天然にはL-リンゴ酸が見られる。
L-リンゴ酸
D-リンゴ酸
リンゴ酸は生化学で重要な役割を果たす。
C4型光合成では、カルビン回路のCO2源となる。クエン酸回路ではH2Oがフマル酸のSi面に付加することで(S)-リンゴ酸が生成する。(S)-リンゴ酸はリンゴ酸デヒドロゲナーゼによって酸化され、オキサロ酢酸となる。ピルビン酸から補充反応によって生成されることもある。
サボテンなどのCAM型光合成では、夜間に気孔を開き二酸化炭素をリンゴ酸の形で取り込み、日中にリンゴ酸から二酸化炭素を取り出すことで、水分の蒸散を最小限としている[3]。
孔辺細胞では、ホスホエノールピルビン酸のカルボキシル化によっても合成される。これは細胞がカリウムを取り込む際にその対イオンとなる。細胞内の溶質の濃度が上昇すると浸透圧が低下し、水が流入して細胞が膨張することで気孔が閉じる。
生理学
ラットにおいてリンゴ酸はごく少量しか血液脳関門(BBB)を通過しないと示唆されている[4]。
小規模な実験ではクエン酸同様、尿のpHを上昇させ尿中クエン酸の排出を増やすとする報告がある[5]。
用途(S)-(-)-L-リンゴ酸
爽快感のある酸味を持つため、飲料や食品の酸味料として用いられる。また、pH調整剤、乳化剤など、食品工業
においてさまざまな用途に利用されている。キレート性を持つ酸であることから、金属表面の洗浄などにも用いられる。アルミニウムをキレートする能力が高い。
食品、工業に使われるリンゴ酸は、多くの場合ラセミ体が用いられる。 リンゴ酸は1785年、カール・ヴィルヘルム・シェーレによってリンゴジュースから単離された。1787年、アントワーヌ・ラヴォアジエがラテン語m?lum
食品との関連
食品添加物としては、E296というE番号が与えられている。酸味の少ないクエン酸の代用としても使われるが、過剰摂取により口の中に炎症を引き起こす可能性もある。食品添加物として欧州[8]・米国[9]・オーストラリア、ニュージーランド[10]で認可されている。
サプリメントとしてはアメリカなどで販売されている。
サプリメントにおいてはリンゴ酸のカルシウム化合物であるリンゴ酸カルシウムがクエン酸カルシウムの溶解性を高めるために用いられる。この混合物は特にクエン酸リンゴ酸カルシウム(CCM - calcium citrate malate(英語版))と呼ばれている[注 1]。 発煙硫酸によって自己縮合し、ピロンであるクマリン酸(o-クマル酸ではないので注意)を与える[12]。発煙硫酸によるクマリン酸の合成 (-)-リンゴ酸はPCl5の作用で(+)-クロロコハク酸となり、(+)-クロロコハク酸は酸化銀(I)触媒により(+)-リンゴ酸となる。(+)-リンゴ酸にPCl5を作用させると(-)-クロロコハク酸となる。このことからヴァルデン反転が発見された。
反応
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 1981年に日本の特許(特開昭56-097248)でクエン酸リンゴ酸カルシウムが比較的溶解しやすい事が示されてから、その構成比率(カルシウム:クエン酸:リンゴ酸のモル比5:2:2等)についての調整が行われつつ現在に至っている。
出典^ ⇒chemBlink Online Database of Chemicals from Around the World
^ “Malic acid
^ “サボテンの秘密(形態・生理的特徴) 堀部研究室(園芸学研究室)”. 中部大学(www3.chubu.ac.jp). 2024年3月25日閲覧。
^ Bjornar Hassel, Anders Brathe and Dirk Petersen (July 2002). “Cerebral dicarboxylate transport and metabolism studied with isotopically labelled fumarate, malate and malonate”. Journal of Neurochemistry 82 (2): 410-419. doi:10.1046/j.1471-4159.2002.00986.x. https://doi.org/10.1046/j.1471-4159.2002.00986.x 2020年8月24日閲覧。