リンカーン・タウンカー
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姉妹車フォード・クラウンビクトリア
マーキュリー・グランドマーキー
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リンカーン部門ではフルサイズ車種の大幅なダウンサイジングに続き、車種の整理が行われた。コンパクトセダンのヴェルサイユがなくなった後、リンカーンはほぼ同一車種の6台(コンチネンタル、コンチネンタル・タウンカー、マークVI、いずれにも2ドアと4ドアモデルが存在)を販売する事になった。1981年にコンチネンタルとコンチネンタル・タウンカーを統合し、マークVIの下に位置する1つのモデルラインにまとめる形でリンカーン・タウンカーが登場した。

1980年モデルのリンカーン・コンチネンタルと同じ車であるタウンカーは2ドアおよび4ドアセダンとして販売され、タウンクーペの名称は廃止された。マークVIとの差別化に大きく影を落とした2ドアのタウンカーは1982年に廃止された。リンカーンは1984年にマークVIIが登場した後、フルサイズの車種を4ドアセダンのタウンカーのみに絞り込んだ。

発売当初、タウンカーは燃料価格のさらなる変動を予想して前輪駆動車に取って代わられる予定だったが、燃料価格が安定し始めると後輪駆動車への需要が高まり、リンカーン=マーキュリー部門は1980年代いっぱいまで、ほとんど目に見える変更を加える事なくタウンカーを生産した。1988年には20万台以上が販売され、モデルラインとして過去最高を記録した[5]
シャーシー

1980-1989年モデルのリンカーン・コンチネンタル/タウンカーにはフォードやマーキュリーと共通のパンサー・プラットフォーム(英語版)が採用された。技術的な問題により1980年モデルまで登場が遅れたパンサー・プラットフォームは、リンカーン車の外見の指標を大きく変えた。ホイールベースはフォード/マーキュリー/マークVIのクーペモデルよりも3インチ延長されたものの、1980-1989年モデルは1979年モデルよりも10インチ短く、リンカーンのフルサイズモデルとしては最も短いホイールベースになった。

1980年のコンチネンタル/タウンカーはヴェルサイユ以来の短いリンカーンであった。燃費とハンドリングの観点からパンサー・プラットフォームのシャーシーは1970-1979年型のフルサイズ・リンカーンに比べ最大1400ポンドの軽量化を実現した。1980年のコンチネンタル/タウンカーはこの40年間で最も軽量なフルサイズ・リンカーンとして、コンパクトサイズのヴェルサイユとの車両重量の差を200ポンド以内に抑えた。新たなパンサー・プラットフォームは全体のサイズを縮小し、サスペンションのジオメトリーを改善し、パワーステアリングを改良し、1979年型のリンカーン・コンチネンタルと比較して回転直径を8フィート以上縮小した。1984年にはガス圧式のショックアブソーバーが追加された。

企業平均燃費 (CAFE) を向上させるため、フォードはフルサイズ車に搭載された400と460の大排気量V8エンジンを廃止し、1980年に130馬力の5.0リッター (302V8、「5.0リッター」として販売) が標準エンジンとなった。オプションとして140馬力の5.8リッターが用意された。1981年のリンカーン・タウンカーの導入に伴い、5.0リッターが唯一の選択可能なエンジンとなった。5.8リッターはフォードとマーキュリーでもオプション装備となった。カナダでは1985年まで5.0リッターはキャブレター式のままだった。1986年にはシーケンシャル・マルチポート燃料噴射を導入した燃料噴射システムの再設計に伴い、5.0リッターが150馬力とされた。これらのエンジンは鋳造アルミニウム製のアッパーインテークマニホールドと水平スロットルボディ(垂直スロットルプレート)が特徴的で、従来のスロットルボディからキャブレター式のトップマウントエアクリーナーが採用されていた。1980年にリンカーン・コンチネンタルに導入され、1981年にパンサー・プラットフォーム採用の全車種と共に販売されたリンカーン・タウンカーは1981年から1989年を通じて4速AOD(英語版)オートマチック・オーバードライブ・トランスミッションを唯一のトランスミッションとして搭載していた。

1980年から1989年までのすべてのタウンカーにはデュアルエキゾースト、3.55:1リミテッドスリップディファレンシャル(コードネーム「K」)、エンジンとトランスミッションのための改良された冷却パッケージを含むオプションのトレーラー牽引パッケージが装備されていた。

エンジン排気量燃料供給年度定格馬力出力トルク特記事項トランスミッション
5.0リッター301.6立方インチ (4.94リットル)CFI (アメリカ; カナダ 1985)

2バレルキャブレター

(カナダ 1981-1984)1981130馬力 3400 rpm230lb?ft (2,200 rpm時)フォード4速AODオートマチック
1982134馬力 (3400 rpm時)245lb?ft (2,200 rpm時)
1983140馬力 (3200 rpm時)250lb?ft (2,000 rpm時)
1984-1985140馬力 (3200 rpm時)250lb?ft (1,600 rpm時)
155馬力 3600 rpm265lb?ft 2,000 rpmデュアル・エグゾースト・オプション
SEFI1986-1989150馬力270lb?ft (2,000 rpm時)
160馬力280lb?ft (2,200 rpm時)デュアル・エグゾースト・オプション

ボディ
外観

1970年代後半、リンカーン・コンチネンタルの販売は堅調に推移し、コンチネンタル・マークV(英語版)はキャデラック・エルドラドを上回る販売台数を記録した。リンカーン・タウンカーの開発において1977-1979年のリンカーン・コンチネンタルとマークVのデザインテーマが、1980年のコンチネンタル/タウンカーの外観のデザインにも影響を与えた。タウンカーは先行モデルと同様にほぼフラットなボディサイド、鋭角なフェンダー、ラジエタースタイルのグリルなどが特徴となった。大きな変更点はリトラクタブル・ヘッドライトが露出したハロゲンヘッドライトに変わった事で、1969年以来、リンカーンのフルサイズ車としては初めての事であった。フォードやマーキュリーとは対照的に窓枠はマットブラックに塗装されていた。ヘッドランプと窓枠の周りにはクロームトリムが残されていたが、リンカーンの伝統から一転してフェンダー上部からはクロームトリムが消えた。機構的にはフォード・LTD(英語版)やマーキュリー・マーキー(英語版)(1983年以降はフォード・LTDクラウンヴィクトリア(英語版)、マーキュリー・グランドマーキー)に酷似していたが、ボディパネルはコンチネンタル・マークVI(英語版)としか共通していなかった。1981年から1989年までのタウンカーのルーフラインはフォード、マーキュリー、マークVIとは対照的にCピラーに縦長の三角窓を採用している。

1981年に2ドアのタウンカーが4,935台の販売に終わった後、1982年にはこのボディスタイルが廃止された。1981年にコンチネンタルがリバッジングされてリンカーン・タウンカーに変更された事により、リンカーンはヘッドライト上の「Continental」のバッジも「Town Car」に変更したが、1984年にそれもなくなった。

すべてのタウンカーにパッド付きルーフが標準装備され、そのデザインはトリムレベルに応じて決まった。標準型のタウンカーにはセンターピラーにコーチランプが付いた革目調ビニール製フルレングスカバーが装着された。シグネチャーシリーズとカルティエには小さなフランス風のリアウィンドウ開口部を備えた屋根の後半分を覆うパッド入りのビニール製コーチルーフが装備された。カルティエ以外のタウンカーでは屋根全体を覆うキャンバス・ルーフがオプションとなり、コンバーチブルの外観を模したデザインはCピラーのクォーターウィンドウをなくした。

1980年代を通じてリンカーン・タウンカーは何度か外観の改良を受けた。1985年のモデルサイクルの途中でフェイスリフトが行われた。わずかなエアロダイナミクスの改善に加え、全長を基本的に変更せず視覚的に車体を短くする事を目的としたデザインである。フロントとリアのバンパーのデザインが一新され、ボディワークとの一体感を高めた。リアファシアやテールランプのデザインも一新され、トランクリッドはリアフェンダーとの一体感を高めた。1986年には連邦政府の規制に対応するため、リアウィンドウにセンターブレーキランプが追加された。1988年にはテールランプの間にブラッシュドメタルパネルを採用したグリルが採用され、リバースランプが置かれた。

1989年モデルはグリルブレードのサテンブラック塗装、ヘッドライト間のトリム、フロントパーキングランプのアンバー(クリアではない)などの特別なトリムが特徴で、フロントエンドの「Lincoln」バッジは、左ヘッドライトの上からグリルに移動されて、字体が大きなサンセリフに変更された。リアではブラッシュメタルパネルをピンストライプ仕上げとし、すべてのバッジをパネルからトランクリッドに移動され、すべてのモデルにはより小さくよりフォーマルなフレンチ型のリアウィンドウを備えたランダウルーフが採用された。また、カルティエを除く全モデルには、オペラウィンドウにリンカーンのスターエンブレムが埋め込まれた。
内装

リンカーン・タウンカーのインテリアには当時としては先進的な高級装備が数多く採用されていた。シグネチャーシリーズとカルティエには運転席と助手席のための6ウェイパワーシートおよび手動シートバックリクライニングが装備されたが、リンカーン・タウンカーの標準モデルでは以前にマーククーペで見られたスプリットフロントベンチシートが採用された。電子機能の中にはオプション装備のデジタル表示式トリップコンピューター(英語版)が含まれ、運転手に「燃料が空になるまでのマイル数」や運転手の入力に基づく「到着予定時刻」を表示した。キーパッドベースのキーレスエントリーシステムは工場出荷時もしくはオーナーがプログラムした5桁の数字の組み合わせで車のロックを解除する。運転席のドアハンドルの上に取り付けられたキーパッドは4つのドアすべてをロックすることができ、コードを入力するとドアのロックを解除したり、トランクリッドを外したりする事が可能で、キーパッドシステムは、キーフォブベースのシステムと並んでフォード車とリンカーン車で現在(2017年時点)も採用されている。

1985年のアップデートの一環として、リンカーン・タウンカーは12スピーカーのJBLプレミアムステレオシステムの一部としてフォード車では初めてCDプレーヤーをオプションで装備した[6]1984年はタウンカーに8トラックプレーヤーと市民ラジオのオプションが付けられた最後の年となった[6]。機能面の変更としてはホーンボタンがターンシグナルレバーからステアリングホイールのハブに移動した[6]。ドアトリムは木製からシートに合わせた張り地に変更された[6]

1986年には前席のヘッドレストが背の高い4ウェイ連接はしご型のデザインに変更され、ダッシュボード下部のサテンブラックのトリムの大部分がウォールナットバーリングトリムに変更された。


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