レゲエ
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しかし一方で、ジャマイカには1913年より施行された危険薬物法 (Dangerous Drugs Act) があり[注釈 13]、大麻の所持、売買、喫煙にはそれぞれに応じた罰金刑、懲役刑が科されている[29][30]。トッシュ、ブジュ・バントンニンジャマンらレゲエアーティストもこの法律を根拠に科刑された経験がある。
ホモフォビア「en:LGBT rights in Jamaica」も参照ブジュ・バントン(2006年、フィンランド)

特に1990年代以降のダンスホールレゲエ楽曲を中心に、レゲエの歌詞にはしばしば異性愛を尊重し、同性愛者などの「性的逸脱者」をバティボーイ(英語版)などと呼び[注釈 14]、激しく批判するホモフォビア的内容のものがある[31]。これら同性愛者批判はジャマイカ国民の大多数を占める保守的キリスト教信者やラスタファリアンが持つ信仰に基づく性倫理観[注釈 15]の影響や、植民地時代が長らく続いたことによる母系社会化と相対的な男性の地位低下等のジャマイカ特有の社会的、歴史的事情の影響がある[32]。また、ジャマイカでは法律 Offences Against the Person Act 第76条、79条によって男性間の性交をはじめとする「性的逸脱」が違法とされており、違反者には10年以下の禁固刑が課せられている[33](その一方、女性間の同性愛行為に対する直接な法的言及はない[34])。

1990年代以降、ブジュ・バントン、エレファント・マンビーニ・マンシズラ、ケイプルトン(英語版)らがイギリスに本部を置くアウトレイジ!(英語版)等の同性愛団体・人権団体から差別的発言について抗議を受けていたが[31]2007年には上記のアーティストに加えT.O.K(英語版)、バウンティ・キラー(英語版)、ヴァイブス・カーテルらが、アウトレイジ!らが起こしたキャンペーン「en:Stop Murder Music」との交渉により、今後は同性愛嫌悪を助長する歌詞を歌う事を止め、同性愛者に対する暴力に反対するとの合意書「レゲエ特別配慮規定(英語版)」[注釈 16]に署名[35][36]、その調印書類が同性愛人権活動家のピーター・タッチェルの公式サイトで公開されるなど[37]、一時は両者間が歩み寄りの一歩を踏み出したかのように見られた。しかし、ブジュ・バントンとビーニ・マンは直後にこの署名を否定し[36]、同性愛団体・人権団体との対立が再燃。両団体の抗議により、2人の欧米ライブツアーは幾度も抗議活動に見舞われたり、中止に追い込まれる等[38][39][40]表現の自由と人権問題の狭間を揺れ動く、依然根の深い問題となっている。

一方、2012年7月にレズビアンであることをカミングアウトしたダイアナ・キングは自身の公式Facebookで発表した声明文において、「正直に話すと、オープンに認めることはずっと怖くてできなかった。私のキャリアや家族、愛する人たちにどんなネガティブな影響を与えるか、分からなかったから」、「私がずっと抱いていた深い恐怖、それはジャマイカの人たちが長年のホモフォビアによって私を受け入れないということ。」、「私のような人たちを毎日のように迫害し、打ちのめし、牢獄に入れ、強姦し、殺してきたという不快な現実を、私はこれまでずっと、あまりにも多く見てきた。ただ自分自身であろうとする人たちを、あるいは、ただそうと疑われただけの人たちを」と語り、このように同性愛者に差別的なジャマイカにおける政治的/文化的土壌を批判している[41][42][34]
非一貫性ジミー・クリフ(1997年)

レゲエの歌詞には「ルードボーイ」、「ラガマフィン」、「ギャングスタ」、「バッドマン」など不良悪漢を意味する語がしばしば現れる。ルードボーイとラスタは必ずしも対立する概念ではなく、実際には多くのアーティストがルードボーイであり同時にラスタでもあるが、そのような非一貫性はレゲエの歌詞に頻出する主題の一つである[25]

例えばジミー・クリフの楽曲「ザ・ハーダー・ゼイ・カム」では、曲の前半で生ある内の救済を希求しながら、後半ではむしろ死による救済を願う内容になっている[43]。また、ボブ・マーリーはあらゆる人種間の平和を願う「ワン・ラヴ/ピープル・ゲット・レディ」と同じ黒人であってもラスタファリアンでないものを非難する「クレイジー・ボールドヘッド (Crazy Baldhead)」という相反する内容の楽曲を発表している。

しかしながら、アフリカン・ディアスポラと植民地時代の奴隷経験によって培われたこの非一貫性、二重性は必ずしも(特にジャマイカの)レゲエアーティストの中で矛盾として受け取られておらず、レゲエの歌詞の特徴の一つとなっている[25][44]
サウンド・チューン

後述するように、ジャマイカの音楽はサウンド・システムダブ・プレートというそのサウンド・システム独自のレコードをかけ、互いに競い合う文化がある。そのため自分のサウンドを称えたり、相手のサウンドをけなしたりする曲が古くはレゲエ以前の時代からリリースされていた。そのような曲のことを「サウンド・チューン (sound tune)」、または「サウンド・アンセム (sound anthem)」と呼ぶ。


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