1930年から1990年代まで、例外はあるが、レタラーはペンシラーが作成した原稿の上でレタリングを行っていた。インカーによるペン入れはレタラーの作業終了後に行われた。「コミックのシルバーエイジ(英語版)」と呼ばれた1960年代、DCコミックスのペンシラーは「吹き出しと擬音の下描き」までを描くよう求められており、レタラーはそれをなぞった。熟練したレタラーはコミックの描き方のスタイルに合わせてレタリングを行うことができた。[8] 1980年代に普及したコンピュータ、特にApple製品がデスクトップ・パブリッシング革命の幕を開いてから、コミックのレタリングも徐々に影響を受け始めた。最初にコンピュータを用いてレタリングを行い始めた一人にライター兼アーティストのジョン・バーン
コンピュータによるレタリング
コンピュータ・レタリングの使用が本格化し始めたのは、1990年ごろにコミックブック専用フォント「ウィズバン (Whizbang)」(スタジオ・デダロス作)が発売されてからである。
1990年代の初め、レタラーのリチャード・スターキングスとパートナーのジョン・ロシェル(元の姓はゴーシェル)はコミックブック用フォントの作成を開始し、コミックラフト (en:Comicraft)社を設立した。現在まで同社はコミック用フォントの開発では大手である(ただしBlambotのような競合社も存在する)。
初期のコンピュータ・レタリングは従来の方式に合わせたもので、プリントアウトした文字を原画に貼りこんでいた。しかし数年のうちに、カラーリング作業がデスクトップ・パブリッシングに移行するのと軌を一にして、デジタルファイル上で直接レタリングとアートを統合する方法が取られるようになり、手間がかかる物理的な貼り付け作業は姿を消した。ワイルドストーム・コミックス(英語版)はこの風潮を先取りしており、数年遅れてマーベルが続いた。DCは最後まで伝統的な制作方式を続けていたが、現在ではほぼすべてのレタリングをデジタルファイル上で行うようになった。[9]
21世紀はじめの数年間、メインストリームのコミック出版社はレタリング業務をほぼ完全にデジタル化して自社で行うようになり、フリーランスのレタラーを事実上消滅させた[11]。マーベルの社内レタリング素材はクリス・イリオパウロス(英語版)が、DCではケン・ロペス(英語版)がデザインを行った[11]。その後趨勢は逆に傾き、ほとんどのコミック出版社は再び社内スタッフではなくフリーのレタラーに業務を委託するようになった。現在のレタラーはほとんどがコンピュータとコミックブック用のデジタルフォントで作業を行っている。 アナログ時代にコミックブックのレタラーが必要としていたのは、レタリングガイド
道具と方法
紙上でのレタリング
ECコミックスクライバーとテンプレートからなるルロイ・レタリングセット(製図用レタリング器具の商標名)。
1945年ごろから1955年ごろまで扇情的なホラーコミックを出版していたECコミックのレタリングは独自性が強いもので、均質な文字の並びが無機質な印象を作り出し、同社が売り物とするコミックのスタイルを際立たせていた。EC社のレタラーはこの効果を作り出すため、製図家や建築家の間で一般的なルロイレタリングセット(商標名)を用いていた。ルロイはスクライバーと文字テンプレートを組み合わせたパンタグラフ方式の器具であった(en:Technical lettering参照)。[12] 現在、マーベルとDCのメジャー二社のコミックブックは、Adobe IllustratorやAdobe Photoshopのような画像編集ソフト上で、書き文字に似せたフォントを用いてレタリングされたものがほとんどである。コンピュータによるレタリングでは多くの作業工程を省くことが可能で、特にデジタル画像ファイルを直接加工することにより、手間のかかる物理的な貼り付け作業は完全に過去のものとなった。 現在でも原稿に直接レタリングすることを好むアーティストやインカーは存在する。理由の一つとしては、後からキャプションが置かれる場所には絵を描かなくてもいいので時間が節約できる。もう一つには、コミックは物語を伝えるものだが、文字のない絵だけの原稿は物語の半分でしかないためである。 ベテランのレタラーであるジョン・ワークマン 米国の主要な漫画賞であるアイズナー賞とハーベイ賞はどちらも「最優秀レタラー」部門を設けている(1975年で廃止されたシャザム賞
コンピュータによるレタリング
賞
著名なレタラー
Diana Albers
ケン・ブルゼナック
Janice Chiang
John Costanza
クリス・イリオパウロス
Tom Frame
トッド・クライン