プロレスシーンなどでは、ネクロ・ブッチャーをはじめ、20人を越すプロレスラーを登場させた[10]。またプロレス団体ROHも会場等で協力した。 映画公開を記念して、WWEではクリス・ジェリコによるミッキー・ローク批判(もちろんアングルである)に端を発する、ジェリコ対レジェンド(リック・フレアー、リッキー・スティムボート、ジミー・スヌーカ、ロディ・パイパー)の抗争ストーリーが組まれ、ロークもジェリコと番組内で毒舌戦を展開。2009年4月のレッスルマニア25ではジェリコの挑発に乗ってロークはリングに上がり、ジェリコをパンチでKOした。 日本での公開日は、2009年6月13日になった[11]。 興行収入はアメリカ国内だけで$26,238,243となり[1]、制作費の4倍以上となった。全米週末興行収入成績の最高位は14位であった(2009年1月23日-25日付)。 作品全体は、第65回ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を筆頭に[12]、54個の賞を受賞した[13]。ヴェネツィア国際映画祭の授賞式で、審査員長のヴィム・ヴェンダースは、ミッキー・ロークの演技を「胸が張り裂けそうになるほどの演技」と評価した[9]。一方、ロークがだらしない服装で壇上に上がり下品な言葉遣いをしたことは、ベンダースから「非常に悲しいパフォーマンス」と批判された[14]。主演のロークは、第66回ゴールデングローブ賞主演男優賞を筆頭に[15]、各地の映画祭で主演男優賞として22回表彰された[13]。ゴールデングローブでは主演男優賞以外にも歌曲賞
プロモーション
音楽
主題歌
ブルース・スプリングスティーン / The Wrestler
スプリングスティーンがミッキー・ロークから送られた手紙と映画スクリプトを読んで書き下ろした新曲。 第66回ゴールデングローブ賞・オリジナル歌曲賞 受賞。
挿入歌
ガンズ・アンド・ローゼズ / Sweet Child o' Mine
ランディのステージ登場時のテーマ曲。劇中、ランディが「ガンズ・アンド・ローゼズが活躍した'80年代の音楽は最高だった。'90年代はニルヴァーナの登場のせいでグランジばかりが流行して最低だった。」と語るシーンがあり、'80年代はランディがかつてレスラーとして全盛期だった時期でもある。また、ミッキー・ローク自身も'80年代はスターとして脚光を浴びたが、'90年代はプロ・ボクサーに転身し整形手術を受けるなど低迷期だった。更に、この曲はロークがプロ・ボクサーだった頃にもステージ登場時の曲として使われていた。本作は予算が少なかったこともあり、アクセル・ローズは無償でこの曲の使用を許可したという。エンディング・クレジットではローズに向けて感謝の言葉がクレジットされている。
評価
映画批評家からは高い評価が得られた。毎日新聞の矢部明洋は、ローク演じるランディと対戦相手が試合内容及びフィニッシュホールドへの流れを控え室で打ち合わせたり、さらには肉体改造のためステロイド剤や苦痛を和らげる目的の鎮痛剤をはじめとする大量の薬物を購入する光景など、バックステージでのレスラーの赤裸々な描写が最大の見ものとし、痛々しい老レスラーの生態は華麗なショービジネスの残酷な内幕を告発し、その筋肉でおおわれた肉体は商業主義と虚栄に踊らされる現代社会の象徴だと論じた[17]。読売新聞の恩田泰子は、ランディの姿にロークの人生を重ね合わせずにいられないとし、ロークの演技は、ドキュメンタリーのようでもあり、俳優の負の軌跡を鮮やかに役へと昇華した、貴重で美しい映画だとした[10]。映画評論家の稲垣都々世はロークの演技に完全にノックアウトされたという[18]。スポーツ報知の関野亨は、自身の栄光と転落の俳優人生をレスラーに重ね、老いも格好悪さもすべてさらけ出しての熱演であり、ロークの完全復活作だとした[18]。読売新聞の満田育子は、ありきたりの大団円ではない、余韻を残した終わり方を評価した[19]。プロレスに関する著作の多い作家の村松友視は、プロレスの虚実と人生の虚実とを同時に描き切った初めての作品だとした[20]。プロレスオタクを自認する作家の深町秋生は、作品はプロレスやレスラーに対する愛や敬意にあふれているとし、肉体の限界が来てもリングにあがるランディの姿を、全人類の罪を背負い、究極の責め苦を受けたと言われるキリストになぞらえた[21]。
劇中、ジ・アヤトラー(イスラム教シーア派の指導者の尊称)がイランの国旗でランディの首をしめようとするシーンに対し、イラン政府の高官が米国に抗議する事態となり、イラン国内では上映禁止となった[22][23]。
参照^ a b c “The Wrestler (2008)”. Box Office Mojo. 2010年8月31日閲覧。
^ 小田克也 (2009年6月16日). “人生のどん底から… 劇中と現実が重なる ミッキー・ローク『レスラー』”. 東京新聞
^ Peter Sciretta (2008年10月9日). ⇒“Interview: Darren Aronofsky”. slashfilm.com. ⇒http://www.slashfilm.com/2008/09/10/interview-darren-aronofsky-part-1/ 2008年9月24日閲覧。
^ a b 勝田友巳 (2008年9月10日). “ベネチア国際映画祭- 野心的作品目立ったコンペ部門 金獅子賞は米の「レスラー」”. 毎日新聞
^ Gregg Goldstein (2007年10月12日). “Cage makes some moves on 'Wrestler'”. The Hollywood Reporter. ⇒オリジナルの2007年10月13日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20071013234929/http://www.hollywoodreporter.com/hr/content_display/film/news/e3iafd724b50c2b4b1121448ac83ca016df 2008年1月8日閲覧。
^ “シネマガイド シーンこぼれ話 ベネチアで復活 驚きのミッキー”. 東京新聞. (2008年9月19日)
^ “第2特集 ヒット量産方程式の映画に明日はない??制作費高騰のハリウッドと低賃金の日本??日米気鋭の監督が本音を激白”. 週刊東洋経済. (2009年8月1日)