『大学事典』によると古代ギリシアの自由人は、「さまざまなアーツ(学芸)を学んでパイデイア(教養)を身につけようとした」[1]。それらアーツは「エンキュクリオス・パイデイア」(円環をなす教養)と呼ばれ、古代ローマではキケロやウァロによって「アルテス・リベラレス」(リベラル・アーツ=自由人に相応しい諸学芸)と呼ばれ、リベラル・アーツは西欧近代における人文学的教養の基盤となった[1]。「アーツ」、「テクネー(技術知)」、および「古代ギリシア・ローマ世界」も参照
なお、ギリシア語の「テクネー」(techn?)はラテン語の「アルス」(ars)に相当する[16](アルスは「アルテス」の単数形[8])。プラトン哲学やアリストテレス哲学では、技術(テクネー)は次のようにも言われている[17][18][19]。
《本質についての理論的知識(ロゴス)を持つ働き》[17]
《知識 エピステーメー》と同義[18][19]
《真の理知(ロゴス)を伴う制作能力》[17]
《学問的かつ経験的で普遍的かつ個別的な真理認識の能力》[17]
アリストテレスは『ニコマコス倫理学』で、こう述べている[20]。実際、真に善き人や思慮深い人とは、あらゆる運不運に立派に耐え、与えられた状況のもとにそのつど最善のことを為す人だとわれわれは思っている。
それはちょうど、すぐれた将軍がいまある軍隊をもっともうまく戦えるように用いたり、すぐれた革職人が与えられた革からもっともできの良い履き物を作ったりすることと同じである。そして、同じことがほかのあらゆる技術にも当てはまる。[20][注釈 4]
デルフト工科大学の技術哲学者かつ元建築家であるジョン・R・デイカーズ[24]の著書は、アーツ、リベラル・アーツ、テクノロジーなどの歴史的経緯を次のようにまとめている[8][25][注釈 5]。
リベラル・アーツの由来と近代化時代区分用語や概念伝統的な哲学の言説
古代ギリシア
テクネー(技術知)
テクネーに関する言説
古代ローマ
アルス(技術知)/テクネー
アルス/テクネーに関する言説
アルテス・リベラレス(自由学芸)アルテス・メカニケー(機械学芸)
中世?近世ヨーロッパ
アート(学芸/技術/芸術)/アルス/テクネー
アート/アルス/テクネーに関する言説
アルテス・リベラレス/リベラル・アーツ(自由学芸)
アルテス・メカニケー/メカニカル・アーツ(機械学芸)アーティフィシャル(人工的)アートフル(アーツ(リベラル・アーツ)に精通した/熟練した/芸術的な)[注釈 6]