ルイ・パスツール
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これを示すために彼が考案した、塵が入らないように工夫した「白鳥の首フラスコ」(いわゆるパスツール瓶)を使うと、煮沸して放置した肉汁は腐敗しないことを示した。このことから、腐敗した肉汁の微生物はすべて外界からの混入によるものであり、“生命は生命からのみ生まれる”という説を強く後押しした。
醗酵に関して

彼はアルコール発酵酵母の働きによること、また酢酸発酵が別種の微生物の働きによることを確認した。それまでにすでに酵母は発見されていたが、発酵の要因とは考えられていなかった。つまり、発酵が微生物の働きであることを発見したのは彼によるものである。

実用的には葡萄酒が悪くなるのを防ぐために低温殺菌法を開発した。これは牛乳などの液体を60℃程度で数十分間加熱し、バクテリアカビなどの微生物を殺菌する方法であり、現在にいたるまで広く利用されている。英語名パスチャライゼーションも彼の名に由来するものである。
医学に関して

彼の業績は、ドイツのコッホと共に微生物に関する医学の黎明期をなすものである。コッホとは強いライバル関係にあったが、後年、固体培養を駆使したコッホに対し、液体培養で研究を進めたパスツールは大きく水をあけられた。コッホの貢献が細菌学の基礎を固めるものであり、寒天培地シャーレなど、彼にかかわって開発された多くの技術が現在も主力として活躍しているのに比べ、パスツールはそのような面ではあまり貢献していない。

しかしながら、様々な諸概念を作り上げた点では、彼の貢献は大きい。そもそも微生物が病原体である可能性を示唆したのは彼である。微生物は動物や人間の身体にも感染するという結論に達したパスツールは、スコットランドの外科医ジョゼフ・リスターが、外科手術における消毒法を開発するのを助けた。

また、弱毒化した微生物を接種することで免疫を得ることができるという発見は、ワクチン予防接種という、感染症に対する強力な武器を供給するものとなった。その後、彼は狂犬病のワクチンも開発した。実は狂犬病の病原体はウイルスであり、彼はその姿をとらえることが出来ないまま、犬の体で培養を行い、ワクチンの開発に成功している。

微生物を拾い上げられるのに使われることが多いガラス管の先端を細長く伸ばしたピペットはパスツールピペットと呼ばれている。
その他

カイコについての基礎知識を得るためファーブルを訪問したとき、ファーブルはパスツールの昆虫学の基礎知識に関するあまりの無知ぶりに驚いたという。当時フランス国内で疾患の蔓延によりカイコが枯渇して養蚕の危機に瀕していた事への救援として、日本江戸幕府将軍徳川家茂からフランス皇帝ナポレオン3世に対してカイコのの贈呈があり、パスツールは研究用としてその一部を分け与えられた。

パスツールがいかに尊敬されていたかを示すエピソードがある。1940年ナチス・ドイツによるフランス占領で、パスツール研究所が接収された。ここの守衛をつとめていたのがヨゼフ・マイスター(ジョゼフ・マイスター、Joseph Meister)という、狂犬病ワクチンで助かった3人目の子供であった(1940年当時65歳)。彼はパスツールの恩に報いるため、墓を暴こうとしたドイツ人に鍵を渡すことを拒み、自ら命を絶ったという。

2015年、パスツールが記した著述などがユネスコ記憶遺産に登録された[3]
出典^ Asimov, 科学技術人名事典(英語版) 2nd Revised edition
^ L. Pasteur, Ann. Chim. Phys. 1848, 24, 442.
^Louis Pasteur’s Archive Memory of the World - UNESCO

関連項目

ルイ・パスツール研究所

ルイ・パスツール大学(英語版)(フランス・ストラスブール)

科学者の道(1936年の伝記映画)

外部リンク.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィキメディア・コモンズには、ルイ・パスツールに関連するメディアがあります。ウィキクォートにルイ・パスツールに関する引用句集があります。

ルイ・パスツール in der Deutschen Biographie

『パスツール』 - コトバンク


前任
エミール・リットレアカデミー・フランセーズ
席次17
第13代:1881年 - 1895年後任
ガストン・パリス










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