リンネ式階層分類体系
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そのもっとも重要な概念が「 species」[注釈 2]を基本とした分類階級である[2]。リンネは、自然物を鉱物、植物、動物に区分し、それぞれを鉱物界、植物界動物界とし[2]、この3界に精通した[15]。このうちリンネが独自に研究を行ったのは植物である[2][16]

リンネは1753年、著作『植物種誌』において植物界を「」・「」・「」・「(および変種)」の4つの階級を用いて組織化した[2]。そして体系分類とは、最小階級であるどの変種も種も、属として、目として、そして綱としての何れの位置も与えられることであるとした[2]。なお、リンネの分類体系ではこのうち「」を基礎として体系化した[2]。種は属に分類されるものであり、体系の議論では属を単位とした[17]。この認識はリンネ以前から続くもので、リンネ以前の多名法において種名は属名とそれに続く複数の形容語の羅列により構成されるように、従属の意識が強かった[17]二名法もこれを踏襲し、種名を「属名 + 種形容語」で表している[17]

現在では、上から(kingdom)・ (phylum, division[注釈 3])・ (class)・ (order)・ (family)・ (genus)・ (species) といった7つの基本的な分類階級(植物ではこれを一次ランクと呼ぶ[14])を基本とした階層的な分類がなされる[10][20][6]。種は属に、属は科に、科は目に、目は綱に、綱は門に、門は界に含められ、入れ子状の構造となっている[10]。最近では界をドメインでまとめる階層構造も一般的である[10]。必要に応じて動物であれば綱と目の間に (cohort)、科と属の間に (tribe) をおくことができ、植物でも科と属の間に、属と種の間に (section) および列 (series)、種より下位に変種 (variety) や品種 (form) といった二次ランクを置くことができる[6][21]。これらの階層の下には、各階級に「亜- sub-」をつけて細分化した中間階層が用いられる[20][22]。より上位の階級になるほど注目する形質の抽象度は高くなるため、直感的に共有形質を理解することは困難となる[23]

基本階級のうち、門および科はのちに付け加えられたものである。リンネも科を用いたが、これは階層分類とは異なる分類概念であり、今日の意味での「 family」は、ミシェル・アダンソン1727年?1806年)のFamilles naturelles des plantes『植物の科』(1763年)によるものである[24]。また、「 phylum」[注釈 3]という語を初めて用いたのは1866年エルンスト・ヘッケル1834年?1919年)で、動物界脊椎動物門・体節動物門・軟体動物門棘皮動物門腔腸動物門の5門を認めた[25]。植物に「門 division」[注釈 3]を初めて置いたのは1883年アウグスト・アイヒラー1839年?1887年)で、種子植物裸子植物門被子植物門に分けた[26]

階層的な分類では階級の数に限りがあるため、系統関係を完全に反映させることは困難であり、完璧に系統進化を再現するような分類体系は実用的でない[20]。より最近では、分子系統解析に発展により多くの単系統群が認識されて、流動的となってきたため、分類群を絶対的な階級におく階層的分類体系は扱いづらいこともあり、階級を置かないクレードや、相対的な「ランク」を置くことも多い[27]
リンネ以前の分類体系.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}}ギャスパール・ボアン(1620年)のPinax theatri botaniciトゥルヌフォール(1700年)のInstitutiones rei herbariae

リンネは1751年の著作Philosophia Botanica『植物学論』において、体系分類の創始者はアンドレア・チェザルピーノ1519年?1603年)であるとし、他26人の植物の体系分類学者を列挙している。リンネはそうした分類学者を標識として重視した構造によって、チェザルピーノのような「果実主義者 fructist」やジョゼフ・ピトン・ド・トゥルヌフォールのような「花冠主義者 corollist」などとし、「」を標識としたのは自身がはじめであるとした[17]


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