レンドリース法
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この時期になると、主要な交戦国は前線で使われる戦闘機戦車のような兵器についてはかなりの部分自給できていたが、このような直接戦闘用の兵器に関してもレンドリースは有用な支援をし、さらにレンドリースによる兵站支援、トラックジープ上陸用舟艇、そして特にダグラスC-47輸送機[要出典]は大きな貢献をした。アイゼンハワーは「二次大戦の勝利に貢献した四つの兵器はバズーカ、ジープ、原子爆弾、C-47である(Four things won the Second World War?the bazooka, the Jeep, the atom bomb, and the C?47 Gooney Bird.)」と評した。

援助については、戦争がもたらした経済のゆがみを考慮するとよく理解できる。多くの交戦国は戦争に本質的ではない物資の生産をかなり削減し、兵器の生産に集中した。これは必然的に軍および軍需・産業経済の一部にとって必要とされる関連した製品の不足を招いた。

例えば、ソ連は鉄道輸送に強く依存していたが、兵器生産に必死であったため、戦争期間中には製造途中だった92両しか機関車を生産しなかった。この点で、アメリカの支援した1,981両の機関車の意味が理解できる。ちなみに寄せ集めではあるもののソ連は開戦前に約2万5,000両の機関車を保有していた。[5]同様に、ソビエト空軍は18,700機の航空機を受け取り、これはソビエトの航空機生産の14 %、軍用機の19 % を占めていた[6]

赤軍の戦車のほとんどはソ連製であったが、アメリカからM3軽戦車M3中戦車M10駆逐戦車などが貸与され、特にM4中戦車はその性能信頼性の高さからエリート部隊である親衛戦車師団(機甲師団)に優先配備された。イギリス(一部カナダ製)からはバレンタイン歩兵戦車マチルダ歩兵戦車チャーチル歩兵戦車などが貸与され、特にイランルートで送られて来たものは、自国製戦車の補給が滞った1942年の東部戦線南部で貴重な戦力となった。兵站も何十万両ものアメリカ製トラックによって支援されており、1945年の時点で赤軍に配備されたトラックの、ほぼ3分の2はアメリカ製であった。ジープダッジ 3/4 トントラック(WC シリーズ)、スチュードベーカー 2.5 トントラックは、独ソ戦において両陣営が使用した同クラスの輸送車輌の中では、最良といえるものであった[7]。また電話線、アルミニウム缶詰SPAMポークビーンズ)、毛皮ブーツなども同様に重要で、特に後者の供給はモスクワ冬期防衛にとって重要な利点となった。

なおレンドリースで供給された兵器は生産性向上とコスト削減のためにアメリカ本国仕様よりもデチューン(性能低下や簡略化)された物が多い。例えばM2/M3ハーフトラックはレンドリース用に装甲板の材質を落として構造を簡素化した仕様の M5 / M9 が製造され、M4中戦車もエンジンの評判の良かったA3型はアメリカ陸軍に優先供給して他のタイプがレンドリースに回されたが、それでも当時のアメリカの優れた工業生産技術により他連合国の同種兵器に比べて遙かに信頼性が高く、おおむね高評価を得ていた。しかしP-38戦闘機のように、ターボチャージャーを廃止するなどのデチューンによる性能低下が著しく、不採用となった兵器もある。

レンドリースは、特にヨーロッパ戦線においてアメリカに参戦をもたらす重要な一因となった。ドイツがアメリカに対して1941年12月11日に宣戦布告するに際して、ヒトラーはレンドリースプログラムとそれが連合国の戦争を支援する重要性について言及している。
返済

アメリカ政府が予期せず突然1945年9月2日にレンドリースプログラムを打ち切った時点で、膨大な物資がイギリスにあるか、または輸送中であった。イギリスは終戦直後の時期、これらの物資を必要としていた。結果として米英借款協定(Anglo-American loan)が結ばれた。レンドリースの物品はイギリスに1ドル当たり約10セントという底値で売却され、その額は10億7,500万ポンドに上った。返済は2 % の金利で50年間に渡って行われることになった[8]。8,330万ドル(4,250万ポンド)の最後の返済の期限は2006年12月31日で(それまでに何回か返済は延期されていた)、実際にはその年の最後の営業日である12月29日に返済された。この最後の返済後、イギリスの経済担当副大臣のエド・ボールズ(Ed Balls)はアメリカの戦時支援に公式に感謝を表明した。
イギリスの債務額と返済条件

もともとの債務額と返済条件(繰り延べを含む)は、イギリス下院2002年2月28日および上院の2002年7月8日の議論で確定されている。議事録には以下のように記録されている。

ボブ・スピンク(Bob Spink): 財務大臣に、第二次世界大戦中のレンドリース融資でイギリスが返済すべき未払いの債務がどれくらいあるかについて質問します。
ルース・ケリー(Ruth Kelly): それについては以下の通りです。協定に基づき、融資の返済は1950年に開始され、50年間で毎年1回返済されます。しかしながら協定では、国際的な為替レートの状況やイギリスの外貨準備金準備の状況の必要に応じて元金・金利共に返済を繰り延べすることができます。イギリスはこれまで6回返済を延期してきました。これにより、これ以上返済の延期のオプションを実施しなければ、アメリカ合衆国政府に対する返済は2006年12月31日に完了する予定です。2001年3月31日現在、アメリカ合衆国から1945年に提供された融資のうち、元金243,573,154ポンド(この日の為替レートで346,287,953ドル)が未返済です。政府はこの全額を返済することで1945年の協定の義務を履行するつもりです。

同様に上院の2002年7月8日の議事録:

ゴードン・キャンベル(Gordon Campbell): この返済は、アメリカ合衆国が弾薬、車輌、食糧などその他の我々が戦争末期にとても必要としていた物資を供給したレンドリースの枠組みの一部ですか?
アンドリュー・マッキントッシュ(Andrew McIntosh): レンドリースについては、アメリカが物資を提供した戦争全期間について私は言及しました。しかしながら、我々の現在の負債はこれとは異なり、1945年12月に交渉されたものです。
デービッド・ストッダート(David Stoddart): 融資の総額が正確にいくらであるか、今までに元金と金利でいくら返済しているかお教えください。
アンドリュー・マッキントッシュ: 融資はもともと10億7500万ポンドで、そのうち2億4400万ポンドが未返済です。融資の枠組みは金利2%となっています。したがって、現在我々はこの融資に関して支払っている金利より、我々のドル資産からより多くの収益を受け取っています。これは我々にとってとても有利な融資です。
語録

フランクリン・ルーズベルト大統領は、この論争の的となる計画に対して国民の同意を確実にしようと努め、国民とメディアに対してこの計画は火事消すために隣人にホースを貸すようなものであると説明した。大統領はプレス会議で「このような危機に際して私はなにをすべきだろうか? 私は隣人に対して『お隣さん、このホースは15ドルしました。15ドル払ってください』とは言わないだろう。私は15ドル払ってもらうのではなく、火事がすんだ後にホースを返してもらえばよいと思う」と述べた。
ソ連に対する援助物資1945年ワルシャワにて、レンドリースプログラムの一環としてポーランド軍が使用しているジープ

アメリカの対ソ連援助は以下の5つの期間に分けられる。

レンドリース開始前: 1941年6月22日 - 1941年9月30日で支払い

第1協定期間: 1941年10月1日 - 1942年6月30日、1941年10月1日署名

第2協定期間: 1942年7月1日 - 1943年6月30日、1942年10月6日署名

第3協定期間: 1943年7月1日 - 1944年6月30日、1943年10月19日署名

第4協定期間: 1944年7月1日から開始され、1945年4月17日に署名され公式には5月12日に終了したが、援助は日本に対する戦争の期間(1945年8月8日ソ連対日参戦)「マイルポスト」(milepost)合意に基づいて日本が降伏する1945年9月2日まで続けられ、1945年9月20日に全ての対ソ連レンドリースプログラムが終了した。

レンドリースプログラム開始から1945年9月30日までの間にソ連に対して出荷された軍需物資の合計を以下の表に示す。航空機14,795機
戦車7,056輛
ジープ51,503輛
トラック375,883輛
オートバイ35,170台
トラクター8,071台
銃8,218丁
機関銃131,633丁
爆発物345,735 トン
建物設備10,910,000 ドル
鉄道貨車11,155輛
機関車輛1,981
輸送船90隻
対潜艦105隻
魚雷艇197隻
舶用エンジン7,784基
食糧4,478,000 トン
機械と装備品1,078,965,000 ドル
非鉄金属802,000 トン
石油製品2,670,000 トン
化学物質842,000 トン
綿106,893,000 トン
皮革49,860 トン
タイヤ3,786,000
軍靴15,417,001 足

輸送は北極海の輸送船団ペルシア回廊、太平洋ルートで行われた。


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