レイアウトシステム
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1979年放送の『機動戦士ガンダム』の一部の話数では、アニメーション・ディレクターの安彦良和が全カットのレイアウトと動きのガイドとなるラフ原画を描き、若手のアニメーターが原画に清書しタイムシートを付けて動画に送るという「第一原画システム」を試行した[3]。総監督の富野喜幸からは「いい仕事をしてくれた」と褒められたという[4]。ハードな制作状況下で、画力と筆速が並外れていた安彦ゆえに成立したシステムだったが、編集ベースの劇場版でもこの手法で新規作画カットを追加している。さらに、安彦が設立した九月社で作画した『クラッシャージョウ』(1983年)や『巨神ゴーグ』(1984年)でも採用された[3]

レイアウトシステムの効果を実証したのが、平成初期に押井守が監督した一連のアニメ映画作品である。押井は『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』『天使のたまご』で小林七郎に学びレイアウトの重要性に気付き[5]、『機動警察パトレイバー the Movie』(1989年)から『機動警察パトレイバー 2 the Movie』(1993年)、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995年)へ至る過程でレイアウト中心の制作手法を確立[6]。押井は「パトレイバー2」ではレイアウト作業を5カ月近く徹底的にやり、作画作業は3カ月くらいだったと話しており、「レイアウトでものを作る」という方法が「僕がアニメーションの仕事で成し遂げた最高の仕事じゃないかと思う」と自負している[7]。1994年にはアニメ業界におけるレイアウトマンの慢性的な不足な状況を解消するべく、「パトレイバー2」で使用されたレイアウトを題材に1カットごとの演出意図を解説し、現場スタッフやスタッフを目指す人々への実践教本を想定した『Methods 押井守・「パトレイバー2」演出ノート』を上梓。アニメ業界全体のレイアウトシステム普及に大きな影響を与えた。ただし、主要スタッフの黄瀬和哉は「カメラのレンズを意識したレイアウト・システムは、あくまで押井さんの方法論であって、他の映画全てに通用するものではない。それなのに『こう作らなければいけないんだ』と捉えられるところがあって、『違うのにな』と思ったことがありました[8]」と述べている。

現在では各原画マンが自分の持ちカットのレイアウトを描き、作画監督と演出がチェックするという形でほとんどのTVアニメでレイアウトシステムが導入されている。また、近年のデジタル化に伴って、作業効率化およびクオリティの底上げを目的に、建物などを3Dであらかじめ組んで大枠のレイアウトを決め込んだ3Dレイアウトシステムが普及しつつある。 
レイアウトラフ原画

また近年はレイアウトにラフ原画を添える事が主流になりつつある。

本来アニメ映像の編集は動画→仕上げ→撮影を経て完成した素材で行なうものとされているが、スケジュール上の問題から原画に至る以前の段階で編集に臨まなければならない状況が増えた。この場合レイアウトの段階で撮影素材を作らなければならず、編集時に芝居やタイミングがわかるようにカット内容を決め込んでおく必要がある。そのためレイアウトとともにラフな原画とタイムシート(英: Exposure sheet または X-sheet)を最初から用意しなければならない状況が発生した。

このように本来は制作スケジュール上の都合で生まれたシステムであるが、演出にとってはレイアウト段階でカット内容の吟味が出来るうえ原画時のリテイクも減り、作監にとってはより多くの絵に修正を入れられるため、全体的なクオリティの向上に繋がるというメリットも生まれ、スケジュールに余裕があっても最初からラフ原画からの作業を求められるパターンが増えている。しかしながら作画や演出の負担は増えて結果的にはスケジュールを圧迫するというデメリットも発生している。

ラフ原画はラフな絵である以外、シートや芝居内容をほとんど決め込んだ状態で上がる場合もあれば、シートに簡単に原画番号を打っておくというとりあえずの状態で上がる場合もある。そのラフ原画を第一原画(一原)とし、原画作業を別のアニメーターに第二原画(二原)として発注する事も多い。また、作画と絡む3Dアニメのアタリとしてラフ原画が使われる事もある。
脚注^ AJA推奨レイアウト用紙規格 一般社団法人 日本動画協会(2020年8月31日閲覧)。
^ おぎにゃんと学ぼう!アニメの作り方 第1回 作画監督って何するひと?(前編) マッドハウス(2020年8月31日閲覧)
^ a b 氷川竜介 ⇒ガンダムを語る 第3回 「劇場用新作カット」高クオリティの秘密 機動戦士ガンダム公式Web(2020年8月31日閲覧)
^ 富野由悠季監督との30年越しの秘話-『機動戦士ガンダム』安彦良和×板野一郎×氷川竜介トークショー マイナビニュース(2013年7月18日)
^ 藤津亮太 ⇒『スカイ・クロラ』公開記念 押井マニア、知ったかぶり講座! 第4回 ひとつの転機となった『天使のたまご』 WEBアニメスタイル(2008年7月28日)
^ 藤津亮太 ⇒押井マニア、知ったかぶり講座! 第6回 『機動警察パトレイバー2 the Movie』というか、レイアウトの話 WEBアニメスタイル(2008年8月11日)
^押井守監督が自身の作品について語る! 3週連続単独インタビュー 第一弾?パトレイバーシリーズ? WOWOWシネピック(2018年3月14日)
^ 「攻殻機動隊」25周年リレーインタビュー 黄瀬和哉 前編 レイアウト・システムの功罪 (2) アニメハック(2015年10月30日)

参考文献

『Methods 押井守・「パトレイバー2」演出ノート』

『アニメーションノート No.10』

映画「ゲド戦記」制作日誌 (4) レイアウト(後編) - スタジオジブリ(2006年6月5日)


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