1970年代におけるボブ・マーリーの世界的ヒットなどを経て、レゲエの演奏様式はアフリカ、ラテン・アメリカ、アジアなど世界の様々なポピュラー音楽にも取り入れられて演奏されるようになった。また、ジャズ、ロック、ヒップホップなど異なるジャンルとの融合や、レゲエ風アレンジも多く見られる。
楽器と奏法
ドラムススライ・ダンバー(1979年)
標準的なドラムセットが使用されることが多い。スネアドラムはしばしばティンバレスのような非常に高い音にチューニングされ、演奏ではリム・ショットが多用される。また、ロックやポップスなどと異なりシンバルを使ったフィルインはあまり用いられず、ハイハットを叩く際はアクセントをつけず平板なビートを刻むことが多い[15][17][18]。
レゲエにおけるドラムビートは、「ワンドロップ (One Drop)」、「ロッカーズ (Rockers)」、「ステッパーズ (Steppers)」などに分類することができる。
ワンドロップ
1拍目にアクセントがなく、3拍目のみがスネアドラムのリムショットとバスドラムによって強調される[19]。カールトン・バレットが開発したとされるこのリズムは[注釈 3][19]、レゲエを特徴づける要素の一つである[19]。代表的楽曲はボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの「ワン・ドロップ (One Drop)」など。
フライング・シンバル
ワンドロップのドラムに、通常はギターやキーボードが強調する2拍目、4拍目をハイハットのオープンショットによって強調する奏法[20]。1974年にカールトン・サンタ・デイヴィス(英語版)が開発し、1975年まで流行した[20]。代表曲はジョニー・クラーク(英語版)「ムーブ・アウト・オブ・バビロン (Move Out of Babylon)」など[20]。
ロッカーズ
ルーディメンツを下敷きにしたマーチングバンド風のフレーズをスネアドラムで叩く。その戦闘的にも聞こえるビートから「ミリタント・ビート」とも呼ばれている[21]。スライ・ダンバーによって開発された[21]。代表的楽曲はマイティ・ダイアモンズ「アイ・ニード・ア・ルーフ (I Need A Roof)」(1976年)など。
ステッパーズ
スライ・ダンバーが開発した4拍子の4拍すべてに固い4つ打ちのバスドラムを打つリズムである[22][23]。代表的楽曲はボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ「エクソダス」など。この曲でカールトン・バレットは、4分の4拍子を刻む4つ打ちのバスドラムに8分の6拍子を刻むハイハットの3連打を絡めている。
ベースロビー・シェイクスピア(1978年)
標準的なエレキベースが使用されるが、極端に重低音を強調した音にチューニングされる[24]。レゲエにおいてベースはうねるようなベースラインを繰り返し、転調も少ない[24]。
ギターアール・チナ・スミス(2009年、スウェーデン)
標準的なエレキギターが使われることが多いが、アコースティックギターが使用されることもある。レゲエにおいてギターはカッティング奏法で2拍目・4拍目のオフビートを強調することが多い[16]。カッティング奏法といってもファンクのように空ピック[注釈 4]を多用することはなく[16]、所々で空ピックや実音で引っ掛けるフレーズでスイングを演出する[16]。バンドによってはカッティング奏法を担当するリズムギターとブルース風やロック風のメロディやリフの演奏を担当するリードギターの二本を用意することもある。 パーカッションとしては、ボンゴ、カウベル、シェイカー、ビンギ・ドラム、ギロ、クラベス等が使用される。
パーカッション