リリイ・シュシュのすべて
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他の4人が無念の声を上げるが、星野は不敵な微笑みを浮かべていた。

新学期が始まり、雄一は星野が溺れた事件をクラスメイトに吹聴していた。クラスメイトが夏休みの間に見た目を派手にする中で、犬伏という生徒は特別派手な髪型をしていた。星野は犬伏を注意するが、犬伏は星野を馬鹿にした態度で話を聞かなかった。その直後、星野は犬伏に襲いかかり、彼を気絶させて髪をカッターナイフで切り取った。星野はざわめく野次馬を不思議そうに眺め、教室を去った。その日を境に星野は変貌し、クラスメイトの辻井と飯田、多田野とクリオネを従えて犬伏を登校拒否に追い込んだ。星野は部活動へは行かず、放課後にはスクラップ置き場で仲間たちとつるむようになった。雄一は星野へ、先輩からの伝言を伝えに向かうが、その日以降、雄一もまた星野のグループへ強制的に加えられ、犯罪行為を強要される。
中学2年生

リリイ・シュシュのニューアルバム「呼吸」が発売された。雄一はCDショップでこれを万引きしようとするが失敗に終わる。店へ駆けつけた小山内の温情によって「呼吸」を買ってもらったものの、店員や母親から罵りを受ける。数日後、雄一は夜に星野から呼び出される。個人的な万引きの失敗を学校への告発だと認識した星野らに、雄一は暴行を受け、さらにマスターベーションを強要される。リュックサックに収めていた「呼吸」のCDは、星野によって割られてしまう。

雄一はリリイ・シュシュの絶大な信者となり、インターネット上でリリイ・シュシュの非公式ファンサイト「リリフィリア」を主宰し、「フィリア」の名で、様々な人物と交流する。その中で、「青猫」と名乗る人物に出会い、掲示板上で度々繋がるようになる。対して現実は過酷だった。雄一は星野に命令され、同級生の津田詩織の尾行をしていた。津田は星野に弱みを握られ、彼から売春を強要されていた。その日は津田の初仕事で、雄一は多田野とクリオネと共に津田を見張っていた。雄一は多田野の命令で津田を家まで送った。津田は自分の分け前として受け取った金を、雄一に差し出す。雄一が星野からたかられているのを知っていたせいだった。雄一は受け取ろうとするが、津田は金を地面へ叩きつける。苛立ちを晴らすように津田は雄一を蹴り、鞄で叩き、落とした万札を破けるまで踏みにじり、そして濁った川へと入っていった。津田は泥だらけで帰宅し、庭にあった蛇口で体を洗いた。雄一は門前で立ち尽くすが、やがてその場を後にした。

学校では、校内合唱コンクールに向けてクラスごとに練習に励んでいた。雄一のクラスは投票によって選ばれた井沢がピアノ伴奏を、学級委員長の佐々木が指揮を、それ以外の生徒が合唱を担当した。しかし、井沢はイントロだけで何度も躓き、ついに伴奏を辞退してしまう。佐々木は代理として久野陽子を指名した。久野は放課後には音楽室へ赴き、いつもピアノを弾いていた。しかし久野がピアノの前に座った途端、女子の中心的な生徒である神崎が異議を唱えた。佐々木と神崎らは言い合いになり、神崎は「久野が伴奏をするなら歌わない」と言い切り、グループを引き連れて帰ってしまう。このせいでクラスの結束力も緩んで、練習にならなくなってしまう。佐々木は担任教師の小山内に相談するが、小山内は打開策を打ち出さず、事なかれを主張した。すると2人の間に久野が割り込み、元とは違うアレンジの譜面を見せる。それは久野のピアノ伴奏を拒否する神崎らに対する妥協案で、ピアノを撤廃し、アカペラにするというものだった。本来よりもずっと難しくなった合唱の練習は夜まで続いた。佐々木は練習をボイコットするようになった神崎らに、久野がピアノを弾かなくなったと伝え、もう一度参加してほしいと頼む。その場に居合わせた雄一も説得に強力させられた結果、神崎らは承諾する。やがて合唱コンクールの本番が始まる。久野がチューニングとしてピアノを弾き始めると神崎らは佐々木に詰め寄るが、チューニングが終わってピアノから立ち上がった久野を見ると、渋々と列へ戻る。クラスは猛練習の成果を発揮し、困難なアカペラ合唱で「翼をください」を披露した。雄一はピアノを弾かず、合唱の列にも入らず、ただ立ち尽くしている久野を見つめた。合唱終了後、神崎らは満足そうに喜んでいたが、アカペラのアレンジが久野によるものだと知り、神崎だけが表情を引きつらせた。星野は、アリーナの席から久野を眺めていた。

数日後、雄一は帰り道で佐々木と一緒になった。佐々木は恋愛話を持ち出す。佐々木は雄一が久野を好いていると見透かし、大して自分は津田のことが好きだと告白する。佐々木は雄一が、以前津田と2人でいたのを目撃していた。佐々木は2人が恋仲でないと知ると、雄一に、津田に告白したいから彼女を呼び出してほしいと頼む。雄一は電話でこれを津田に伝える。その直後、星野からの電話がかかった。

雄一は、久野をある工場へと呼び出した。工場内で星野が待っていると、雄一は彼女を送り出した。1人になった雄一の前に神崎が現れ、この工場は元は星野の家のものだったが、去年の夏休みに会社が倒産し、星野の家が離散していたことを告げる。工場内では、待ち構えていた星野のグループが、逃げ回る久野を追い回していた。久野はとうとう捕まり、強姦され、その様子を撮影される。雄一は工場の外で思わず泣き出してしまう。数日後、久野は頭を丸坊主にして登校する。クラスはざわつくが、久野は毅然とした態度でいた。

数日後、津田の仕事帰りに、雄一と津田はレストランへ訪れた。雄一が、佐々木とはどうなったのか尋ねると、津田は断ったと告げる。雄一は、佐々木ならば津田を星野から救ってくれたのに何故断ったのか問い詰めるが、津田は、雄一が守ってくれればいいのに、と返す。帰り道で、津田は雄一が聴いていたリリイ・シュシュの音楽に興味を示した。津田は最新のアルバムを貸してほしいと雄一に頼むが、最新作の「呼吸」は、星野に割られてしまっており、仕方なく前作「ジュエル」を貸す。別れ際、津田は「きっと大丈夫」と雄一を励ます。しかし、この後に津田は、鉄塔から飛び降りて自殺してしまう。
キャトル事件

現実が行き詰るに連れ、雄一は「リリフィリア」で青猫と心を通わせる。渋谷でリリイ・シュシュのライブが開催されることが決まり、サイトの常連者はそれぞれ、目印として任意のものを持つ、或いは格好をすると書き込んでおり、青猫は青りんごを持っていくと書き込んでいた。雄一は青猫にライブで会おうと告げる。ライブ当日、会場前の列の中で雄一は星野を発見する。星野もまた雄一に気づき、雄一に近づく。星野は雄一のチケットを奪い取り、自身のものと見比べ、チケットを交換するよう詰め寄る。さらに、雄一にコーラを買ってくるように命令し、雄一は仕方なく列から離れる。その際に雄一は、星野から青りんごを手渡される。青りんごには、bluecat(青猫)のアカウント名を含むメールアドレスが書かれていた。雄一はコーラを購入して列へ戻り、遠くで手を掲げた星野を発見する。雄一もコーラを持った手を掲げるが、星野は手に持っていたチケットを丸め、人混みの中へ投げ捨てた。雄一は呆然と、星野が人の中へ消えていくのを見た。

ライブ中、雄一はずっと会場の外に立ち尽くしていた。やがてライブが終了し、観客が会場から溢れてくる中に星野を発見する。星野は雄一から青りんごを回収し、誰かに話しかけられなかったか尋ね、雄一がいなかったと答えると、星野は雄一を残してその場を後にする。雄一はしばらくしてから、会場を指差して「リリイがいる!」と叫んだ。その言葉にファンが呼応し、会場の前で、リリイを呼ぶ巨大な人混みが生まれた。雄一は人混みを掻き分け、星野の元へと辿り着く。雄一は背後から星野をナイフで一突きし、その場から逃げ出した。星野はその場に倒れた。雄一は離れたところで立ち止まり、星野の青りんごに突き刺したナイフを確認した。
エピローグ

星野は死亡し、その件は「キャトル事件」と名づけられて話題となっていた。雄一は警察に捕まることなく、日常へと戻っていた。雄一は慣れない手つきでドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」を弾き、母に頼んで髪を染めた。久野は吹奏楽部へ入部し、ピアノを弾いていた。雄一は成績の低下を理由に小山内から呼び出され、帰り際に久野を帰らせるように頼まれた。久野は部活動の後も1人残ってピアノを弾いていた。雄一は久野の演奏する様子を、彼女の背後からじっと見つめていた。
登場人物・キャスト
中学生の人物
蓮見雄一(はすみ ゆういち)
- 市原隼人主人公。中学生の男子。リリイ・シュシュの熱狂的なファンで、非公式のファンサイト「リリフィリア」を運営している。中学校へ入学した後に、学年内で目立つ存在だった星野の家へ泊まったのをきっかけに友人になる。夏休み明けの新学期以降、変貌した星野の下で万引きや売春の手伝いを強要される。明るい性格で人当たりも悪くなかったが、新学期以降は環境が悪化し、塞ぎ込むようになる。前の席の久野に対して淡い恋心を抱いている。父親を交通事故で亡くしており、母親が再婚して血の繋がらない弟がいる。映画版では剣道部、小説版では陸上部に所属していた。足が速いのが取柄。
星野修介(ほしの しゅうすけ)
演 - 忍成修吾リリイ・シュシュのファン。スポーツ万能、成績優秀で中学の生徒会長。中学校の入学式では、新入生代表の答辞を読んだ。実家は裕福であったが、夏休みに会社が倒産して家族が離散することになる(小説版では実家がタクシー会社を経営しており、倒産はしていない)。夏休みが明けてから突然周囲に対する態度が変貌する。以降は辻井らを従えて不良グループを結成し、万引きや売春の斡旋で金を稼いでいた。独裁者めいた態度のせいで、グループの仲間からも不満を持たれている。小学校の時にいじめられていた過去を持つ。
津田詩織(つだ しおり)
演 - 蒼井優雄一のクラスメイト。星野に弱みを握られ、「仕事」として援助交際で金を得て星野に渡すようになる。詩織の初めての「仕事」からの帰り道に雄一が付き添い、それ以降は仕事の度に2人でつるんでいた。雄一の持っていたリリイ・シュシュのCDを聴いて気に入る。携帯の着メロはKinKi Kidsの『夏の王様』(映画版)。
久野陽子(くの ようこ)
演 - 伊藤歩雄一が密かに恋い慕っている少女。雄一とは2年生時にクラスメイトになった。星野にリリイ・シュシュを教えた少女。星野とは小学校のクラスで隣同士であったが転校しており、中学は同じ学校となるも他人として接する。放課後には音楽室で、1人ピアノを弾いている。優れた容姿のため男子からの人気は高い。その反面、神崎を始めとする女子生徒からは相当嫌われている。星野のグループに強姦された挙句売春を強要されそうになるが、映画版、小説版では異なる行動によってそれを拒否している。
佐々木健太郎(ささき けんたろう)
演 - 細山田隆人雄一のクラスの学級委員長。雄一と同じ小学校の出身者。正義感とリーダーシップを持った人格者で、神崎らの久野に対するいじめにも向き合っていた。前の席の津田を恋い慕っている。
神崎すみか(かんざき すみか)
演 - 松田一沙クラスの女子の中心的存在。星野のグループとも繋がりを持つ不良少女。同級生の久野を生理的に嫌っており、星野のグループに彼女を暴行するように依頼した。
東海林真澄(しょうじ ますみ)
演 - 北原ヨリ子神崎のグループの一人。
笹野涼香(ささの りょうか)
演 - 児玉真菜神崎のグループの一人。
井沢紀子(いざわ のりこ)
演 - 伴杏里クラスの合唱祭でピアノを弾くことになったが、途中でやめてしまう。
犬伏列哉(いぬぶし れつや)
演 - 沢木哲1年生時の、雄一や星野のクラスメイト。夏休み明けの新学期には派手な髪型で現れた。同じく素行の悪かった辻井たちを冗談半分でいじめていたが、変貌した星野に逆襲され、以降はいじめられる側へと追いやられ、挙句には登校拒否してしまう。
多田野雅史(ただの まさし)
演 - 郭智博星野のグループの一人。
クリオネ
演 - 中村太一星野のグループの一人。少々弱気である。夏でも長袖、長ズボンを着用している。
飯田待典(いいだ まつのり)
演 - 五十畑迅人星野のグループの一人。内心では星野に敵意を持つも、星野に命じられ嫌々いじめを手伝う。辻井と彼とは特に素行が悪く、多田野やクリオネ、雄一よりもカースト上位の存在。小説版では失態をした蓮見を見逃すなど、寛容な部分も見せる。
辻井影彦(つじい かげひこ)
演 - 西谷有統星野のグループの一人。同じく星野に逆らえずにいる。
清水恭太(しみず きょうた)
演 - 笠原秀幸雄一と同じ部活の友人。星野に絡む他校の生徒と対立した。
寺脇仁志(てらわき ひとし)
演 - 勝地涼同じく雄一の友人。
仲貝弘和(なかがい ひろかず)
演 - 内野謙太同じく雄一の友人。
池田先輩(いけだせんぱい)
演 - 高橋一生剣道部の部長。


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