量子論について)がレーザーとメーザーの理論的基礎を確立した。アインシュタインは、電磁放射の吸収、自然放出、誘導放出についての確率係数(アインシュタイン係数)に基づいて、マックス・プランクの輻射公式から新たな公式を導き出した。

1928年、Rudolf W. Ladenburg は誘導放出および負の吸収という現象が存在することを確認した[2]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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