レコーディング・エンジニア
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この作業の主な作業内容は、収録される媒体がシングル及びアルバムなどの場合、曲数に応じた曲毎の音質や聴感レベルなどの調整を行う事になるが、シングルの場合にはアルバムの時とは多少異なり、メインとなる曲を中心に据えた作業になる事も多い。アルバムの場合には音質や聴感レベル設定作業と並行して曲順や曲間の設定確認を行い、全体の整合性や制作者側の意図などを盛り込んだ完成形として作業を完了させる。マスタリング終了後の音源は原盤マスターとして3/4インチのUマチック・デジタル・テープなどへ録音して固定化する場合と、音源を一端オーディオ・ファイル化して、DDPフォーマットのCD-Rに記録したり、曲間を決めた形でオーディオ・CD-Rとして書き出して固定化し、CDまたはレコード盤等のプレス工場へ納品する事によりプリ・マスタリング作業は完了する。

プレス工場へ納品された各種マスター素材は、製造工程に入るための作業を経てソフトウェアである音楽メディアとして生産されるが、大量生産用のスタンパーを起こす為のマスター・スタンパー作成時に納品された音源の状態に応じた微調整と記録に向けた作業が行なわれ、これが工場におけるマスタリングとして行われる。

レコード盤生産の場合にはスタンパー作成の最初期工程としてラッカー盤に溝を刻む役割のカッティング・エンジニアが、レコード盤のグルーヴ(溝)の幅と再生音質を左右するレコード・カッティングの為に様々な調整作業を行ない、その作業は電気信号で固定化されてある音声信号を物理的なレコード溝に変換して刻みこみ、後の製品になったときにはその逆工程で音源を再生する事になるため、様々な物理的制約などが存在するため、デジタル録音のように最大レベルだけを注意すればよいわけではないので、CDにおけるマスタリング・スタジオでのプリ・マスタリングや工場におけるマスタリングとは異なった経験や技術が要求される部分でもある。

プリ・マスタリング及びマスタリングはレコーディング及びミキシング・エンジニアとは分業制がとられるケースが多く、多くの場合マスタリング・エンジニアが担当する部分となる。 [注 6]
一般的な雇用形態

日本におけるレコーディング・エンジニアの雇用形態はいくつかのパターンに分類できる。一般的な例として、録音スタジオや音楽制作会社などが社員として直接雇用契約をむすぶ形態であり、古くからこの形を取るケースが多い。他には、エンジニア集団が作った組織やエンジニア派遣会社などに所属して契約関係にあるスタジオなどから派遣要請されたり、原盤制作者側やアーティスト側からの依頼を受けて雇用される形態がある。日本国内では1970年代後半からそのような雇用形態が増えてきたが、スタジオやエンジニア集団に所属せず、フリーランス・エンジニアとして独立した屋号を持ち、個人で活動するエンジニアとして存在する形態もあり、原盤制作者側やアーティスト側と組織対個人間で契約を結び雇用関係をとる形態もある。

職に就くまでの一般的な流れには、音響系専門学校あるいは大学などを卒業した後にレコーディング・スタジオやレコード会社または音楽制作会社などに就職して、アシスタント業務としての見習いから始める例が多いが、時代と共にパーソナルコンピュータを運用システムの中心としたDAWやプライベート・スタジオなどでのワンマン・オペレートが主流になってきたため、スタジオや音楽制作会社等へ就職してのアシスタント業務などを経験せずに最初からレコーディング・エンジニアとして職に就く形態も出てくるようになった。または、音楽家が作曲及び編曲の段階からDAW上で全ての作業が完結することもあり、否応なしに自身でDAWの操作をしなければならないケースも多くなり、この分野からレコーディング・エンジニアに転身するケースもある[注 7]

Pro ToolsなどをDAWシステムとして使用するレコーディング・セッションが多くなってきた事により、それまでと比べてアシスタント・エンジニアの作業量が減ってきたり、要求される作業内容がテープレコーダーなどのオペレーションから推移し、コンピュータ・オペレーション上でのリージョン・ファイル編集操作などが増加するなど多岐にわたってきた。

レコーディング・エンジニアからマスタリング・エンジニアに転身・または兼業する人は相応の割合で存在するが、逆のケースはレコーディング経験やスタジオでのコミュニケーションの取り方が異なるなど、様々な理由から困難が伴う事もあり、兼業も含めてあまり存在していない[注 8]。そして、レコーディング・エンジニアとしての女性の就業比率は長時間労働などの面から、以前はあまり多く存在しなかったが、1990年代以降は比率的にもどんどん増えてきていて、長時間や重労働を伴うイメージなども払拭されてきたせいか、レコーディングやミキシングをクリエイティブな面として捉えられた状況になりつつもある。また、歌手や音楽家側が女性である場合などにおいて、女性エンジニアとの作業を希望するケースもあるため、そう言った面からも女性のレコーディング・エンジニアとしての進出は増えてきている。
著名なエンジニア

拠点名前主な制作アーティスト特筆及び受賞歴
アメリカ合衆国アル・シュミット
(Al Schmitt)レイ・チャールズ
ジャクソン・ブラウン
スティーリー・ダン1963、1977、1978、1979、1983、1992、1997、2000、2002、グラミー賞 Best Engineered Album, Non-Classical 受賞。
ジョージ・マッセンバーグリンダ・ロンシュタット
アース・ウィンド・アンド・ファイアー自身のGML社製品も設計開発。
1990、グラミー賞 Best Engineered Album, Non-Classical 受賞。
スティーブ・アルビニニルヴァーナ
ピクシーズ
モグワイビッグ・ブラックレイプマンシェラックとしても活動。
チャド・ブレイク
(Tchad Blake)スザンヌ・ヴェガ w/ミッチェル・フルーム
クラウデッド・ハウス2008、グラミー賞 Best Engineered Album, Non-Classical 受賞。
デイヴ・フリッドマンナンバーガール
MGMT
フレーミング・リップスタルボックス・ロード・スタジオ
トム・ダウドデレク・アンド・ザ・ドミノス
エリック・クラプトン
レーナード・スキナード
ブルース・スウェデン
(Bruce Swedien)クインシー・ジョーンズ
マイケル・ジャクソン
ジャネット・ジャクソン1984、1988、1991、1993、グラミー賞 Best Engineered Album, Non-Classical 受賞。
ブレンダン・オブライエンパール・ジャム
ストーン・テンプル・パイロッツ
コーン
ボブ・クリアマウンテン
(Bob Clearmountain)ブライアン・アダムス
ダリル・ホール&ジョン・オーツ
ブルース・スプリングスティーン
ミック・グゾウスキーマライア・キャリー
エリック・クラプトン
マイケル・ボルトン2002年と2004年にラテン・グラミー賞、2006年にグラミー賞ベスト・エンジニア(ノンクラシック)を獲得。
ルディ・ヴァン・ゲルダーマイルス・デイヴィス
セロニアス・モンク
イギリスアラン・パーソンズピンク・フロイド
アラン・パーソンズ・プロジェクト
スティーヴ・ハーレイ&コックニー・レベルアビー・ロード・スタジオ出身。
エディ・オフォードイエス
エマーソン・レイク・アンド・パーマー
ジェフ・エメリックビートルズ
ポール・マッカートニー
バッドフィンガーアビー・ロード・スタジオ出身。
1968、1970、1975、グラミー賞 Best Engineered Album, Non-Classical 受賞。
ナイジェル・ゴッドリッチレディオヘッド
ベック
ポール・マッカートニー2004、グラミー賞 Best Engineered Album, Non-Classical 受賞。


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